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JOKERは冷たく笑う

作者: 江角 稚
掲載日:2012/01/02

音無 無音さんのお題小説「ジョーカー」に参加させて戴きました。




...そしたら、こんなことになりました。




好き勝手やらせて戴いて、音無さんには感謝してもしきれません!!

...ので、許して下さい...。

平凡な日常に、ばらまかれた不穏のカード。


十三人のジョーカーが、冷たく笑う...。




一通の手紙が届けられた。

不気味な程、真っ白な封筒が、俺の家のポストへと放り込まれていたのである。


仲野由縁(なかのゆえ)は、その"差出人不明"の封筒を不思議そうに眺めていた。


しばらく外見だけを観察していたが、中身を確認しないことには、何も解決しない。

俺は封を開けた。




"一月四日水曜日、午後六時に××高校体育館裏にて待つ"




「...何だこりゃ?」




俺はメッセージの書かれた厚みのある紙を、裏返す。


それは、俺の友人:鹿江桃の写真だった。




「桃...?」




そして、もう一つ。

封筒の中には、トランプが一枚。




スペードのエース。


ミスプリで、裏にジョーカーの印刷された、スペードのエースだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




俺は指定されていた、自分の在籍する高校の体育館裏にいた。




午後六時となると、学校の門は、完全に閉ざされる。




俺は用務員に見つからないよう、こっそりと忍び込んでいた。




そこには、十一人の男女がすでに来ていた。




その中に桃もいた。




「桃...」


「由縁君!?」桃は振り返り、驚きの声を上げた。




「どうして、由縁君が此処に...」「いや、この手紙を出したの、お前じゃないの?」


俺は桃の言葉を遮り、封筒を見せた。




途端に、青ざめる桃。




「嘘、嘘よ...何で由縁君まで...そんな...」

桃は"信じられない"とでも言うかのように頭を振った。




桃は、何か知っているのだろうか。




その時。

「あれっ!? ...由縁?」


呼ばれた声に振り返ると、そこには友人の山口誠也の姿が。




「お前、何の用だよ?」と誠也。

彼の台詞の真意を読み解けずにいると、桃はあっ、と声を上げた。




彼の手には、俺の写真とスペードの十三。




え...一体、どう言うことだ?




不意に、スピーカーが入った。

「皆様、ご足労戴き、誠にありがとうございます。それぞれ、"JOKER"がミスプリントされたトランプをお持ちですね?」


その声に、何と無く皆が札を掲げる。




それぞれ、スペードの三から十二の札だった。


俺が一で、誠也が十三。

と言うことは...。




隣を見ると、桃は震える手の平で"スペードの二"を握り締めていた。




「初めまして。私は...強いて言うなら、そうですね。"元・JOKER"とでも名乗りましょうか」



何なんだ、この人。

だが、その疑問を考えるより先に、俺は耳を疑うことになる。




「皆様には、これから"JOKER"となることを賭けて、殺し合いをして戴きます」




...は?




一文字の気持ちを口に出す前に、頭上から黒光りする十三の何かが。




「ゴキブリっ!?」

誠也は飛び退く。


...いや、黒光り=ゴキブリって...。




俺は、よく見ようとして近付いた。




...拳銃だった。




「私が本気だと、ご理解戴けましたか?」




スピーカーの声。




「まさか、こんなの...偽物だろ?」

"スペードの四"を持つ男が、適当に銃を拾い、これまた適当に引き金を引いた。




ぱん。




乾いた音と共に、たまたま銃口の向いていた"スペードの六"の女が倒れた。

その頭から、血を吹き出して。




...静寂。




「うわああぁ!!!!!本物だあぁ!!!!!!??????」

引き金を引いた男が叫ぶ。




「当たり前じゃないですか。"JOKER"を決める儀式なんですから。全て殺し終えたら、最後の一人は体育館のステージまで登って来て下さいね。表彰式がありますから」

それを最後に、スピーカーはスイッチを切られたようだ。




「...てめぇ、ふざけんな!! 俺の女、殺しやがって...!!」

わなわなと怒りに震えるのは、"スペードの五"の男。


"五"は"四"に銃口を向けた。




「え、ちょ、待ってくれよ。俺達、親友だろ?」

"四"は命乞いをする。


「もう関係ねぇよ、そんなこと。さっさと死ね」

ぱん、と言う銃声と共に、"四"は倒れた。




"四"の持つ写真が、手の平から滑る。


そこには"五"の男の顔写真が。




...成る程ね。

次の数字の人間の、しかも知り合いの顔写真って訳だ。


だから"十三"である誠也には"一"の俺の写真。

"一"である俺には"二"の桃の写真が、届いた。




...なんて回想をしている間に、俺達の目の前は惨劇と化した。




返り血が、俺達の方にも飛んでくる。




深紅の雨か。

いや、これはその状況を遥かに上回っていると思う。


そうだな...例えるのなら"鮮血の霧"だ。




初めに十三人もいたはずなのに、いつの間にか、残り五人となっていた。




「危ないっ!!」

誠也は俺を庇うように飛び出す。




...鉛玉は、流れ弾は、

俺の友人を絶命させた。




残り四人。

俺達以外の二人は同時に撃ち合い、互いに"肉片"と呼ばれるべきかどうか分からない"何か"となった。




残されたのは、俺達二人。




たった二人だけ。




...どうしよう。


俺、一体俺は、どうすれば良い?




「由縁君...」

不意に、桃が言った。




「私を、殺して」




俺は、脳の"フリーズ"と言う現象を理解した、気がする。




「...え?」




「"JOKER"は、たった一人。本当は、私が"JOKER"になるはずだった。けど、私...由縁君を殺せないよ...」

泣きじゃくる桃。




「そんな...そんな! 馬鹿馬鹿しいこと考えるな!!」


空元気が、空回りする。


それでも俺は、言わなきゃいけない。




「二人で、何処かへ逃げようぜ。警察に通報して、あのスピーカー男を捕まえて貰おう」


「駄目だよ...例え私達が助かっても、"意味がない"の」

桃は意味深なことを言う。




「だから、私達のどちらかが"JOKER"にならなきゃ。そのためには、どちらかが死ななきゃいけないの」




分からない。


分からないよ、桃。




混乱する俺に、桃は言った。

「大丈夫、私、自分で死ねるから」


そう言って、桃は自分のこめかみに銃を突き付ける。




微笑んでいた。

優しい笑顔だった。


「私...由縁君が友達で良かったよ」




何故だろう、俺はフリーズしていたくせに。

その言葉にだけは、答えなきゃいけない気がした。


「ありがとう。...俺もだ」




そう言うと、彼女は嬉しそうに少しはにかんだ。




「桃...」


「ばいばい、ありがとう」




彼女は引き金に人差し指を掛ける。




「...桃、やっぱり死ぬな!!」



俺は彼女を抱き締めて、銃口を彼女から反らした。




ぱん。




また、この音だ。

非日常なくせに、今日一日で聞き過ぎた音。




飽きる位に。




そして、銃弾は俺の胸を貫いた。




いとも簡単に、貫いた。




ははは、何だ。

簡単なことじゃないか。




彼女を殺したくなければ、

彼女を生かしてあげたければ、

...始めから、こうするべきだったんじゃないか。




俺は嫌に満足した。

自分が最期に、導き出した解答(こたえ)に。




「ゆ...由縁君...っ!!」




桃の声。

彼女が泣いている顔、霞んでいく。




「由縁君、ごめんね...っ」



何故か彼女が、謝ってる気がした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




桃は指定されていた、自分の在籍する高校の体育館のステージ上にいた。




そう、今回の"JOKER"として。




「おめでとうございます、流石は"鹿江桃"様ですね」

先程のスピーカーと全く同じ声で、トランプの"JOKER"の格好をした彼が笑っていた。




まるで道化のように。




「全く、何が"おめでとう"よ。由縁君を殺させておいて...」




「でも、私は貴女が来ると信じておりました」

"元・JOKER"は冷たく笑う。


「貴女の恋人は、私が殺したんですから。復讐は果たさなくては」




「でも...由縁君を失ってまで、する復讐じゃなかった」

桃は袖で、涙を拭い取る。


そして、事の顛末を語り始めた。


「半年前、貴方は高瀬君と一緒に、この"JOKER"の選抜会に選ばれた」




「おや、もう半年も経つのですか」

彼は笑う。冷たく笑う。


「あの時のカードは"ダイヤ"でしたね。だから一番金持ちだった彼は狙われ、真っ先に殺された」


過去を振り返る遠い目で、彼は言った。




「貴方が、高瀬君を殺したの?」




「いいえ、直接は手を下してはいません。強いて言うのなら"見殺しにした"ですよ」




「同じじゃない!!」

桃は彼を思いっ切り殴った。




「はは...人間、傍観者が一番得をするんですよ。あの時もそうでした。彼を殺した人間達が、金品を奪う。そして他の奴らに殺される。その繰り返し...そして最後の一人だけ、僕が始末する。何がおかしいんです? 現に貴女も、今回、全く同じだったでしょう」




「あんたなんかと...一緒にしないで!!」桃は泣き叫んだ。「由縁君を、返してよっ!!」




「強いて言うなら、皆、この"しきたり"に殺された。皆が皆、憐れなる"JOKER"ってことさ」




「...何、"上手いこと言った"って顔してるのよ!!」




「桃さん...私の顔、見えるんですか?」




「下の名前で、呼ばないでよっ!!」


呼んで良いのは、高瀬君と由縁君だけ。




なのに...。




「まぁ、話はそれ位にしましょうよ」彼は桃を、下の名前で呼んだことをごまかす。


「貴女は"JOKER"となる代わりに、"元・JOKER"を殺し、更に願いが一つ叶うんですから」




「そうね...じゃあ、このゲームを終わらせてくれる?」

だが、その願いは聞き入れられなかった。




「"これ以上、悲劇を生みたくない"って偽善ですか。でも駄目なんです。止まりません。"JOKER"が次の"JOKER"に殺されるのを恐れていると見なされるので」




「死ぬのなんて、怖くないわ。由縁君が、目の前で死ぬことに比べたら...」




「...そうですか。では、代わりに私めの正体を」


彼は冷たく笑う、"JOKER"の仮面を外す。




その顔は、高瀬君の親友の顔。




いや、親友だった、顔。




「...やっぱり、貴方だったの。葬式でも涙一つ見せないなんて」




その問いには答えず、

「はい、これはもう、貴女の物ですよ」

彼は"JOKER"の仮面を桃へと被せた。




「最初は、婆抜きで"JOKER"を引いた人が、他の人達を殺した所から始まったらしいですよ。私怨って怖いですね」

仮面を外した後も、彼は薄気味悪い笑みを浮かべる。


「そして後悔と戒めのために、彼は儀式を行った。十三人に、"JOKER"のトランプを配ってね」




"JOKER"の時は、騙し合い。




そして勝者が、彼を殺した。




「勝者は"最も愛する人間なら、心優しいから次でしきたりが終わる"と考えていたそうです」


そして十三枚の、ハートと"JOKER"が裏表のカードが配られた。




そしたら、残ったカップルの二人は狂ってた。


...正確には、選抜の"殺し合い"の果てに狂った。


「最後はちょうど、貴女達のようでした。違うのは、彼女の方が本当に自殺したことで」




残された彼氏は"最も幸せな人間なら、幸せだから次でしきたりが終わる"と思った。




そして十三枚の、クラブと"JOKER"が裏表のカード。

"幸福"を象徴する、クラブのカードだった。



ところが、何故か一人の男と十二人の女。

しかも最悪なことに、男は性欲が強かった。


性欲を満たすことが、その男の中で唯一の、幸せだと思っていた。




「十二人、全ての女子生徒を無理矢理犯して、全員自殺に追いやった。あいつこそが本物の"JOKER"じゃ...」

言いかけて、止めた。


桃が恐ろしく睨んでる。

冷たく笑う、"JOKER"の仮面の中から。




「...そして、その男は"金で何でも解決しよう"と、ダイヤのカードを十三枚作った。それが私達の代でございます」


とち狂った男でも、一応"解決しよう"とは思ったのか。

"金"と言う、安直な結論だが。



「ちなみに...何で今回、スペードを選んだの?」

桃は仮面越しに聞いた。


冷たく笑う、仮面越しに。




「四つの中で、残ってたから。理由は色々あっても、結局は殺し合いですし。それなら、スペードは元々"死"のカードですから。シンプルでしょう? ...それに、もう"このしきたりを止める"なんて不可能ですよ」

彼は一気にまくし立てた。




「では、預金通帳がそこにありますから。"JOKER"の経費はそこからお願いします。私のように拳銃を調達したりして、無駄遣いしないで下さいね?」




「...あんたに言われたくないわよ」




「確かに」彼は苦笑い。

「では、次の"JOKER"としての仕事、全うして下さいね」




「当たり前よ」仮面の彼女は、言った。




「では、私の仕事はお終いですね」




「楽には、死なせないから。これが私の、せめてもの復讐」


ぱん、と肺を撃ち抜かれる音。

彼はきっと、三十分程死ねずに苦しむだろう。




終始笑いっぱなしの仮面の彼女は、そんな彼に背を向けた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「さて、と」




思案した挙げ句、何も思い付かなかったので。




「最初に戻ったわね...」苦笑する桃。




その手には、十三枚の"JOKER"のカードが。




しばし、郵便ポストの前に佇む。




これで、次の"JOKER"が決まる。


そしたら、私は殺される。




「高瀬君、由縁君...待っててね。もう少しで、会えるから」

桃は可愛らしい、笑みを浮かべた。




そして、十三通の封筒を郵便ポストへ。




「うふふふふ」

彼女は笑う。冷たく笑う。


まるで、道化のように。




平凡な日常に、ばらまかれた不穏のカード。


十三人のジョーカーが、冷たく笑う...。

次の"JOKER"は、貴方の番ですよ?




作者(江角 稚)は笑う。冷たく笑う。


まるで道化のように。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラストあたりの展開が好きです。ループ!! このお話なら、長編でもいけるのでは……と思いました。 素敵な作品をありがとうございました!
[良い点]  バトルロワイヤル?  江角さんが書いたこと。  稚お姉ちゃんが書いたところ(同じ) [気になる点]  本当にあったら、私が殺されちゃう点について。  ……すいません。 [一言]  こうい…
2012/01/03 00:23 退会済み
管理
[一言] 確かにR-15の指定はこれにいりますね。 まぁ少々グロテスクとでもいいましょうか、 そういう描写もありましたが おもしろかったです。
2012/01/02 19:55 退会済み
管理
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