忠誠心
水精霊は紅蓮の剛翼相手に押していた。流石は六精霊である。龍神王の次の次に権力があるだけはある。紅蓮の剛翼が弱いわけではなく、水精霊が強すぎるだけだ。それに相性も悪い。
「もう終わりか?紅蓮の剛翼の名が泣くな。」
「くっ、黙れ。」
「では終焉だ。氷柱。」
水精霊が氷柱と言った途端、先が鋭い氷柱が幾千と現れ、それが紅蓮の剛翼の身体を貫く。
「ぐぅぁーっ。」
「さぁ、もう降参して龍神らしく龍神王様のもとに仕えろ。」
「龍神王には仕えられない。なぜならな…」
紅蓮の剛翼の身体が変化し始める。そして微笑みながら優しい声で、
「俺はなにがあろうと龍妃様に全てを捧げ、忠誠を誓ったからだ。その忠誠心は自分自身の身をも犠牲にする。だから…」
水精霊は油断なく構え、相手を見る。
「龍妃様の命令に従う。例え何が俺を阻もうとも。」
そして紅蓮の剛翼は龍化した。
「やめるんだ。龍神が龍化すると莫大なエネルギーを得られるが体力を物凄く消耗するぞ。」
この戦いの中での唯一の好意的な笑いで答える。
「構わない。我が主がそれを望むならば。」
ウガァォァォー、と、低い唸り声を響かせて、炎を吐く。しかし、水の防御の結界を扱える水精霊には届かなかった。
「無駄だ、紅蓮の剛翼。私に炎は効かない。おまえ程度ならな。」
しかし、炎を吐きつづけて、体力の限界が来て、元の姿に戻りその場に倒れた。悔いのない仕事をしたような笑顔を残して…。
紅蓮の剛翼がかけた精波が解けて、高川は自由に動けるようになった。が、しかし、動けなかった。無惨に倒れた父親と、焼けた有と守野を見て…。
水精霊はシャウトとライズに回復の精波を使い、ライズに話し掛ける。
「仕事はこなした。」
「感謝します。」
「なら…、」
ライズが大声で水精霊の言葉を遮り、敵対する言葉を発する。
「でも…、貴様は許さない。例え何があろうともな。」
「いい加減にしろ。」
シャウトが仲裁にはいる。
「・・・申し訳ありません。」
そしてライズは黙り込んだ。
「水精霊、感謝する。」
「いえ、皇子を守るのは私の仕事ですから。」
「ありがとう。」
「では、これで私は失礼します。」
そう言って、水精霊は異空間から去って行った。
「紅蓮の剛翼、」
倒れている紅蓮の剛翼に向かって、ライズは語りかける。「きっと、きっと、もう一度やり直せますよ。」
「そ…うか…い、でも…、少し休まないと…、俺は…、」
「ゆっくり考えろ、紅蓮の剛翼。」
「そうだな…。」
「とりあえず家で休んでもらいます。」
「あぁ、」
そう言って、紅蓮の剛翼はゆっくりと目をつぶった。
一方シャウトは…。
「咲、なにも心配はいらないよ。」
「うん。」
咲の長い直毛が有に絡み付く。
「泣きたい時は泣いていいんだよ。」
そう言うと、咲は有に抱き付いて、泣き叫ぶ。
「お父さんが、お父さんが…、なんで…、」
「俺はいろんな龍神を見てきた。そういう龍神もいるさ。」
「有君だってボロボロだし、お父さんは、なんでひどい事をするの…?」
「それは、意志の強さだよ。きっと咲もわかる時がくるよ。」
うん、と、頷きその場に崩れた。
その頃ハスナは、
「ドルドームが発生している。一体何が…?」
もう戦いは終わっている事を知らなかった。
ここで整理しておきたいと思います。シャウト:結城有,,,ハスナ:結城叶,,,ライズ:守野光,,,と、なっています。