炎精霊
3人は家で会議する。
「高川をどうなさいますか?」
「べつにどうもしない。」
さっと答えるシャウト。そこに、
「でも、これからはドルドームを使うと異空間に入って来てこまるのではないですか?」
「俺が守るよ。」
ハスナの疑問にシャウトが即答する。
「なら御自由に。」
と、ハスナ。
「…」
ライズは沈黙を守り、会議は終了した。
次の日。シャウトは咲に話し掛ける。
「これから戦う時にドルドームを使うと咲が入ってしまうのはわかったよね。だから、これからは俺が咲を守ってあげるから安心して。」
相変わらずシャウトは、いつも通り笑顔。
「有君ありがとう。」
「うん。でも自分でも気をつけてね。」
「わかりました。」
その後、学校から帰る時に、シャウトは咲と一緒に帰った。
「有君の仮称はなんていうの?」
平然と咲は聞く。
「銀の煌めきっていう仮称だよ。」
「カッコイイね。あっ、そうだ。守ってくれる御礼するから今日うちに寄ってよ。」
有の事を好きになってしまった(不幸にも)少女は必死だった。
「御礼なんていいよ。」
「ダメ、ちゃんと家に来てよ。」
顔を赤らめて、うつむきながら言う。
「じゃあ行かせてもらうよ。」
そして家に着く。
「今から晩御飯作るから、それを食べていってね。」
「うん。ありがとう。」
「じゃあそこの部屋で待ってて。」
「わかりました。」
そして作る途中。
「有君はなんで人間界に来たの?」
「龍神として立派になるためだよ。」
「そうなんだ。」
「でも、まだまだ未熟だけどね。」
「私は憧れるけどね。」
「咲も龍神の血をひいてるからなれるよ。」
唐突な言葉に驚く。
「そうかな?」
有は静かに喋り出す。
「どんな生き物でも不可能なんて無いんだよ。可能にするには強く望み、努力する事が大切なんだよ。」
「そうだよね。」そして、少し間をおいて
「御飯できたよ。」
その頃ハスナとライズは家にいた。それと龍もそこにいた。
「ハスナ様、炎精霊様からの伝言です。『この戦いには、ハスナの力が必要だ。是非、俺と共に戦ってくれ。』だそうです。どうなさいますか?」
少し考えた後ため息をつきながら、ハスナは龍に伝言を伝える。
「あのロリコン男に伝えて下さい。わかりました、用意をしたらすぐに行きます。変な気は起こさないようにして下さい。と、伝えて下さい。」
「かしこましました。」
そう言い龍は飛び去って行った。
「ハスナ様も大変ですね。炎精霊はしつこいですからね。」
「まったくです。少しはライズの態度を見習ってほしいですね。」
喋りながら短い、したくを終え、
「では、行ってきます。」
「健闘を祈ります。」
龍界へと向かった。
その頃高川宅では、
「・・・だからお母さんもなかなか家に帰らないんですよ。」
「大変だね。」
どうやら、母親の話らしい。
「でも泣いたらいけないんです。」
少し震えながら有へと話し続ける。
「有君、この悲しさどうすればいいの?泣いたらいけないって分かっているけど、」
「うん。」
「考えると、涙が止まらなくなって…」
「そう、」
「また、…泣いてしまうの。」
そういい、有に泣きながら抱き付いた。それを返さず、
「…思い切り泣けばいいよ。たまには心を涙で洗わないと、とくに女の子はね。」
と、優しくささやき、少女を支えた。そして、
「俺の母親は今行方不明で、何処にいるかわからない。だから君の気持ちはわかるよ。だから相談はこれからも聞くよ。」
と、言い、そのまま10分が過ぎ、なにも言わずに有は帰った。
「炎精霊、何用ですか?」
「あぁ、来てくれたのか、私の愛しいハスナ。」
「気持ち悪い言い方は止めて下さい。それにあなたのではありません。」
とだけ、言葉を返して黙りこむ。
「そうかそうか。ライズのものだと言いたいのか。」
炎精霊はからかうように言う。少女は少し顔を赤くして、
「違います。」
とだけ言った。
「顔を赤くしてるのもかわいらしいよ。」
「・・・」
炎精霊のその言葉に少女はなにも返さなかった。