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 夏休み二日目。俺はやっぱり学校に行った。

 そろそろ気になる人のために説明しておこう。

 この学校にはおかしな伝統がある。夏休みの間に球技大会を開催するのだ。

 それに伴い、球技大会までの夏休みは生徒達の自主的な意欲による練習が認められている。是非ともクラスで一致団結し、勝利を掴み取ろうではないか!という熱い生徒が登校し、十五分のホームルームと二時間の練習を行って帰宅する。

 しかし、世の中にはいろいろな人がいる。誰もがみんな行事に燃えるわけではない。でも、そうはいってもこの球技大会にはクラス対抗の種目もあるから、結局やる気のない連中も駆り出されるというのが現状だ。

 俺?やる気などないに決まってる。ただでさえ熱いこんな季節にみんなで燃える意味がわからない。

 切磋琢磨は「やる気がない」の代名詞だ。

 さて、これからホームルームが始まろうとしている。どういうわけかクラス担任はまだやってきていないようだった。

 生徒達の自主的な意欲?そんなの関係ねぇ!とばかりに隣のクラスからは木田先生の叱咤激励が聞こえてくる。

 それに比べてこのクラスには、どういうわけか火付け役がいない。全員、周りの奴が行ってるから行かなきゃいけないのかな、みたいな感じで登校しているのだ。

 こういう時は、担任が先頭に立ってやる気を奮い立たせたりするのだが、そんなことは期待できそうになかった。何しろあの人だ。

 しかし、それは大きな見込み違いだったことに、後々気付かされることになる。


「おい、お前ら、よく聞け!この球技大会、絶対優勝しろよ!負けたら許さないからな!!」

 遅刻して教室に入るなり叫びだした伏見先生に、やはりクラスは唖然とした。

 そりゃそうだ。昨日とはまるで別人のような熱血教師がそこに立っているんだから。

「いや、優勝なんて贅沢は言わない。せめて隣のB組にだけは勝ってくれ。実は昨日、隣の木田君とちょっとした賭けをした。これに負けるとヤバイことになるんだ。頼む!頼むから勝ってくれ。みんな!」

 伏見先生はもう両手をこすって拝みだしている。

 でも、それってあんたの都合でしょ?

 誰もが必死に拝む先生を冷ややかな目で見つめる。

 そんな気配を察したのか、先生がピタッと拝むのをやめ、がさごそと教卓の中から大きな紙を引っ張り出した。

 ばんっ、と紙を黒板に叩きつけた音にみんなが一瞬びくっとなる。

 そこにはこんなことが書かれていた。

「席替えドキドキ大作戦!ファインプレーはだぁーれだ?」

 ・・・えっと、俺たちに何をしろ、と?

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