夏の章1
宇宙を漂うゴミのようなもののことを「宇宙塵」というそうだ。
「うちゅうじん」と読むらしい。
夏の章(七月二十六日、火曜日、曇り)
夏休み第一日目、教室に入ってきたその人は、クラス中の誰もを唖然とさせた。そして、
「きゃーっ!」
女子達の悲鳴。全員が一目散にドアから教室の外へと逃げていく。みんな必死の形相だ。
それもそのはず。今入ってきたあの人は、くたびれたジャージにぼさぼさの髪、マスクにサングラスという出で立ちで、どこからどう見ても不審者だ。
もちろん俺だって逃げた。こんなところで命を落としたりしたら後悔することが山ほどある。
みんなと一緒に下駄箱を突っ切って、上履きのままグラウンドに出る。ここまで来ればもう安全だろう。
俺はひとまず胸をなで下ろした。それから、あることに気付いた。
高宮がいない。
・・・まさか、人質に取られた?
え?もうあの世へ召されたとか?
高宮瞬、君のことは忘れないよ。どうか八つ当たりで俺のことを呪い殺さないでください・・・
と、十字を切っていた俺の耳に死んだ高宮の声が聞こえてきた。
見ると、昇降口の辺りで困り果てている高宮がこっちに何か叫んでいるようだった。
「おーい、みんなー、なにやってんだよー。」
げっ、出た。さっきあんだけお祈りしてたのに。
「早く戻って来いよー。先生困ってるからー。」
高宮が手招きしてきた。頼むからそんなことしないでくれ。クラスメイトを道連れにするなんて・・・
って、え?今、先生って言ったか?
せんせいって、ティーチャーの先生だよな。とすると、さっきの不審者は・・・
「なにやってんだお前ら!さっさと教室戻れ!」
窓から顔を出したのは隣のクラスの木田先生。
「だって、先生、不審者が・・・。」
誰かがこの恐怖を訴えた。でも、それを木田先生は笑い飛ばした。
「ははっ、あの先生か。マスクにサングラスの。そうか、今日からだったか。大丈夫だ、あの人は先生だ。今日からお前らの新しい担任だ。」
「・・・・・・。」
一瞬の静寂の後、
「えーーーっ!」
グラウンド中を恐怖と絶望、ちょっぴりの好奇心が駆け巡った。