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「かんばーい!」
影の合図と共にそれぞれのコップを打ち付ける。
問題は完売したのだ。
利益は全体で12万3千円。10万とその他必要な金額を差し引いてもお釣りが出るくらいだった。
俺もまさか二日間で売り切ってしまうとは思っていなかったから驚いた。やはり才能があったとしか思えない。
「ところで、切磋琢磨の塾の先生には協力してもらえることになったのか?」
早速、高宮が痛いところを突いてきた。
俺は苦し紛れにしどろもどろの嘘をついた。
「あ?まあ、ちょっと上手くいかなかった。CASがばれそうになったから慌てて帰って来たんだ。」
それでも高宮は納得してくれたようだった。
「まあ、しょうがないよな。慎重に進めなきゃいけないし。」
そう言って、テーブルに突っ伏した。きっと一気に疲れが出てきたんだろう。それもそうだ。慣れないことを二日間続けてきたんだから。しかしすぐ、思い出したように顔を上げて言う。
「切磋琢磨、一人で大変だっただろう?ありがとうな。」
俺は一瞬、言葉に詰まった。
それは、今までの高宮にはなかったいたわりの言葉だった。だから少し、拍子抜けしたのかもしれない。
「高宮、そんなこと言わなくていいよ。戦力にならないから切磋琢磨が行ったんだ。それなのに何の成果もなかったんだよ。俺達が必死でセールスしたっていうのにさ。」
影が頼んだプリンをぐちゃぐちゃにかき混ぜながら嫌味ったらしく言う。
「あんたが売りすぎなんだよ。この詐欺師が。」
「ひどいなぁ。すこしは褒めてよ。」
「影、すごいな。そのプリン、残虐事件の被害者になってる。」
「ちょっと高宮、そういうこと言わないでくれない。食いにくいでしょ。」
「あ、じゃあ俺がもらう。」
「え、ちょ、あげないよ。」
「僕も欲しい。」
「ふざけんな。犯した罪は自分で償うんだよ。責任取って俺が食べるの。」
「おいおい、罪だと思うなら最初から混ぜんなよ。」
こんなふうに、気楽に進んでいくと思っていた。
この先何が待っているかなんて考えもしなかった。
そう簡単に事が運ぶはずがないのに。
次回からマラソンの話です。