20
冬の章ももう20話めです。
予想以上に長くなってしまいあせっています。
近くのファミレスに入った。昨日CASの後に寄ったのと同じ所だ。
「それで、聞きたいことって言うのは?」
コーヒーを一口飲んでからカケさんがそう切り出した。
俺は単刀直入に言った。
「藤野綾香さんという人に、心当たりはありませんか?」
「・・・藤野、綾香さん。」
そう、藤野友香のお姉さんだ。知らないはずがない。俺の予想なら、きっと。
カケさんはもう一度コーヒーに口を付けた。
「去年、うちの高等部にいた三年生、っていうと今は大学生だ。成績優秀な女の子だったよ。いつも模試で上位に食い込むようなね。」
それからゆっくりと、こちらを伺うように覗き見た。
「で、その藤野さんが何か?」
「じゃあ、藤野友香という名前を聞いたことはありますか?」
「藤野、友香・・・」
カケさんはしばらく考えてから言った。
「いや、俺は知らないよ。藤野綾香さんならわかるけど、妹さんはここの生徒じゃないよね。関わりはないな。」
「・・・そうですか。」
俺は一口、頼んだミルクティーを飲んで喉を潤した。口の中がかさかさに乾いているようだった。
「それで、今日は何の話なの?」
心なしかカケさんの声には催促するような響きがあった。気にしているのは時間なのか、それとも他のことなのか、判断するのは難しい。
「いや、大したことじゃないんだけど、その藤野友香って子が、今隣の席で、塾をどこにするかで悩んでるっていうからここを勧めたんだ。」
「やるじゃないか。無駄に退会した訳じゃないんだね。」
軽口は流しておく。
「ちゃんとカケさんの話もしたんだ。」
「俺のことも?」
「そう。この塾にすごいバイトがいるって。講師よりわかりやすく授業ができるって言っといた。」
「・・・その子、なんだって?」
カケさんが軽く身を乗り出す。
「今度テスト受けてみるって。イケメンだよって言ったら、急に食い付いてきた。ほんと、女子ってなんなんだろうね。」
「・・・そうだね。」
何か考えているようだった。じっと飲みかけのコーヒーに目を落としている。
不自然な沈黙が続いた。
しばらくして、俺は空気を変えるように少し大きな声で言った。
「そうそう、お友達紹介サービスって、まだやってますよね。今日はその話がしたかったんだ。あれって、退会後でも適用されるって聞いたんですけど。」
「・・・ああ、うん、お友達紹介サービスね。大丈夫だよ。その子が入塾した時点で、切磋さんの家に連絡がいくようにしておくから。賞品の図書カードは郵送でいいかな。」
「ああ、それでいいよ。」
「そうか。話っていうのはこれでいいのかい?もう今日は遅いから出た方がいい。それ、飲むなら早く飲んじゃって。」
カケさんが時計を確認して急に慌てだした。
俺にはそう言っておきながら、自分では飲みかけのコーヒーに手を付けようとはしなかった。
当然のように代金を二人分払ったカケさんと店を出た。
「久しぶりに話ができてよかった。ありがとうカケさん。あと、ミルクティー、ご馳走様。」
「カゼなんかひかないようにしろよ。寒いからね。」
「ほんと、優しいよな。だから女子からちやほやされるんだ。でも、意外だったな。カケさん、怒るかと思った。」
「ん?なんで。」
「いや、カケさんが授業してること、友達に話しちゃったから。あんまり広まるのはよくないんだろ?いつものカケさんなら、そんな話するなよって言うから、ちょっと意外だったんだ。ま、それだけだよ。じゃあ、時間もあれだからそろそろ帰る。カケさんもあんまり無理するなよ。今日はわざわざありがとうございました。」
俺はそれだけ言ってから頭を軽く下げてカケさんと別れた。
その足はまた別のファミレスへと向かっている。今度は自分で頼んだものを自分で払わなければいけないところ、CAS最終日を終えた二人が待つ場所だ。
釈然としない気持ちが少し重かった。
急いでてちょっと雑な感じになってしまいました・・・。
今度書き直したい。