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半年ぶりの更新です(T-T)
もし今まで読んでくださってる方がいたらごめんなさい。
目次の上に「次話投稿されない可能性があります」っていう注意の文が載ってしまうのは悲しいです。
塾の講師というものは、大抵が不健康である、というイメージがある。
真っ昼間でも煌々と点いているあの無機質な蛍光灯がそう見せているのかもしれないが、顔色は決して良好とは言えず、常に寝不足を思わせるような目、服装には気を使わない。
くたびれたスーツとチョークで汚れた指先、これが俺が描く塾講師の姿だ。
それは、大手学習塾「油沢ゼミナール」であっても同じことだった。
ただ一人、カケさんを除いて。
三十分間も隠れていた電柱の影からやっと姿を現し、俺は油沢ゼミナールから出てきた長身の青年に声を掛けた。
「カケさん。久しぶりです。俺のこと、覚えてますか?」
塾を辞めた生徒とここで会うことは予想していなかったのだろう、カケさんは驚いていた。
「切磋さんだよね。覚えてる覚えてる。誰よりも発音しにくい苗字の子だった。」
そう言ってさわやかに微笑む。
そうだ。この人こそが俺を退塾に追いやった張本人である。男女平等主義は変わっていないらしい。相変わらず舌をかみそうな発音だった。
「どうしたの。塾に用事でもあったのかな?もしかして、また入塾テストを受けに来たとか?」
「まさか。もう塾にはこりごりだよ。」
「おいおい、入口を目の前にしてそういうこと言うなよな。」
その時、何人かの女子生徒がやかましく近付いて来た。
「カケさーん、さよならぁ!明日さっきの問題の続き教えてね!」
カケさんが困ったように笑う。
「俺なんかじゃなくて先生にちゃんと質問すればいいだろう。」
「だってカケさんのほうが分かりやすいんだもん。いいじゃん、いいじゃん。授業入ってないんでしょ?」
彼はバイトの大学生なのだが、並外れた人気と解説の分かりやすさから、講師が欠勤の時などは特別に授業を任されることもあるのだ。とても特殊な例だが、もちろん正式には認められていないことだ。
「ね、いいでしょ?カケさん。」
「わかったよ。明日、授業がなかったらな。」
「やったぁ。カケさんありがとっ。じゃあ、さよなら!」
「またな。」
カケさんは、軽く手を挙げて女子生徒を見送った。
それにしても、すごい人だ。人を引きつける力というか、そういうものがあるんだろう。人気も信頼も、他のバイトとは比べものにならない程だった。
「で、どうしたんだ?塾に用事があるなら一緒に付いていこうか。」
さりげない優しさに思わず感嘆する。
「いや、今日はカケさんに聞きたいことがあって来たんだ。」
「俺に?」
「うん。時間、大丈夫ですか?」
ちらりと覗き込んだ腕時計は有名なスイス製だった。
「ああ、今なら大丈夫。でも、もう遅いから手短にね。親御さん心配するだろう?」
「すぐに終わらせるから。」