18
やっとの更新です!
最近忙しさと戦う毎日です。
登場人物の名前を忘れてたので慌てて読み返しました・・・orz
今日の休み時間のこと。
俺はいつものように教科書やノートを机にさっさと突っ込んで、次の教科の道具を取り出した。欠伸をして伸びをする。それから隣をちらっと見る。
少し疲れたような藤野の横顔。
やはり元気がなさそうなその表情を見て、そういえば藤野に近況報告をしていなかったと気付く。
力になると言った手前、行動を起こしているのに何の報告もしないのは良くない。
藤野だって、目の前にいきなり十万を持ってこられたら戸惑ってしまうだろう。
俺は、長時間の授業のせいでかちかちに固まりそうになっている腰をいたわりながら立ち上がった。
「藤野。」
「なぁに。」
「ちょっと話したいことがあるんだけど。」
目で教室のドアを示した。無邪気な中学生の好奇心で溢れているこの場所で、CASの話題を持ち込むのは命取りだ。
勘のいい藤野はすぐに頷いて席を立った。
もう何度も出入りしている資料室で、俺と高宮、影の三人でやっている計画を話した。長い休み時間ではなかったから、かなり手短な報告になってしまったが、仕方ない。
俺は昨日までの売り上げとこれからの計画を話して、報告を終えた。
「全然関係ない人たちを巻き込んじゃって、ほんとにごめんなさい。こんなことまでしてくれて・・・」
壁に寄りかかった藤野が俯いた。その視線は床のごみの数でも数えるように、あっちへこっちへと定まらない。
藤野はただ俯いて、困ったように「ごめんなさい」とそう言うだけだった。
真面目そうな彼女のことだから、もしかしたらCASの内容を不法な金儲けだと怒るかもしれない、そんなことをしている俺たちに絶望するかもしない、と考えていた俺は拍子抜けした。
藤野はただ俺の話に相づちを打つだけで、驚くことさえしなかったのだ。
「・・・だ、大丈夫か?」
今にも泣き出しそうな様子の藤野に戸惑った俺はそう声を掛けた。かなり戸惑っていた。目の前で女子が泣く状況は未だに体験したことがなかったからだ。
「大丈夫。ごめんね。」
やはり謝罪の言葉が返ってきた。
俯いて力なく壁により掛かる藤野は、心なしか、俺達に相談を持ちかけた時よりも痩せているように見えた。いや、やつれた、というほうが的確か。
「何か、あったのか?」
そう聞いたが、何かあったことは明白だし、その原因が一目惚れされた大学生であることも分かっていた。
しばらくの沈黙があって、藤野が重い口を開いた。
「昨日、お姉ちゃんとカケさんが別れたの。」
・・・別れた。昨日。お姉ちゃんと・・・。
俺は何と言えばいいのか分からず、「そっか」と間の抜けた言葉を返してしまった。
しまった、と慌てる。これじゃ興味がないと取られてもおかしくない。せめてもうちょっと暗いトーンで発声していれば良かった。
そして、藤野がこんな状態の時に、相手にどう思われるかを気にする自分に失望した。
それから、どこかで聞いたことのある名前に遅れて反応する。
カケさん。誰だったか、どこかでそんな呼ばれ方をしている人がいた。
「別れるときにね、『お前、邪魔だよ』って言われたんだって。」
授業開始のチャイムがどこか遠くで鳴っていた。
今度こそ、俺は何も言えなくなった。