9
交渉相手二人目は、T中の吉長さんという女の人で、俺達より一学年上の二年生だ。ポニーテールがさらりとなびく、テニス部って感じの人だった。
彼女は影のことを見るなり目を丸くし、それから妙に親しげな態度を態度を取ってきた。 これは・・・見かけに騙されてるな。俺は一瞬で気が付いた。
吉長さんのCAの内容は、川口のものと全く一緒だった。一部千円、最高は7人。
しかし、川口の時とは違って、八割の報酬を持ちかけたところ、あっさり承諾してくれたのだ。
彼女が交渉の間中ずっと影を見ていたことは言うまでもない。まったく、便利な顔だ。
俺達はセキュリティー面を保証してから家を離れた。時間はものの10分とかからなかった。
交渉相手三人目はK中の岡本さんという二年生で、文化部系の頭が良さそうな女の人だった。
彼女のCAも、一部千円だったがこちらは最高15人となかなかのやり手だった。
今度は高宮が好みの真ん中をついたらしく、やはり八割でOKしてくれた。
セールスにおける見た目の重要さを痛感した。
そして、最後の交渉相手はS中の小谷という一年生で、おそろしく背の低いお坊ちゃまだった。見た目の通用しない相手だ。
影、高宮ときたから、次は俺の番かも・・・なんて期待を抱いていた俺は、人生こんなものさ、と諦めるしかなかった。もちろん、あの二人を差し置いて俺をタイプだと思うような女子がいるかどうかなんていうのは、その辺に投げ捨てるべき問題だ。
影の情報によると、彼はまだCAを知らないらしい。
「えーっと、誰ですか。」
ドアの隙間からひょっこりと出てきた小谷は明らかに不審そうな表情でこっちを見ていた。
影が一歩前に出る。
「いやいや、妖しい者じゃないんだよ。俺達は隣町の中学一年仲良し三人組。よろしくね。」
仲良し三人組のところで思いっきり影を睨んでやったら、同じく眼を飛ばしていた反対側の高宮と睨み合うことになってしまった。
「ねぇ、小谷君。俺達とCAやらない?」
「・・・しーえー?」
「カンニング・アシスタント。君のお母さん、中学の先生やってるだろう。」
「ど、どうしてそんなこと知ってるんですか。」
「ん、まあね。いろいろと調べたから。それでさ、君にちょっと頼みがあるんだ。母さんが作ったテストを俺達に流して欲しい。」
「・・・何だって?そ、そんなこと、できるわけないじゃないか。」
「知ってるんだよ。君、テスト前になるとお母さんから問題渡されて、解いた後採点されるんだろう?それだよ。その問題をちょっとコピーして俺達に渡すだけでいいんだ。」
「嫌だよ。こんなこと誰かにばれたら大変だ。」
「ああ、それは大丈夫。もしばれたとしても、君のお母さんが全力で隠し通してくれるよ。テスト前に問題を息子に渡していたなんて結構大問題になる可能性が高いからね。きっと必死になってくれる。」
・・・悪魔め。
「で、でも・・・こんなのいけないことだ。」
小谷はまだ納得しなかった。なかなかのまじめ君だ。俺は素直に感心した。
「もう帰ってくれないかな。僕だって忙しいんだ。」
小谷はそう言ってドアを開け、中に入って行こうとする。
「三千円。三千円で問題を買うって言ったら?」
影の言葉で閉じかけていたドアが止まった。
「来週12月16日、妹の誕生日。君は昨日高校生にカツアゲされたね?今いくら持ってるんだろうねぇ。誕生日プレゼント、買ってあげられるのかなぁ。」
「・・・・・・。」
「協力、してくれない?」
俺は確信した。こいつは悪魔だ。
かなり寒くなってきました。自転車通学には厳しい季節です。
最近は少しでも体を温めようと坂道を全力でこぐようにしています。
すると、不思議なことに到着時間が早くなったではありませんか。
浮いた時間を睡眠に回せて一石二鳥です☆
体力も付いた気がします!