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あけましておめでとうございます。お正月です。おめでたいですね。
ことよろです。
友達から来た年賀状にこんなことが書いてありました。
「あけおめ~しもよろ~」
しもよろ・・・?
こと「しもよろ」しく
だということは30秒考えないとわかりませんでした。
俺達には時間がない。その日の放課後には、もう次の交渉を始めようと、取引先の家へ向かっていた。
「俺が見当をつけてるのは全部で四人。川口とは成立したからあと三人だよ。今日中に全員と成立させたいところだね。」
そう影は言うが、俺は不思議でしょうがない。何なんだ、その情報は。教師の子供なんて、そう何人知っているものじゃないはずだ。一体どこから掴んできたんだか・・・。
しかし、影がただ者じゃないことはもう分かっているので深くは考えない。
「ところで、影、君はどうやって勉強してるんだ?とてもガリガリやるようには見えないのに、前回は学年三位だったじゃないか。」
高宮が訊ねたのは、実は俺も気になっていたことだった。
そう。影は成績がいい。授業中でも平気で爆睡するような奴なのに、テストの点だけはいいのだ。これじゃ自然の摂理にかなってない。摩訶不思議である。
「よし、じゃあ特別に教えてあげよう。実はね、アメリカで覚えたとっておきの方法があるんだ。」
何だって!?思わず身を乗り出す。
「テスト用紙にシャーペンで字を書くときのカリカリって音、あるだろう?あれを聞いただけで何の文字を書いてるのか解読できるんだ。前回は高宮の解答を写させてもらったよ。ま、作図とグラフの問題はさすがに無理だったけどね。」
そうか、高宮と影は出席番号が繋がっている。テストの時、影の後ろの席は高宮なのだ。学年一位の解答を盗めば、三位くらいにはなれるという訳か。
それにしても、人間業とは思えない芸当だ。何の参考にもならない。
「どのくらい、僕の答案に頼ってきたんだ?」
おそるおそる、高宮が訊ねた。
「うーん・・・十くらい、かな。」
「十?ああ、十問か。それで三位ならすごいじゃないか。」
ほっと安心する高宮。しかし、
「いや、十割だよ。」
「じ、十割、だと・・・」
高宮、あんたの気持ちは手に取るように分かるよ。『今までの苦労は何だったんだ』だろ?
「君たちもこの技をマスターすればどんなテストだって怖くないよ。ハーバードだってマサチューセッツだって楽勝だ。」
え、まさか・・・影、もしかして。
「ま、マークシート配られた瞬間に玉砕したんだけどね。」
「受けたのか!?あのハーバードを、その歳で!?」
「あんたバカか!テスト形式くらい事前に調べとけよ!」
すっかりショックから立ち直った高宮と、つい突っ込まずにはいられなくなってしまった俺に挟まれた影は、その攻撃から逃れるように手近なインターホンを鳴らした。
「ほら、着いたって。ここが次の取引先の家だよ。」
ハーバード大学の入学試験がマークシートかどうかには何の根拠もありません。
信じないでくださいね。
影と高宮の出席番号は名前順ではなく誕生日順で繋がっています。私の中学も誕生日順でした。
あ、どーでもいいですか。