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三人並んで仲良く下校するのが日課になってしまった。
雪でも降ってきそうな寒さの中、速歩で歩く。
「高宮、あんたが自由に使える金はいくら?」
「523円。」
「影は?」
「十円玉が五、六枚。」
「・・・そうだよな。十二月後半なんてお年玉目の前のギャンブル的シーズンだもんな。俺なんか一文無しだ。」
自然に溜息が出てくる。
藤野の前ではああ言ってしまったが、十万なんてすぐに用意できるものではないのだ。
「・・・もしかして、何の考えもなしにあんなこと言ったのか?」
高宮が不安とあきれの入り交じった表情で聞いてくる。
「そうだよ。だってしょうがないだろ。あんな話聞いちゃったら、ああそうか頑張れよで終わりにできないだろうが。」
「まぁ、そうだけど・・・」
「おいおい、俺ばっかり責めるなよ。二人とも協力するとか言ってただろ。『俺達で』なんとかする、って」
「あれは君に何か考えがあるのかと思ったからだ。」
「はっ、何だよ、結局人任せかよ。」
「何だと?」
「ねえ、いい考えがあるんだけど。」
いきなり影が立ち止まった。
俺と高宮は、危うくこの言葉を聞き流すところだった。少し歩いてからさっと後ろを振り返る。
影が隣に並んできて、また歩き出す。
「CAって知ってる?」
「キャビン・アテンダント。」
高宮が自信ありげに答えた。
「何でこの流れでそんな答えが出るの?カンニング・アシスタントだよ。」
「何、それ。」
俺と高宮の声が重なった。
「知らない?隣のクラスの川口、親が中学の教師やってるんだって。テスト前になると問題が家に置いてあるから、こっそりコピーして百発百中の予想問題作ってるらしいよ。それを親が勤務してる中学の生徒に売りつけてるって。これがCA。カンニング・アシスタント。他校でも教師の子供で一儲けしてるのが結構いる。この学校の予想問題も地味に出回ってるよ。」
俺は驚愕した。まさかそんなビジネスが存在していたなんて信じられない。こんなのがバレたら大変なことになるというのに、教師の子供がよくもまあ恐ろしいことを思いついたもんだ。
「それでだ。俺達もCAに加わろうと思う。」
「そんなこと、できるのか?」
高宮も目を丸くしていた。
「できるよ。いわゆるセールスマン的な働きをして、利益の何割かを頂くってわけ。教師の子供は何人か把握してるから、その人達と交渉して予想問題を売りつける仕事を引き受ける。名付けてカンニング・アシスタント・セールス。CAS!」
影が高らかに宣言した数秒後、俺は高宮にこそこそと呟いた。
「CAS、だな。」
「・・・本当だ、カスだ。」
こうして、俺達の一大プロジェクトは幕を上げたのだった
もうすぐお年玉の季節です☆