冬の章1
とうとう最後の章です。
この章はちょっと長くなるかもしれません・・・
冬の章 (12月8日、月曜日、くもり)
期末テスト一週間前。恩着せがましく授業を自習に変えたじいさん先生は、ストーブの温もりとテスト作成の疲れからか、うとうとし始めていた。
教卓の向こうに座って軽くいびきまでかき出す頃になると、生徒達の視線もそっちにちらちらと移っていった。
それでも、教室に漂っている「勉強必死モード」が薄れることはなかった。
頭を机にくっつけんばかりの前傾姿勢でガリガリとシャーペンの芯を消費し続けるクラスメイト達。
見ているこっちまで目が悪くなりそうだ・・・。
やれやれ、と俺は読んでいた本に目を戻す。
テスト前なのに、周りが勉強しているのに、自分は読書。
余裕をかましている訳ではない。むしろ後ろめたい気持ちもしているのだが、やる気が出てこない。
背中の丸まった教室の中で、一人姿勢正しく本を読んでいる俺は、やはり目立って異質なんだろう。
でも、やる気が出ないのはしょうがない。頭に入りもしないのに漢字だとか英単語だとかを書き殴っているなんて、それこそシャー芯無駄遣いだ。それならまだ、良書を読み深め、心を豊かにする方がいいに決まってる。
まあ、この本が果たして良書に値するほどの立派なものかどうかなんていうのは、また別の話で・・・。
・・・ふざけてるな。
俺は人生ナメきってるのかもしれない。何もしなくても中の上くらいはキープできているからといって、何もしなくていいというわけではないのだ。
でも、俺は思う。
一番ふざけているのは、こんな俺にあんな名前をつけたどこかの誰かなんじゃないだろうか、と。
静寂の中、
「ふざけてるわ。」
いきなり隣から小さな呟きが聞こえた。