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目の前には、くじの入った箱と四人の驚愕した表情。
「な、何で君がここにいるんだ。君が引くくじはあっちだろ?」
高宮が一歩後ずさりながら、大勢が集まっている方を指差した。その目は他の三人より1,5倍見開かれている。
俺はふっと不敵な笑みを浮かべた。
「A君は下克上しちゃいけないなんて誰が言った?俺が本当に狙ってたのはこの席なんだよ。」
「そ、そんなの反則だ。これじゃ僕の方が不利じゃないか。」
また一歩後ずさった高宮が背後の壁にぶつかった。
「じゃあその手の数字を見てみろよ。しっかり13って書いてあるだろ。それが反則なんかじゃない証拠だ。審判であるフッシンが下克上の中に俺を入れた。俺の下克上は認められたんだよ。」
「・・・そ、そんな・・・」
高宮が壁を伝ってしゃがみ込んだ。
「悪いな高宮。あんたは13回、俺は28回、確率として俺の方が二倍以上有利だ。でもあんたにも勝算はある。少なくともこの三人よりはな。それに、藤野の順位は俺より上だ。席の交換であんたの隣に行くことだって考えられる。・・・だからそんな目で俺を睨まないでくれよ。頼むから俺に呪いの言葉をぶつけないで。いつものニコニコスマイルはどこ行ったんだよ。もう何でもいいから貼り付かせとけって。怖いから。本当に呪われちゃいそうだから!」
今度は俺が後ずさる番だった。
普段からは考えられないような憎しみのこもった表情で、じりじりとにじり寄ってくる高宮。その口からは、ありとあらゆる呪詛の言葉がこぼれ出ている。
怖すぎる・・・。
「お、おいどうしたんだよ高宮。いつものお前らしくない。たかが席替えだろ?」
三人がなだめて高宮は少しずつ落ち着いていった。
放出させていた怨念を引っ込め、顔に笑みを戻らせた。なんとか貼り付かせた必死の笑顔は、だいぶ引きつってはいたが。
「わかった。それじゃあくじ引きを始めよう。」
高宮の震える声で、それは始まったのだった。