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多数決により影の提案は通った。八割の男子が賛成したのだ。
もちろん、悔しい思いをした奴が多かったのがその理由なのだが、何より彼の話した提案はおもしろかった。
俺の考えるところによると、このおもしろさは、影が話しているから生まれるものらしい。
こちらの考えを実に上手くくみ取り、それに合わせて口調を微妙に変化させる。淀みのない滑らかな説明に潜む揺らがない自信。
神宮司影。並の中学生じゃない。将来はやり手のセールスマンかプロの詐欺師になれそうだ。
「切磋琢磨、下克上九人の三倍で27回。プラス一で28、と。」
フッシンがネームペンで俺の手の甲に28と書く。くじ引きに参加する人間は、公正を守るために用意されたフッシンという審判によって、手にくじ引きの回数を書かれるのだ。
それにしても・・・なぜネームペンを使うんだ。これ完全に消えるまで一週間はかかるぞ。それもこんなにでかでかと・・・。
俺は、自分の手の甲を見た人間が「あの28には何の意味があるんだろう」と頭を悩ませている場面を想像し、溜息をついた。
その時、全員の手の甲に数字を書き終えたフッシンが言った。
「それじゃー、下克上を始める。参加する奴は箱の周りに集まれー。」
準備は整ったようだ。
俺はニヤリと微笑んだ。