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「あー、そこ俺もいいなって思ってたのに。」
周りで数人が気を落とした。ライバルは結構いたようだ。
いや、待て。高宮がそこを選んだと言うことは・・・まさか、あんたもライバル!?
俺にいろいろ教えていながら、実は高宮も狙ってたのか?
何か、裏切られた気分だ。いや、俺がこの席を狙っていることを高宮に言ってあったわけじゃないんだが。
ああ、こんなことなら恥ずかしがらずに言っとけばよかった。
「おーい、どうした切磋琢磨。早く席決めろー。後ろがつっかえてんだろーが。」
フッシンに促されたが、もう席なんてどこでもよかった。藤野の隣に座れなきゃ、三位なんて何の価値もない。
脱力しきった俺は、無意識のうちに席を選んでいた。世の中はなんて冷たく、厳しいものなんだろう、そんなことを考えていた。
「うわー、そこ一番狙ってたのに。」
「おいおい、切磋琢磨なんかに取られてたまるかよ。」
たくさんの溜息と残念がる声で俺は我に返った。
周りを見回すと、半分以上の男子が肩を落とし、こちらを睨んでいた。多少殺気のこもった目もあった。
・・・もしかして、俺・・・
おそるおそる視線を座席表へと向けた。
切磋琢磨の四文字は窓際の後ろから二番目、高宮の前の席にあった。
深層心理の専門家ではないが、少しでも藤野の近くにいたいという意識が無意識のうちに働いていたと思われる。
まあ、それはいい。しかし、問題は別の所にある。
俺の隣の女子、これが原因だった。
彼女は、どこかで密かにファンクラブが立ち上がっている程、男子からの絶大なる人気を保持していたのだ。
確かに、ぱっちりと大きく可愛らしい目や小さい顔は、テレビに出てくるアイドルみたいだし、百五十センチもないであろう身長が小動物のようでまた可愛らしい。
半分以上の男子が俺に向けてくる視線も分からないでもない。
でも俺は正直、そっちはどうでもいいのだ。人気ナンバーワンの女子の隣に座ったからって、ちっとも嬉しくない。
わるいな、この席を狙った男子諸君。俺は君達程この席を楽しめそうにない。でも、この席を譲る気はないんだ。許してくれ。
口で言うと大変なことになるから、ようやく目を覚ました心の中の俺に謝らせた。
順番はどんどん回っていき、席が埋まっていった。
中盤辺りからは、目欲しい席を全て取られてしまったのか、みんな隣の女子などお構いなしに、席の位置だけを判断材料としていた。
まあ、誰でも考えることは同じだ。席はきれいに後ろから埋まっていった。
そして、最後に残された席、最前列のど真ん中。そこは密かに「お見合い席」と呼ばれていた。そこに座ると、まさに先生と一対一で話しているような錯覚に陥るらしい。らしい、というのは、俺は運のいいことにそこにまだ座ったことがないからだ。
「神宮司、お前は自動的にこの席になるけど、いいな?」
フッシンが一応確認した。
あいつもかわいそうなもんだ。転校してきたと思ったら、いきなり訳の分からないランキングの最下位にされて、勝手に席を決められているんだから。不満の一つも言いたくなるだろう。
でも、あいつの口から出てきたのは、不満の言葉なんかじゃなかった。
「先生、提案があります。」
影が一歩前へ出た。
書いてて思ったことがあります。
切磋琢磨ってちょっと気持ち悪いですね。
一途って言えば聞こえはいいですが、ストーカーとかになりそうです。
これからは主役としてもうちょっとマシに書いていこうかと思います。