17の晩夏、窓辺の独白
はじめまして。
初投稿になります。
17歳の晩夏、ふと書きたくなった物語です。
独白のような、誰にも届かないラブレターのような、そんな気持ちを込めました。
静かに読んでいただけたら嬉しいです。
暗い部屋に散らかる無数のグッズたち。乱雑に床に置かれた雑誌と大量のチェキ。
ベッドの上でタオルケットを頭から被る。時を刻む秒針の音が煩わしい。だから、時計を投げて壊した。
学校に行きたくなくて、わがままを言って休んだ。学校に行くことを考えると、胸が苦しくなって、涙が溢れる。
理由は単純だった。苦しかったのだ。
友達になろうとしていた人と同じ人を推していた。ただ、それだけ。ただ、それだけなのに。苦しくて、辛くてたまらない。
私のほうが長く彼を推しているのに。大好きなのに。彼は私を見てくれない。彼の言う、『とてもお会いしたかったのですよ、お姫様』という言葉が、薄っぺらい嘘にしか聞こえない。彼は私だけのもののはずなのに。彼は皆に、たくさんのお姫様に笑顔を振りまく。彼は私だけの王子様なのに。
世界は残酷だ。神様も残酷だ。
私の愛する人はこの世にいない。もう存在しない。会える日が来るまで、別のものに没頭して、隙間を埋めているのに。
そんな悲しい恋さえ世界は拒み、神様は叶えてはくれない。
叶わぬ恋など、辛いだけなのです。神様が御慈悲をお持ちの方だというのであれば。叶えてくださいな。あの人のいない世界なんて寂しいだけなのです。私には耐え難いことなのです。だから、せめて。寂しさを埋めるための恋を叶えてはいただけませんか。
私の愛する人。月に照らされた夜道が似合う、私が唯一愛する人。
困ったように笑っていないで、迎えに来て。
私、もう限界ですから。
貴方のいない寂しさを埋める手段は消えてゆきました。
私の愛しい人は罪な人。
貴方の美しさは、儚さは、人を魅了し、狂わせる。
お金がなくても。どんなに苦しく、辛いときでも。貴方がいてくれるだけで、乗り越えられたのに。それは今も昔も変わらないのに。
夢路でさえ逢えなくなった今、私はどうすればいいのでしょうか。
もう、昔のように愛しい人をただ待つことには飽きてしまった。もうお利口に待つことはできなくなってしまった。
逢いたい。逢いたい。そんな想いが絶えず零れては、シーツの色を変えていく。
私はもう、王子さまのいないシンデレラ姫じゃない。愛しい王子さまのお迎えを待てなくて、なんとしてでも逢いに行こうとする、わがままで手のつけられない、下品なお姫様。
人は恋と革命のために生まれてきたのでしょう? だったら、どちらも成さなければ。生まれてきた意味がなくなってしまう。
私の炎は、お酒の上に落ちて消えるようなものではないのです。アブサンのように水をかけられない限り、消えることはない。
お願い、絶望を注がないで。注ぐなら、希望という名の油にしてください。
もう、笑って誤魔化すのはおやめください。
私のためを想って誤魔化していること、分かっています。
この世に未練なんてございません。だから。だから、そちらの世界に連れて行ってください。
優しい嘘なんて要りませんから。サーブされたカーディナルなんてひっくり返して、コープスリバイバーを突き返してあげる。
そこまで考えて、思考は止まった。
外では子どもたちの楽しそうな声が響いている。
あぁ、無垢であった頃に戻れたら。何も知らない頃に、戻れたら。
虚しくなって、タオルケットにくるまったまま、寝転んだ。
このまま目覚めなければいいのに。何度となく夢見たことだ。そうすればきっと、あの人に逢えるから。
微睡みを揺蕩って、ゆっくりゆっくり沈んでいると、煙草とお酒が混じった独特のにおいが鼻を掠めていった。もしかしたら、逢えるのかも。淡い期待が小さく花開く。
僅かに胸踊らせつつ、意識を手放す17の晩夏である。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。乱文で申し訳ございません。
引き出しの奥底にあった、数年前の自分が書いたSSです。そのまま捨てるのもな、と思ったので、投稿させていただきました。
感想等お気軽にどうぞ。