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#24

「クゥ~、外の空気だ~!やっぱり、図書館だと思いっきり話せないね」


そう言いながら獅音は体を伸ばす。そんな彼を横目に琥珀は小さなため息をこぼした。


――何か疲れた。図書館でできないなら帰るしか……。



「よし、じゃあカフェに移動しよ!」

「は、何で?」

 

意味が分からないという顔をすせる琥珀。獅音は予想が当たったことに少し嬉しくなった。


「だってさ、せっかく集まれたのにここで解散しちゃったらまた時間つくらないといけないんだよ?だったら、今日ある程度終わらせちゃった方がいいじゃん!」

「た、たしかに。」


予想外な理由に驚いた琥珀は、得た情報が脳まで届く前に反応してしまった。そのせいか、琥珀が反応すると同時に獅音が計画通りに進んでいることに対する笑みを浮かべていたことに気づいていなかった。


「さ、そうとなれば行こ!僕、騒いでも平気で、しかも安くドリンクが飲めるとこ知ってるし!」

「騒いでもって、別に騒ぐ気ないんですけ……ってちょっ」


琥珀の気が変わらないうちにと、獅音は琥珀の背中を押しながら校門の方へと進んだ。駅の方へとルンルンで進む獅音の後ろを琥珀は、アヒルの子のように静かにただついていく。


「あ、琥珀はいつも電車通学?」

「いや……家が近いから、歩き。」

「ならよかった……あ、でも大丈夫かな。一応電車は乗らないんだけど駅のちょっと先でさ……結構歩くことになっちゃうんだ」

「平気、長時間歩くの慣れてる。」


獅音は、琥珀の返事に安心する一方で琥珀の瞳が気になった。


――よかった、今も琥珀の色だ。


たまに見かける、無理やり塗りつぶしたかのような真っ黒な瞳。

あえて自分で作っているかのような冷たい硝子をした瞳。

けれど今は……ちゃんと琥珀の瞳だった。


「駅ついたけど、この先どう行くの?」

「え?」


ふと耳に入る琥珀の声に獅音は、我に返った。


「いや、駅のちょっと先って言ってたから。」

「あ、ああ……えっと、こっち!」


――あれ、思ったより乗り気でいてくれてる?……いや、多分早く終わらせたいんだろうな。そうすれば今後放課後はすぐに家に帰れるし。ダメだ、切り替えなきゃ。


「あ、琥珀!ここ!お、しかもちょうど人少ないじゃん」

「お、おじゃれだな……」


獅音が指をさしたそのカフェは、外観がガラス張りでどこか大人っぽさを漂わせている。入る前からそのオシャレな雰囲気に圧倒され自分の場違いさを感じた琥珀は、思わず一歩足を引く。


「店の周りに花壇。」

「そうそう!このお花たちかわいいよね~、結構僕気に入ってるんだ!」

「花ってかわいいんか……。」


――多分想像とは全然違かったんだろうな……琥珀って顔、分かりやすい。やっぱり僕は瞳以上に色んな琥珀の表情が見てみたい。


「ようこそ、僕のバイト先へ!」

「は?」


にやつきながら言う獅音に琥珀は、感情を抑えきれず小さな声で心の声を漏らした。

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