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#20

こんにちは、ゆきん子です⛄

あっという間に20話突入!数ある作品の中で見つけてくださったこと、さらに読んでくださったこと感謝の気持ちでいっぱいです。

辛い、悲しい部分もあり執筆している私自身辛くなる時はありますが、そんな二人だからこそ幸せになってほしい、そして自分自身を……自分の思いを大切にしてほしいと願いながら綴っています。

ゆっくりと動き始めた2人の関係性が今後そのどうなっていくのか……。

今後もそんな彼らを温かく見守っていただけたら嬉しいです


いいね、感想等もいただけたら幸いです!

今後ともよろしくお願いいたします!

作業へと戻った琥珀は、黙々と本を決められた棚へと戻していた。


下の段の本の収納が終わりカートからまた本を取り出すために、しゃがんでいた腰を持ち上げる。

すると、ふと琥珀の視界にいくつかの本を持った獅音と碧音がカウンターへと向かう姿が映った。


――げ……ってもう帰るのか。それにしても2人とも仲いいな。


曇りのない綺麗な笑顔を放つ碧音に対し、優しい笑顔で返す獅音。弟に向けるその笑顔にも昨日話した悲しみや苦しみが含まれているのかだろうか。しかし琥珀はあえて探らないようにした。家族の中でも、血を分け合った兄弟だから……。

琥珀の視界が獅音の手元へと変わる。


――あれって……料理するときに使う本だよな。なんで……親とかが使うのか?ま、俺には関係ない。


その疑問を無理やり感情の棚にしまうかのように、琥珀は手に持つ本を棚へと入れていった。


あれから3日が経ち、水曜日がまた巡ってきた。琥珀にとってあっという間と感じる早さだった。


『バイトお疲れ様!今日は新たな琥珀を発見した!(笑)水曜日いつもみたいに廊下のところで待ってるね~』


あの日送られた獅音のこの連絡をバイトを終えた後に既読へとしてから……もう3日が経過していた。変化など起きるはずがないのに、この画面を表示しては、画面が暗くなるまで見つめる……これを何度も琥珀は繰り返していた。


――気まずい。普通に今、斜め前の席にいるし、まぁ2列くらい離れてるけど。てか交換してから初めての連絡って普通こんな感じなのか?もっとこうよろしくとか挨拶を交わしあうんじゃ……まぁだからと言って俺からはやらないけど。


「ハァ……」


感情の生産が追い付かずひそかに琥珀はため息をつく。

琥珀は、分からなかった……どう返すのが正解なのかも、そもそも琥珀と獅音のこの関係が何と呼ぶのかも。

琥珀は、視線だけ斜め前の席へと移した。

背中越しに見えた獅音は、ノートをとっているかと思えば、上を見て何かを見つめているにでもあった。時には獅音の隣に座る友達らしき人物と話したりしている。

普段と変わらない獅音の姿……いつもなら気にも留めないその姿が今日はやけに琥珀の心を何色もの色へと染めていく、変な気分だった。


授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。しかし、琥珀には獅音との約束の時間を知らせているようにも聞こえた。

気付けば教室には琥珀と教員、数名の生徒だけとなっていた。獅音の姿はない。


――やっぱり冗談か。


なぜか、獅音の心に紺色の感情が流れ始める。さっきまで明るく見えていた視界が、前髪が原因なのか少しだけ暗く見えた。荷物をまとめ、いすを丁寧にしまって見せる。普段しないことをすれば少しは気分も紛れるかもしれない、ふと琥珀の頭にそんな考えがよぎった。

教室を出て食堂へと向かう。


――冗談なら送るなし。信じた自分が馬鹿みたいだ。今までの俺ならそんな()()と交わすような言葉……信じなかったのに。どうしちまったんだろう。


今度は黒に近いグレーな色をした感情が琥珀の心の中へと流れ始める。自分が冷静でいられなくなりそうな恐怖を琥珀は感じた。


――今日は、絵を描いてから帰ろう。


そう心に決めながら進んでいくと食堂が見えてきた。さらに食堂へと近づいていくと、見覚えのある人物が壁に背を預けて本に目を落としていた。その人が読んでいたのは、図書館で見たことのある本だった。


「料理本……。」


無意識に琥珀は呟く。


「あ、やっと来た!いつもより遅いからちょっと心配しちゃった」


そう嬉しそうに話しかけてきたのは、琥珀の悩みの根源――獅音だった。

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