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第二章 第一節 会談の扉

第二章始まります!

ここから読んでくれた方はありがとうございます。

第一章から、引き続き読んでいただいた方は本当にありがとうございます!!


第二章からは六種族が登場し、敵組織のキャラクターも登場します。世界観が大きくなる章なのでお楽しみくださいませ。

王都アルディナス——

 六種族の盟約によって繁栄を築いた大陸最大の都。その城門が、朝靄の中、静かに開かれた。


 まだ人々の動きがまばらな朝の王都。その静けさを破るように、次々と現れたのは異なる文化と誇りを背負った一団たちだった。


 エルフ族の使者を乗せた、銀の細工で飾られた葉紋の馬車。

 火山鉄の車輪を軋ませるドワーフ族の装甲車両。

 猫人と犬人の騎獣たちが地を駆け、

戦士の国ヴォルカニアからは巨大な鎧騎兵が重い足取りで進んでくる。


 王都の人々は、思わず足を止めた。


 「エルフ族の使者……!」

 「ドワーフの重戦車まで……ただの儀礼じゃないぞ」


 囁きと視線が街を包み、疑念と不安が静かに膨れ上がる。王都が迎えるべき日常は、確実に非日常の色に染まり始めていた。


***


王城アルディナス・女王執務室


 朝の光が大きな窓から差し込み、重厚な調度品と無駄のない書類棚に柔らかく反射していた。

 その中心、豪奢な机の前に座っているのは、この国の女王——イザベル・アルディナス。


 だが、謁見の間で見せた“女王”の顔とは違い、今の彼女は肩の力を抜き、どこか母親のような穏やかさを纏っていた。


 「改めて三人とも、無事に帰ってきてくれて何よりです」


 机越しに向かい合ったアシュラン、レオンハルト、グレンの三人を見渡し、イザベルは微かに微笑む。


 「無茶ばかりするあなた達のことだから、どんな顔して戻ってくるかと心配してたけど……とんでもない土産話を携えてきましたね」


 その言葉に、グレンが気まずそうに頭を掻く。

 「へへ……まあ、俺たちの行くところ、大体いつも騒ぎになるんで」


 「自慢にならないわよ、それ」

 イザベルはため息混じりに言いつつも、どこか嬉しそうだった。


 「それと……」

 彼女の視線が、執務室の隅で控えていたレイへと向かう。


 「あなたも、レイ。元気になってくれてよかったわ」


 レイは少し戸惑いながらも、静かに一礼した。

 「……はい。ご心配をおかけしました」 


 「それから……無理はしないこと。あなた、まだ顔色が完全に戻ってないませんよ」

 イザベルの声は女王ではなく、どこか優しい母親のようだった。


 レイは思わず目を見開き、そして小さく微笑む。

 「ありがとうございます、陛下」


 「それでは、本題です」

 イザベルは机の上の書類を一瞥し、改めて三人とレイに視線を戻す。


 「今日これから開かれる六種族会談。アシュラン、レオンハルト、グレン、そしてレイ。あなたたち四人にも、会議への出席をお願いしたいの」


 アシュランが目を見開く。

 「私たちも……ですか?」


 「ええ。理由は二つ」

 イザベルは指を二本立てて、穏やかな口調で続ける。


 「ひとつは、現場で異変を直接目撃した者の声が、どれほど重みを持つか。これは会議の場であたしがどれだけ訴えても、現場を知らない者には伝わらない。あんたたち自身が語った方が、各族の代表たちの胸に響く」


 「そして、もうひとつは……」

 イザベルはレイに目を向け、柔らかく微笑む。


 「レイ。あなた自身の存在と力は、この事態において極めて重要になるわ。あの場で何が起きていたのか、その目で、心で、感じ取ってきた者として、あなたの言葉は無視できない」


 レイは目を伏せ、小さく頷いた。

 「わかりました。私も……この世界の未来のために、できる限りのことをします」


 イザベルは満足そうに頷く。


 「そう、それでこそ。アシュラン、あなたたち三人も異論はないわね?」


 「もちろんです」

 アシュランはすぐに答え、レオンハルトとグレンも無言で頷いた。


 イザベルは椅子にもたれかかり、少しだけ柔らかな笑みを見せる。


 「たまには、あなた達とゆっくり話す時間も欲しいところだけど……今はそうも言ってられませんね」


 そして最後に、冗談めかして付け加えた。

 「それと、会議の場で下らない冗談を飛ばしたら、あとで謹慎処分ですよ?」


 「う……俺のこと見て言ってますよね、それ」

 グレンが肩をすくめて苦笑すると、イザベルは愉快そうに目を細めた。


 「自覚があるなら結構。じゃあ、準備が整い次第、大広間へ向かいましょう」


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