第一章 第一節 王都の決断
第1章が始まります。
ここから読んでいただける方は、本当にありがとうございます!
物語の始まりなので、説明が多いかと思いますが、
お付き合いいただけると嬉しいです。
それでは封印戦記、始まります٩( ᐛ )و
―王都アルディナス―
この地には、千年の歴史が刻まれている。大陸の中心にそびえる城は、幾多の戦火を超えてなお美しく、白亜の壁は朝日に照らされて淡く輝いていた。
王城アルディナス・謁見の間
静寂と荘厳さが支配するその空間の中心、王国の女王にして神聖騎士団総帥、イザベル・アルディナスが白金の王座に座していた。
その身に纏う衣装は神聖騎士団の総帥としての威光を放ち、背筋を一分の隙もなく伸ばす姿は、ただの王ではない“覚悟”をにじませていた。
「よく集まってくれました」
イザベルの声が響くと、膝をつく三つの影が一斉に顔を上げた。
神聖騎士団副団長レオンハルト・ルシアード。
黄金の髪に鋭い双眸を持ち、無駄のない所作と冷静な判断力で騎士たちの信頼を得る男。
戦士の国ヴォルカニアの傭兵グレン・ストレイヴ。
赤い髪と野性味を帯びた鋭い視線を持ち、粗野ながら実力は折り紙付き。
そして、二人の間に立つのは女王の息子にして、感応者の素質を持つ青年アシュラン・アルディナス。
銀の髪に王家の血の証を宿し、まだ若きながらも静かな闘志を滲ませていた。
「東方のオルデナ遺跡にて、封印の異常が確認されました」
イザベルの言葉に、三人の表情が一瞬で引き締まる。
「……封印が?」とアシュラン。
「ただの経年劣化では?」とグレンが呟く。
しかしレオンハルトはすぐに問いかけた。
「各国への報告は?」
「まだです」イザベルは毅然と答える。「現時点で報せれば、不用意な混乱を招きかねません」
「ふうん……随分慎重だな、女王様」ガレンが肘をつきながら苦笑した。
「慎重であるべきです。これは……予兆かもしれませんから」
女王の言葉は重い。
古来より、大陸に散らばる六つの封印は“魔王”の復活を防ぐための要石だった。だがその均衡が崩れるということは、単なる魔物の発生では済まない。
「アッシュ」
イザベルが、実の息子に視線を向けた。
「これはあなたにとっても、大きな試練となるでしょう」
アシュランはゆっくりと頷いた。
「……分かっています。俺にできることを、やってみせます」
感応者、それは“気配”を読み取り、わずかな異変すら察知する特殊な能力を持つ存在。アシュランはその稀有な力を、過去に幾度も発揮してきた。
「封印の異常、そして魔物の出現……。すべてが偶然でないのなら、行動を起こすべき時です」
レオンハルトが口を開く。
「……現地に向かい、事実を確かめ、必要ならば武力行使も辞さない」
「オッケー! どうせ戦いになるなら、俺達の出番ってわけだな!」と、グレンが豪快に笑う。
イザベルはそんな三人を見渡し、厳しさの中にある柔らかさで語りかけた。
「アッシュ、レオンハルト、グレン……王国は、あなたたちに未来を託します」
***
王都の石畳を三人が歩いていく。
アシュランの肩にはまだあどけなさが残るが、その瞳には迷いがなかった。
「母上……いえ、女王は……俺に“なに”を求めているんだろう」
「答えは現地にある。それが騎士の道だ」レオンハルトが短く返す。
「つーか、ちょっとは気楽にいこうぜ」グレンが頭の後ろで手を組みながら笑った。「何が出てきても、俺が全部ぶっ飛ばしてやるからさ」
三者三様の歩調が、一つの目的へと向かって進んでいく。
まだ見ぬ封印の異変。
そして、その背後に潜む“暗黒の影”。
だが、彼らはまだ知らない。
その地で待つ“謎の少女”と出会うことを。
そして、それが世界の均衡を揺るがす戦いの始まりであることを。
《封印戦記》、ここに開幕。




