殺人?
「…生きてる。」
翌朝、初めに発した言葉はそれだった。自分が何故生きているのか、不思議だった。
目を閉じ、深呼吸をして生を実感する。なんとありがたいことなのだろう。
そして違和感に気づく。違和感がないのだ。
卯月が隣に居ないのだ。
その瞬間、頭が真っ白になる。意識が、遠のく。何が起こったのか、寝ぼけた頭では理解が出来なかったのだ。
数十秒たち、意識が現実へと引き戻される。冷静になり、部屋の周りを見渡す。
特に荒らされておらず、人がこの部屋に立ち入った痕跡はなさそうだった。
だとしたら尚更理解ができない。僕は部屋を飛び出して、階段をかけ降りた。
リビングに着くと、目に広がる光景に衝撃が走る。
「…え?」
「あ、おはよう。」
卯月がエプロンで朝食を作っていた。
***
「できたよ。」
「…ありがとう。いただきます。」
目の前の朝食に手をつける。
「お家の人、みんなお出かけだったから私が作ってみたよ。どうかな?おいしい?」
「うん。美味しい。」
「そっか。良かった。」
笑顔が視界に入る。……?
……いつもと、何かが違う。笑顔が、ぎこちない?悲しそう?
………………勘違いか。
そう思って僕はそこまで気にしなかった。
***
朝食を食べ終わり、僕と卯月で洗い物をしている時、卯月はこういった。
「今日、月を見に行かない?」
「え?」
予想もしていなかった言葉に少し戸惑う。
正直、とても見させてあげたくはあるが、昨日の件がある為、容易に同意はできない。
「ごめんをそれは無理かも。」
「じゃあ、貴方の部屋から、二人で一緒に見よう。」
「それならいいけど……本当にそれで大丈夫?」
「うん。いいよ。」
いつもと様子が違う卯月に僕は狼狽した。
***
夜、二人で窓に乗り出して空を見た。
卯月がこう言った。
「懐かしい……」
「懐かしい?」
「…もう、言ってもいっか。」
「言ってもいいかって……?」
「私、お父さんを殺したの。」
「え?」
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