早すぎる別れ
その夜、僕と卯月は付き合った。訳の分からない事だ。
僕と卯月が出会って数日も経っていないと言うのに。何がどうなってこうなったんだ。
頭が情報を処理するのに時間が少々かかった。
卯月は一連の話を終えると、いつもの笑顔に戻った。健気で可愛らしい。だが、少し暗い話をした後だからか、顔に悲しさの様なものも混ざっていた。
寝る前、卯月が僕にキスをしようとしてきたが、少し照れ臭かったので拒否した。
***
翌日、卯月が僕の横から消えていた。
昨日と同じかな?なんて思い、起き上がろうとすると、紙が置いてあることに気づく。そこには長文で、こう綴られていた。
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小太へ
先ずは、ごめんなさい。
小太には、色々迷惑をかけちゃったよね。
気遣いもさせて、不安にもさせて、家にも泊めてもらって。
小太と初めての出会いは、私が自殺しようとしている時だったよね。
嬉しかったんだ。私の事をあんなに必死に助けてくれる人が居るって、知らなかったから。
小太は私じゃなくてもきっと助けただろうけどね。
だけど、嬉しかった。こんな私を、見てくれる人がいるって知らなかったから。
私はこうやって文章を書くのが凄く苦手なの。きっと変な所が沢山あると思う。
普通の人が見たら笑うと思うけど、小太は優しいから笑わないでくれると信じて、手紙を書きました。
ありがとう。ありがとう。大好きだよ。
本当に、迷惑をいっぱいかけてごめんね。
これ以上は、もう迷惑をかけたくないの。
ポスター、剥がしてくれてありがとうね。
辛い思いさせてごめんね。
付き合ってすぐ死んじゃってごめんね。
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……え?どういうこと?
紙を裏返す。そこには、力強い手書きの文字で書かれた『迷子の娘を探しています』というメッセージと、電話番号、卯月の写真が載せられていた。
そう、この紙は、僕が全て処分したはずのポスターだった。
僕は急いで階段を降りて、一階にいる家族に質問をぶつけた。
「母さん!卯月は!」
「今朝、焦った様子で出ていったけど…どうしたの?そんな必死で。」
「卯月が…自殺しようとしてる!」
「え!?」
「…止めてくる!!」
「ちょっと!どういうことなの!」
僕は靴を履いて家から飛び出した。
あと少しで完結です。