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挿絵(By みてみん)

「本日の天気は、晴れのち砲弾なりってな」

 ヨシギの笑えないオヤジギャグ。砲弾も雨も、連邦(コモンウェルス)の共通語では似て聞こえなくもない。

 たちまち大河“壁”の川岸で盛大な爆発が起こった。光と煙が見え、少し遅れて爆音が届いた。“壁”の対岸はブレーメンの視力を持ってしても見えにくく、空の下の方の一筋の影が、地平線なのか水平線なのか判然としない。

 そんな距離からこちらを狙っているのは何百年も前の型式の牽引式野砲で、観測班無しで砲撃したところで、第3師団の前線基地に当たるわけもない。前線基地、といっても小高い丘にテントが並び、簡易な掩蔽壕(えんぺいごう)は目下、支援隊の工兵たちが建設中。

「前線とはいえ、温かい食事が摂れるとは思いませんでした」

 ソラは配膳プレートに乗ったイモにフォークを突き刺した。ブレーメンの味覚に合わせて塩をどっさりとかける。他に脂身の多い骨付き肉とビスケットもついている。

 ほんの一晩のうちに追加の巡空艦が到着し、丹念に準備砲撃をする傍ら支援隊がせっせとテントと炊事場を作り上げ、日が登る頃にはベッドで仮眠がとれた。

「戦争ってのは気が滅入るんだ。だから軍は兵士に必須なものから用意する。心地の良い寝床、温かい飯、兵器の整備、無料のまずいタバコを毎日1箱。ソラ、その次はわかるか?」

「んー、ヒトの趣味で言えば、酒でしょうか」

「酒は勝った後と死ぬ前って決まってる。そうじゃない、娯楽だ。明後日には野外映画場が完成してるだろうよ。第3師団はともかく、財団はそのあたり、しっかり準備していたようだしな」

 確かに──前線の粗末な集結基地だが、士官よりも復興財団(ふっこうざいだん)の管理職を多く見かける。私兵の警備を引き連れ、走り回って兵士たちの御用聞きから銃弾の搬入までをこなしている。

「ねぇ、デザート。デザートがないんですけど」ニロは財団の担当官に詰め寄る。

「あたしはケーキがいいな。バニラのホイップクリームで、板チョコがそのまま入っているような」フェイフェイは、口に物が入ったままもごもごと文句をつける。

 あいかわらずのかしまし(・・・・)娘たちは、(から)の弾薬箱に並んで座って食事を摂っていた。その輪の中でアヤカは朝から顔が青いまま、もそもそと食事を無理にでも飲み込んでいる。その視線の先──

「ソラ、もっと食べるべき。肋骨(あばら)が出てる。筋肉も少ない。ほら、口開けて。あーん」

「いいって、食べさせなくても! 自分で食べられるから」

「だめ。わたしの分もあげるから。あーん」

 他人にフォークを向けられるのは恐怖があった。配膳プレートの食料はかなり多かったが、さらに食べさせようとアーシャに体を密着させられた。

 (はり)小隊は、ベッドが並ぶテントの前で食事を摂っていた。そのテントの向かい側は可変戦闘車(ジャガー)の整備スペースで、強い日差しの中で整備士たちと調整員(テッキー)たちがジャガーを修理していた。修理と言っても、モジュールごと交換したり、穴だらけの装甲板を新しいものに交換するという作業だった。時間が進むに連れ、交換されたスクラップの山が高くなる。

 ソラが重たい腹を抑えて立ち上がると、ちょうどソラの可変戦闘車(ジャガー)の上に立っていたルナと目があった。両手には光ケーブルの束を持ち、焼き切れた外部カメラの整備が終わった頃合いらしい。

「作戦が決まったわ。みんな注目して」

 働き者の寿(ことぶき)少佐が食後のゆるい雰囲気の小隊テントへやってきた。働き詰めでも薄い化粧にきっちりと結い上げた髪は一本もみだれていない。さすが軍人。それに比べ、ニロやアーシャは乳の下が蒸れると、官品のシャツに手を突っ込んでぼりぼりとかいていた。

「で、作戦立案は財団か?」

「半分は、私が」

 ドヤ顔をキメる寿少佐。

「そいつは、不安しかないぜ」

 ヨシギがまだ剃っていないあごひげを撫でた。

 少佐がドラム缶の上にブリーフケースを置くと、立体映像が流れた。戦場の両軍の陣営がわかりやすく描かれている。“壁”を挟んで両陣営が対峙している。こちらの戦力は大隊1個分。なおも増加中だが機甲部隊も砲兵部隊も足りていなかった。

「今、こちらの目下の目的は対岸に橋頭堡(きょうとうほ)を築くこと。テウヘル側はそれを阻止するため、セオリー通りなら鉄橋を爆破するでしょうね」

「辺境のボロ橋と思ったが、構造はかなり強固だ。で、破壊阻止をするにはあの狭い橋を渡って向こうへ行かなきゃならない。ジャガーの最大速力で……」

「約250秒ね」

 大河の一番狭い部分とはいえあの川幅なら、たしかにそのくらいかかる。そして橋の上には鉄道が敷いてある以外、遮蔽物がない真っ平らな道だった。

「先陣を切って戦う連中がかわいそうだ」

「それはあなたたちよ」寿少佐はさらりと言ってのけ、「可変戦闘車(ジャガー)の整備はもうまもなく終わる。それにこの状況で、敵陣を素早く攻撃できる部隊はほかにいないでしょう?」

「巡空艦はどうしたんだ? こういう厄介な敵はやつらの担当だろうが」

「航空大隊から嫌味を言われたわ。私達の部隊がもっと早く動いていたら損失はなかったのに、ってね。昨日、作戦中に1発、“ズットロブ”が撃ったでしょ。あれで偵察(ピケット)艦が沈められてね」

「だからって、橋を爆破されたら元も子もないだろう」

「その場合、河を泳いで渡れ、だって」

 バカな。こんな長い距離を渡河なんてできない。反重力機構は水の上では無力だ。

「となると、砲弾を喰らいながらになるな。ニロのカウンター攻撃があったとしても」

「というか一緒に橋を渡ったら真っ先に狙われちゃいますよ、私。味方越しに援護射撃なんてできないですし、川岸からだと射程圏外です」

 ニロが冷静に反論した。

「アーシャちゃん、砲弾を切り落とせるわよね」

 寿少佐がさらりと言ってのけ、アーシャもうなずく。

「なので、アーシャちゃんとソラくんが先陣です」寿少佐は立体映像の地図を指差すと、「煙幕を前方へ展開しながら前進。対岸が近づくに連れて砲火が密になる。そこを押し通り、敵陣地の速射砲を叩いてほしい。針小隊到着後すぐに、工兵隊の載せたトラックが出発します。爆薬の解除までなんとか工兵隊を護衛すること。これが今回の任務です」

 小隊メンバーの顔に緊張が走る=無茶だ。

 ヨシギがうなり、寿少佐もわざとらしくテントの外を見た。

「アーシャちゃん、元・仲間を斬れるかしら」

「うん、愛する男のため」

 そう、ぐいぐい抱き寄せるのはやめてほしい。

「フフ、仲がいいのね。でもこの先、ヒトサイズの兵士も多いという意味よ」

 アーシャの顔が一瞬だけ曇った。

 寿少佐が立体映像の、陣地化された対岸を指さした。「ブレーメン遺跡群」と文字列が浮かんでいる。

「巡空艦の偵察によると、速射砲と滑空砲、あと少数だけれど自走砲も並んでいる。どれもヒトが扱う普通のサイズね。つまりこの先は生身の兵士もいるということ。旧式の35口径、手動装填式。500年前からあるやつ。駐屯地の資料館で見たことあるかしら? アヤカちゃんが背負っている滑空砲のご先祖様。可変戦闘車(ジャガー)の正面装甲は、そうね、理論上は砲弾を防げるのだけれど何発も耐えられるものじゃないわ。中の操縦士も1発目で鼓膜が破れ2発目で軟組織が破裂する。それと、接近戦の際は、兵士が運用する対戦車ロケット弾、それに地雷にも気をつけて。成形炸薬型だから痛みを感じる前に焼き殺されるタイプのね」

「戦闘は、攻撃側よりも守備側のほうが有利」

「ええ、そうねソラくん、よく教練を勉強しているわね。現状の物量は互角。なら敵側に有利のだけど、戦力差はあなた達が覆してくれると信じている」

 やはり皆の顔が曇っていた。ヨシギも寿少佐も少しだけ困り顔になって、

「ほら、いつものお前らはどうした? 自信過剰気味、なんでも笑ってこなしてしまうお前らだ。今回だってなんとかなるさ」

「そうよ、みんな。危ないときはヨシギ・コウがなんとかして(しの)いでくれる。ここが正念場よ。ここを超えられた、あとは一般兵の可変戦闘車(ジャガー)と歩兵隊の出番。第3師団も財団も、十分な手当てを支払うと約束している。学費に加えて数年間は遊べるぐらいのね。これが最後の出撃だと思って」

 三々五々、暗い返事が聞こえた。

「今は正直、お金より砲弾がほしいよね」

 可変戦闘車(ジャガー)の駐機エリアで、ニロがぼやいた。ヨシギ隊長と寿少佐は連れ立ってどこかへ行ってしまっている。

「そうだよ。あそこに巡空艦が浮かんでるじゃん。ぶっぱなせよな、もう」

 フェイフェイも不満げに爆発反応装甲を蹴る。どれも新品に交換済み。

「あんたたちねぇ。先頭はソラよ。彼を見習いなさい。不満一つももらさない」

 お姉さん役たるアヤカも2人の軽口に釘を刺す。

「ソラはブレーメンじゃん。目視で砲弾を避けるんだよ」ニロ=操縦士スーツの乳の収まりを直しながら。

「ついでにアーシャも隣で一緒だし。場所を取られて不満なのかな」フェイフェイ=わざわざアヤカの隣で/やっぱり頬をつねられてる。

 みんな大切な仲間だ。だから僕がちゃんとしなきゃ。

 ソラが可変戦闘車(ジャガー)のハッチを閉め、めずらしく一番に発進準備を終えた。後席で膝を抱えるアーシャは、すでにパンツ1枚になっていた。頭のつむじ(・・・)のところに緑の軟体動物のポポも揺れている。

「むぅ、ソラ。裸を見ても目をそらさない」

「さすがにもう見慣れてるから」

 しかしなぜか小突かれた。

「ソラ、疲れてる?」

「いや、全然」

 疲れなんて、腰に下げている2振りの刀に触れたとたん吹き飛んでしまう。もっと戦える、そんな気持ちさえ湧いてくる。

「じゃあ、どうして暗い顔なの? ちゅーしてあげようか」

「いや、しなくていいよ。僕はただ、みんなが不安そうにしているから。やっぱりこれまでと違って大規模な戦闘だし、死者数だって、すごく多い。黒い遺体袋を回収するのに何時間もかかったのを見た。みんな、不安なんだ。あの袋の中に入ってしまうんじゃないかって」

「むぅ、ソラ、悪い考え。不吉なことは戦いの前に言わない。だからちゅーしてあげる」

 アーシャがムクリと起き上がると──なまじ背が高くソラよりもいい体格で──ぐいぐいと迫ってくる。ソラはアーシャの手を掴んだがぐいぐいと押し返される。

「くそ、なんでこんな力が強いんだ!」

「これぞ愛の力」

 そんなわけあるか。

 ビープ音──ちょうどいいタイミングで、ヨシギ機から小隊各機へ通信が入った。

各機(かっき)へ通達。発進するぞ。敵も動き出したみたいだ。ソラ、燃料の消費は気にするな。全力でいけ。250秒間はニロの狙撃援護もできない』

「まかせてください。みんなで勝ちましょう!」

 頼られる楽しさ/戦えるワクワク。

 両手にグローブをはめ、操縦桿を握る。反重力機構=正常。AIによる自己診断=戦闘可能。推進機のタービンブレードが予備始動──点火。2基の推進機が青い炎を吐き出す。

 ハッチ開放──その入口にアーシャが手をかける。ポポとはすでに1つに合わさっていた。パンツはもう履いていないので、ソラはそちらを見ないように、

「がんばろう、アーシャ」

「うん。私のかっこいいとこ、みせたげる」

 鉄橋が迫ってきた。昨日の大爆発のクレーターと残骸を避けて進む。川岸に近いところは古びた鉄橋だったが、大河の中ほどまで進むと、見上げるほど高い塔が立った()り橋構造になっていた。継ぎ目のない白い石のようなコンクリートの構造で、何百年も昔からあるのにその構造は強固なままだった。

「来た!」

 阿吽の呼吸──アーシャが空中へ飛ぶ/青いマントの巨獣(テウヘル)が出現=斧で飛来する砲弾を切り落とした。

 阿吽の呼吸──ソラは操縦桿をスロットルから引き抜く/走行姿勢から格闘姿勢へ。ひらりと砲弾をかわして煙幕を最大射程で投射=視界が真っ白に。

 推進機の出力=最大。投影バイザーの視界の端で燃料の残量値が蹴飛ばすように減っていく。

 更に煙幕を投射。対岸に到達するまで残り200秒。両腕に短剣を握る=意味のない行為。アーシャの斧ほど強度がないので、砲弾を見切れても切り落とせない。機械の体の不便さを噛みしめる。

 左前方=アーシャが両手の斧を後ろ斜めに構えて全速力で走っている。息切れしていない/というより呼吸しているように見えない。

 至近弾。車体が揺さぶられる。AIの警告文を読んでいる暇もない。更に爆発。

「くそ、地雷か。面倒なことを」

 残り150秒。更に煙幕を投射。残り3発。

 足のペダルで左右の推力切り替え、推力スロットで反重力機構を微調整する。水平射撃の光が見えるたびに推進力を入力し続ける。装甲をひっかくように砲弾が超音速ですり抜けていく。

 走行姿勢に変形=頭上を砲弾がかすめ飛ぶ。

 格闘姿勢に変形=対戦車地雷を足で蹴飛ばして川底に落とす。

 残り50秒。敵の砲火が密に。小賢しい小口径の機銃弾が装甲をがりがりと削る。煙幕を投射しても避けきれないだけの砲弾が飛来。

 ソラの眼の前をアーシャが走った。その分厚い戦斧(せんぷ)で砲弾を落として落として落として走る。敵の発砲と同時に体のしなりを使って叩き落していた。

「アーシャが敵じゃなくてよかった」

 もう川岸が手に届くぐらいの距離まで迫った。漆黒の大地、そして牽引式(けんいんしき)の野砲の周りを動く人影。

 背中の重迫撃砲は榴弾を装填済み。空中炸裂モードにセット=対人戦闘に有利。炸裂距離と高度はAIが自動設定してくれる。

 本当に撃っていいのか。射撃ボタンが重い。AIの補助も入り、どんな下手くそでも外せない。これが戦争。やらなきゃやられる。

 発射。

 いつもと同じ軽い機械の動作音、爆発音。再装填のために動くギアと油圧ポンプ。

 ソラ機と巨獣(テウヘル)/アーシャは燃える敵の砲台を跳ね飛ばして対岸に到着した。どこまでも続く黒い大地。その色に偽装するように、黒く塗装された野砲と自走砲が見えた。

 背中合わせに立つ2人は左右二手に分かれて、ソラは右へ進んだ。足元では砲兵たちが逃げ、敵の巨獣(テウヘル)も迫ってきた。長槍(ハルバード)を振るう攻撃兵。

 強靭精鋭の赤ヘル部隊が現れる、と緊張したが、この巨獣(テウヘル)はただ長槍を握っているだけ=すこし安堵。

 重迫撃砲の砲身を向ける。弾種:散弾。

 ソラは迷わず発射ボタンを押し込んだ。

 しかし──砲身が上へずらされた。巨獣(テウヘル)ともその背後の弾薬庫ともかすることなく空へ弾をばらまいただけだった。

「そんな! まだ間合いがかなりあったはずなのに」

両腕の短剣を振り抜く/しかしかわされて強烈な蹴りを食らった。

「くっ、強いぞ」

 敵の巨獣(テウヘル)は長槍をわざと短めに持っていた。そのせいで間合いを見誤ってしまった。

 ソラの背後──砲撃陣地は総崩れで、間髪入れずに車両部隊を援護しながらヨシギ達の可変戦闘車(ジャガー)が到達した。ボーナスタイムと言わんばかりに、ニロもフェイフェイもアヤカも、装填の速度が許す限り、敵陣地を砲撃で吹き飛ばして回った。

 しかし、目の前の巨獣(テウヘル)は、燃え盛る陣地を見向きもせずまっすぐソラへ槍を構えた。

 普通の兵士じゃない──そう考えるスキもなく槍が繰り出される。かわす&かわすそして間合いを取った。ニケ翁から学んだ義式剣技。右手の短剣をまっすぐ敵へ構える“主刀(しゅとう)”。一方の左手の短剣は逆手に構え体側(たいそく)に隠す“隠し剣”。

 今度はソラから仕掛けた。出力全開で急接近。主刀による牙突(がとつ)。生身なら5回刺し貫けるが機械のアクチュエーターは3度まで。

 槍は間合いが遠いが近間は弱い。たぶん。即興で思いついた。ニケ翁は対槍術戦闘を教えてくれなかった。

 3度の牙突で槍先を乱した。そして体側から繰り出す隠し剣で槍の横っ腹を弾く。

 やや姿勢を低く、近間に滑り込む=もらった!。

 敵の手首を狙って主刀を振り抜く。篭手(こて)で受け止められた。それにまだ槍もしっかり握っている。

「一体どうなって……」

 その時、投影バイザーに警告文=「友軍接近」。AIは巨獣(テウヘル)化したアーシャが味方だと学習済み。

 ソラ機が背負う重迫撃砲を踏み台に、アーシャが飛び出す/戦斧を一気に振り抜く。

 切っ先はテウヘルの胸元を浅く斬っただけだった。それでものけぞらせて体勢を削ぐ事ができた。足がもつれている。

 そのスキにアーシャが一気に踏み込む。体の回転を利用して右腕、左腕とテウヘルの体を切り落とし、そして最後に、その頭部をはねた。

 あたりに飛び散る緑の鮮血。足元に広がる敵陣地には焼けた死体と破裂した臓器が散らばっていた。藍色の肌の歩兵の死体。血は赤色だった。

 その中央に、どっしりと立つのは巨獣(テウヘル)/アーシャだった。太い肩越しに見えた赤い瞳。彼女の言葉が思い出された。

「わたしが守る、か」

 最後まで守られっぱなしだった。

 にわかに通信=ヨシギ機からだった。

『各機へ。工兵隊が爆破装置を解除した。教科書に載ってるようなシンプルなやつだったらしい。ご苦労さん、これで終わりだ。投降する敵兵士は殺すなよ。テウヘル兵がいたら緑のアレと遠ざけておくんだ』

 終わり。これほど沁み渡る言葉を知らない。

物語tips:鉄橋

川幅の一番狭いところに建設された。全長は約5km。

500年前の第1次テウヘル戦役より以前から建っている吊り橋。中央部分は“継ぎ目のない白いコンクリートの吊り橋”で旧人類の技術を使ったテウヘルによって建設された。

ただし川岸に近い部分は頑丈な鉄橋に掛け替えられている。これは2次および3次テウヘル戦役のとき破壊され再建されたから。

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