09
「お・は・よ・う」
「おはよう」
目を開けたら腕を組んだ姉がこちらを見下ろしていた。
胸の辺りに立っているから上半身を起こすこともできない。
つまり動けないということだから姉のためにはなにもできないことを意味しているわけだ。
「なんでまた帰ったんですか?」
「いちゃいちゃを見たくなかったからだよ」
「私、そういうの気に入らないんだけど、あと、高美ちゃんとは仲良くできているけど家でやるつもりはないんだけど」
「へー」
ま、家族で同性だから気にせずに体を起こして必要なことをしていく。
今日は休日だからお弁当を作るために早起きしなくていいのもあって、お昼ご飯の時間まで寝ておくつもりだったのに台無しとなったのは残念だったけど。
「あ、おはよう」
「高美ちゃんか、おはようっ」
姉はともかく高美ちゃんは悪いことをしているわけではないから全く気にならなかった。
それどころかいまどんな状態なのかを聞けるからありがたい、だって直接家に乗り込むわけにはいかないからね。
「くる子、久瑠美さんの家に戻ってきてちょうだい」
「うわあ、高美ちゃんを使うとか最低じゃん」
付いてきていた姉の方を向いてはっきりと言わせてもらう。
姉がなにかを答える前に「あ、いえ、珠美とゆっくりしたいというのもあるのよ」と、味方ができて嬉しかったのか姉は「私も今日連れて行くつもりだったけど高美ちゃんが言ってくれたから助かるよ」と。
「家で会えるのに?」
「家にいるときよりあなたといるときの珠美とゆっくりしたいの」
「そっか、じゃあ高美ちゃんが行くときはお姉ちゃんの家に寄ってから帰る――あ、はい、そうですよね」
だけどさすがに両親に挨拶もせずに移動することはできないから待っていた。
今日は帰るということで姉だけがここに残っている形になるけど、まだまだ文句を言いたげな顔をしている。
「くる子は私を傷つける天才だ」
「今回もお姉ちゃんのためだったんだけどなあ」
「私のためになんか全くなってないんだけど、まあ、二月になってから来ているわけだから信じられないかもしれないけど……」
うーん、表情で揺さぶってくるのはずるいな。
ただ、珠美を楽にさせてあげられるということで今回も悪いことばかりではないというのが実際のところで。
「もう二度と帰らせない、くる子は私のもの」
「あ、そういうのはいいので」
「は冗談だけど、帰ってほしくないのは本当のことだよ」
珠美のためにいちゃいちゃぐらいは我慢しなければならないということか。
私も大人になれと遠回しに言われているのかもしれなかった。




