第一次タケノコキノコ戦争
20XX年、日本を二分する出来事が起きた。この出来事は後に、第一次タケノコキノコ戦争と呼ばれることとなる。
「速報です。明治製菓がコスト削減のために、たけのこの里ときのこの山どちらかを販売中止にするという発表を出しました。その決定方法は1ヶ月間の売り上げが多い方が残り、少ない方が販売中止となる模様です。もう一度繰り返します、明治製菓が、、、」
このニュースはたちまちネットで拡散され、世間の話題となった。売上数次第でどちらかが食べられなくなってしまうからだ。もはや国民のお菓子となった両者のお菓子。時には、初対面の挨拶であなたはどっち派ですかなどという質問が飛び交うこともある。どちらも手軽につまめるチョコレート菓子という点では似ているが、その形状、味、食感によって、人々の間で好みがはっきりと分かれ、しばしば論争を巻き起こしていた。
ここで、街頭インタービューの声を聞いてみよう。
「たけのこの里ときのこの山、どちらかが廃止になることに決まりました。これについて、どう思いますか?」
-30代無職男性-
「遺憾ですね。これじゃあ、世間は許してくれませんよ」
-40代主婦-
「子どもがきのこの山が好きでよく買うんですけど、いつも回して遊んでばかりいるので、たけのこの里を応援したいと思います」
-10代学生-
「きのこの山が好きなんですけど、たけのこの里が好きな友達が多いので、もう食べられなくなっちゃうのかもって感じです」
-50代会社員-
「そもそも、社員の人がたけのこの里の方がおいしいと言ってますから。これは結果を見るまでもなく、たけのこの里だと思いますよ」
このように、世間ではたけのこの里の方が有利ではないかという声が多数を占めていたが、集計期間が始まると風向きが変わり始めた。
「速報です。きのこの山の買い占めが起きています。もうどうせ食べられなくなるだろうというきのこ派閥が一生分のきのこの山を買い占めているようです。また、それに乗じて、いわゆる転売ヤーも価格をつり上げようと、買い占めが起こっており、今、全国の店舗できのこの山の品薄状態が続いています」
予想に反して、きのこの山がなんと優勢に立った。フリーマーケット上ではなんと2倍から3倍の値段が付けられ、スーパーやコンビニでは品切れ状態が続いた。しかし、これに待ったをかけたのはもちろん、たけのこ派閥だった。もともと好きな人が多いというのもあって、たけのこの里が劣勢という情報が入ると、瞬く間に買い占めが起きた。
「速報です。きのこの山と同様、たけのこの里も全国の店舗で品薄状態が続いています。これはどうなるか戦況が全く分からなくなりました」
こうして、最後の1週間は日本からたけのこの里、きのこの山の両方が消えた。お互いの派閥が品出しと同時に買い占めをして、店舗に両者が並ぶことは無くなった。
そして、集計期間が終わり、遂に運命の集計結果の発表がやってこようとしていた。明治製菓の会見に全国民が注目し、最高視聴率は90%を超え、その瞬間を見届けようとした。
「集計結果を発表します。みなさまのお買い上げ、誠にありがとうございました。結果は、、、同数でした。公平を期すために、製造数は同じだったのですが、どちらも完売になってしまった次第であります。この結果を受け、我が社では、たけのこの里にきのこの柄の部分を付けた、たけのこときのこの里山を発売いたします」
その発表の直後、国民は歓喜した。どちらも、一生食べられなくなるという事態を回避したからだ。こんな平和的解決手段が存在するなんて。たけのこ派ときのこ派は両者お互いをたたえ合って、この戦争は終結した。しかし、会見が終わった後、明治製菓本社の最上階、そこでほくそ笑む人物が一人。
「まさか、こんなことになるとは。これだから、商売は辞められんな」
結局、明治製菓は会社史上、最高の売上を記録することになった。
明治製菓様、勝手にネタにしてごめんなさい。
ちなみに自分はきのこ派です。よく回して遊んでました。手が汚れないのがいいですよね。