こんな馬鹿な王子がいるわけないと思っていた私へ
いつも有り難うございます
よろしくお願いします
(誤字の報告ありがとうございました。感謝致します。)
「ねぇ、あなたと私の結婚式の時につけるティアラの事だけど。私、女王のエメラルドのティアラを着けたいわ。あれは私に相応しいと思うの。いいでしょう?あなたから女王様に伝えてくれない?」
彼女は僕の全てだ。
彼女の要望はなるべく応えてあげたい。
すぐに女王のドレッサーを勤めていたケリーに伝えると、ケリーは女王のジュエルの扱いには厳格なプロトコルが存在し、事前に慎重な手続きをとらないといけないことなどを説明しだした。
「うるさい!うるさい!くそ!なんなんだお前は!偉そうに!ふざけてる!なんでダメなんだ!彼女は望むものを手に入れられる存在なんだ!」
「そうよ!あなたいつも何なの?偉そうに!お義姉様は王子のお母様のティアラをつけた事もあるのよ?私だけティアラを選べないなんて!女王陛下は意地悪だわ。」
…くそっ!彼女の言う通りだ。彼女の思い通りにさせたい。
何故いつも彼女の望みは受け入れられないんだ!
……
あまりに酷い言葉を放たれたケリーは動揺し、女王にこの事実を伝えます。
女王は王子を呼び出します。
「王子。女王陛下がお呼びです。」
「貸す気になったのか!」
「えっ?貸してくれるの?じゃあ私も一緒に行くわ!」
「いえ、女王陛下は王子だけをお呼びです。」
……
物語りを読んでいて「こんなアホな王子はいる訳ない」とか、「こんな女、周りも許すなよ」と、思う事ありませんか?
私はあります。
確かに世の中おかしな人はいます。
でも、王子だよ?そこまで馬鹿な…
そんな事を思っていた私は浅はかで無知だったと、50メートルの助走をつけての、スライディング土下座を致します。
申し訳ございませんでしたぁーーーっっ!
……
ヘンリー王子のみを呼び出したエリザベス女王陛下は言いました。
「ヘンリーよ。あのティアラを結婚式に使うなど王室にとっても彼女にとっても好ましい事ではありません。政治的配慮が必要なティアラの歴史も知らずに、知ろうともせずに借りたいなどと…。それと、どのティアラを貸し出すかは、私が決める事です。身の程をわきまえなさい。」
……
ごもっともでございますっ!
アホかっヘンリー!
アホかっメーガン!
メーガンは10分置きにスタッフに怒鳴っていたとも言われています。
そもそもメーガンが自分に相応しいと思ったエメラルドのティアラ。その歴史を知れば結婚式に使うなど言えないはず…
……
ドイツのメクレンブルク=シュベリーン大公家の長女、マリア・パヴロヴナは1874年、マリアが20歳の時に、ロシア皇帝アレクサンドル2世の三男ウラジーミル・アレクサンドルヴィッチ大公の元に嫁ぎます。
ウラジーミル大公が、マリア大公妃に相応しい物を。と、贈ったティアラがそのエメラルドのティアラ。
当時はエメラルドではなくパールでしたが、現在はパールが取り外し出来、エメラルドか、パール、その場に相応しい物を選んで付け替えることができます。
1918年7月のロマノフ王朝の終わりと共に、ニコライ二世を含むロマノフ一家が処刑されます。
身の危険を感じたマリア大公妃は、サンクトペテルブルクにある屋敷に身を隠します。
マリアの息子のボリスは、ウラジミールに残してきたティアラを含む母のジュエリーを、イギリスの秘密情報部員の友人とともに、宮殿から取り戻す計画を立てます。
そして革命後の混乱に乗じてジュエリーを無事ロンドンへ運び出すことに成功しました。
……
はい、ここ。
「無事戻って良かった〜めでたしめでたし」ではありません。
革命後の混乱に乗じての窃盗です。
……
イギリスの「外交官」によってロシアから密輸出され、マリアの元に戻ったとされるティアラ。
マリア亡き後、相続したマリアの娘エレナが逃亡生活による資金難のため、このティアラを手放し、イギリスの美術商からエリザベス女王の祖母にあたるメアリー王妃が買いました。
……
一応ね、メアリー女王は買っています。
それでも、密輸出、暗殺などスキャンダルの多いティアラをつける事で、王室もメーガンも痛くない腹を探られる事になる訳です。
その歴史も知らずに結婚式でつけたいと言ったヘンリー王子とメーガン妃。
それを却下したエリザベス女王。
……
「だって知らなかったんだもの。私のせいじゃないわ」
結局、メーガン妃は結婚式では第一希望ではないティアラを着けています。
いました、いました。
物語りの中にではない、やべー王子と、やべー王子妃。
……
エリザベス女王が亡くなった日、ロンドンの上空に二重の虹がかかりました。
……
投稿から時間が経っているのに、お読み下さる皆様、本当にありがとうございます。
心より感謝致します。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
拙い文章、お読み下さりありがとうございました。
それと、最近、史実に基づくストーリーの紹介と、その感想を数話書いています。
今後もあるかもしれません。
もし、エッセイジャンルに相応しいものではない様でしたら、是非お知らせ下さい。
よろしくお願い致します。