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人助けをしたのに、私は人質になることが決まりました?

作者: 津々楽春人
掲載日:2022/09/04

どこまでも青く透明な湖には昔


美しい妖精が住んでいたの。


彼らが少しずつ集まって、たまたまやってきた心の美しい人々と仲良くなり助け合ってできた国。


それが、あなたの生まれた国ヒュールなのよ。


あなたはきっと美しい人になれるわ

そして美しい心の持ち主にも

愛しているわ、私の愛おしい娘。



母の髪は世闇の湖畔に浮かぶ月のようで

自分を映す瞳は暖かい日差しの下で見る木々のようだった。


母と鮮やかな中庭の花畑で

穏やかな日常だった時間を話を、したことはとても覚えている。





------------------




日差しが湖畔に反射して鮮やかな春


特に用事はないものの天気の良さに焦がれて思わず外に出てしまった。


いつもは週に2日の子どもたちに勉強を教えたり遊んだり交流のために町に行くのだが、今日はゆっくり散歩でもしようと思う。


最近同じ年くらいの女の子たちの間で流行っていると聞いた足元をずらない程度の動きやすいワンピースを翻す。

視界に入る花々よりも明るいピンク色のレースをところどころ使ったお気に入り。


水色の長いふわふわとした目立つ髪は赤茶色、緑色の瞳はそのままに気分よく歩く。



木々や自然を感じながら水辺に沿って続く道を歩きながらふと森側に視線を向けると



そこにはぼろぼろの人のようなものが転がっていた




人…?




気がついてしまったらスカートにあたる草も靴にはねる土も視界に入るも気にしている余裕など一切なかった。


慌てて駆け寄ると、それはまさしく人でまだ微かに息をしてる。


全体を見渡し出血の元を確認し、腹部から流れている血が原因だろうか



持っていた鞄からハンカチを取り出し抑えた

ふと袖から出ている手先は紫がかってみえる


血が足りない?もしくは毒的なもの?


体力の消耗か…毒か。

とにかく必死に彼を死なせない方法を考える。


ふと、万一のためと散々周りに言われてながら渡された薬を思い出した。


大丈夫、人助けのが大切。



これ以上悪化させることはないだろうとを蓋を開けた。


実際の効き目はよくわからないが


彼の口元に少し傾けて触れたところで、中の液体は彼の下に流れ込み反射的にではあるが飲んでくれた。



少しずつ顔色が赤みを帯びてくると同時に、冷えていた肩は温かくなってきた。


こんな即効性のある薬だったとは思わなかったが




「こんにちは、えっと、、生きていますか?」


少し待っても返事はなく、まさか自分のせいで、息の音止まった?


嘘でしょうと息をしているか手を伸ばしたところを

がっと掴まれ


「…テンシ?」


焦点の合っていない目はまだ自分を認識していない。


掴まれた腕の力は強くはなく、女の自分でも余裕で振り払えるほどだったため恐怖は感じない。


「ちがいます」


私は天国にいるつもりないし、天使でもない。


だが、ひとまず意識が戻ったことに安堵する。


髪の色を隠している今なんて特にどこにでもいる女の子にしか見えないはずの私が天使に見えるって、それくらい死を覚悟して目覚めたってことだろうか。


まじまじと彼を私も見てしまい、真っ黒な髪と真っ黒な瞳は冷たく暗く感じる色でも彼の瞳は優しい形をしている。


意識がはっきりとしてきたのか身につけている服まで黒の彼はゆっくりと手を離してくれた。


「助けてくれた?」


「はい」


「毒は」


「持っていた飲み物を差し上げたのだけれど…正直こんなにすぐ元気になれるものとは思わなかったです」


アーモンドのような瞳を丸くし驚いた彼は幼く見えたが、現状を理解しようと感じる強い瞳は自分より少し大人のようにも見える。


彼はまっさきに毒の心配をしたということは、やはり毒もあったのかと納得する。


「解毒剤だけではないはず…なにかすごく大切なものを使われたのでは」


「それはそうですが、いつ来るかもわからないものにそなえて見殺しにする方が難しいですよ」


ありえないと一瞬顔に出たが、すぐに視線を逸らし立ちあがろうとする彼を止める。


「まだ動いてはダメですよ。お急ぎでないのならばそちらの小屋、私がたまに使っているものです。数日程度なら生活するのに困らないと思います。」


指をさしていかが?と問う


「助かる。が、そこまで迷惑はかけられない。」




「また瀕死になられたら私がお声がけをした意味がなくなってしまいます。ぜひ」


少し強めに押しすぎた感は否めないが、今すぐ動き回られては彼の無事がはあまりにも心配だ。


「…ありがとう。」


しばらく考えた後、彼は安心したかのように笑いかけてくれた。


「私、カルラと申します。」


「ノア」



ノアとの出会いは水の反射が優しく舞う、日差しの柔らかい春だった。








「小さいけれど、手入れはしていますわ」


寝泊まりはしていないが、一通りの家具は揃っている小さな青い屋根の家。


1番近い村でパン屋を営んでいる奥様がお得意さんだからとよく気を遣ってくれ、保存のきく食べ物をまとめてくれるため生活はできるようになっている。


ドアを開けて、中に入ってもらおうと振り返るとノアはふらふらとしているが歩けている様子。



先ほどの場所でしばらく動けなかった彼に遠い距離ではないからと肩を貸そうとしたが断られた。


少し時間を置いたらなんとか歩けるまでになったらしい



ノアは入り口の前で止まりまった

入ろうとしない


「お入りくださいませ?」


「さすがに血と泥とで申し訳ない、川で水でも「中にお風呂あります」


瀕死だったのだから清潔にして早く休むべきなのに


さぁさぁと彼の手を引いて案内をする。


「お洋服は…ずいぶん前だけれどお兄様が置いていったものがあるはずです。すきに使ってください」


まだ申し訳なさそうにする彼の顔から次の言葉は容易に想像できるため、何か言われる前に扉を閉め去る。


キッチンに戻りふと落ち着いたからだろうかお腹の空きを感じた。



怪我人目の前に1人でガツガツ食べるわけにはいかないだろう

だいぶ回復したのはいえ、あの状態からいきなりパンなど固い食べ物は難しいだろうし


とりあえず果物をむいて用意しておけば無難だろうか。


「お風呂ありがとうございます。あと服も。あの水、温かかったですよね?気のせいかと思いましたが…」


確かに風呂場の水は暖かい

湖の一部からお湯が湧き出ており、水と混ぜて溜めておける仕組みだ。


冬場は大変助かっていて、全国民が毎年感謝している。


「熱湯が湧き出る場所があるんです、そこから引いていまして。暖まることができたならよきったです。果物を用意しました。食べられそうですか?」


一緒にいかが?と促すと黒い瞳が少年のように煌めいた


「嬉しいです。ありがとうございます」


小さなテーブルを囲んで座る


用意してある果物は日持ちするものがほとんどではあるが、最近置いて行ってくれたものばかりのようでどれもみずみずしかった。


フォークで刺して食べるノアを見ながら自分もしゃくしゃくと美味しいと食べ進める。


空腹時の食べ物は何倍も美味しく感じた。



「果実はそこの戸棚に保管されています。隣の箱の中にはパンや根菜類などがあります。ここで滞在されている時好きに使ってください」


あれとそれと指を刺して説明するとそれに合わせて視線を合わせてくれるノア


「食べ物まで、そこまで気を使っていただがなくても。今夜中には発ちます。これ以上迷惑をかけられませんよ」


「途中で倒れられたのではと余計心配になって落ち着きません。数日は滞在してください。」


食い下がろうとするノアに対し見返りを求めるのは本意ではないが提案するしかないだろう。


「ではこの国の民に誰でもいいです。いつか助けてあげてください」


「君ではなく?」


「必ず会えるとは限りませんから」


それは寂しいなとノアは笑う


「ではできればカルラに。あと、君みたいな少女が困ってたら手助けをすることを誓います。」


それは範囲が広いなと思いつついつか国民の誰かが救われる機会が一つでも増えることはいいことだ。


「ありがとうございます。

明日、また様子を見させに来てもらいますね」


時計を見るとそろそろ戻った方がいい時間になっていた。


ノアはゆっくりと食べていたようで、申し訳ないと思いつつ席を立ち自分の皿のみ片付けをする。


「この家は好きに使っていただいて構いませんので、どうかご無理はされませんようお願いしますね」


ドアの手前で振り返ると彼は座ったままだが深くお辞儀をした。


「今日、カルラに出会えたのは奇跡だと思う。心から感謝しています。しばらく迷惑をかけますが、よろしくお願いします。」


「そんな堅苦しくならないでください。元気になるのが優先です。」


それではと扉を出て、湖畔へ止めた船へと急ぐ。




カタンと城の裏にある小さな桟橋に船があたる

石の壁にポツンと存在する小さな扉の






どこまでも透き通る湖が有名な王国


面積の半分が水に占められている

残りは村や畑、多くは森の穏やかな環境。


中心となる王都は湖の真ん中に浮く島にあった

何百年も前なのか湖となった頃からあるであろう立派な島に石橋が長々と続く。


その裏にあたる対岸にそっと1人用の船をつける。

カタンという小さな音に反応したのだろうか小屋からノアが顔を出した。


「おはようございます、カルラ。」


「おはようございます、ノア」


ノアが滞在を始めてまだ3日というところ。 

あれから毎日顔を出しているがカルラが着いた瞬間がわかるとはとても気配に敏感なのだろう。


顔色はとても良くなった

湿った日の土のようだった顔色はとても白く、それでもほほからは暖かさを感じる。


ノアがドアを開けたまま、入ることを促されたが

あいにく予定がある。


「ノア、ごめんなさい。

 今日は奥の町で授業をする日でして

 あなたのお話が聞けなくて残念です」


首を傾け、手に持っている茶色の四角い鞄を持ち上げ主張してみる。中には子供たち向けに作った文字や計算の教科書が入っていた。


「授業を?それが君の仕事なのですか?」


「えぇ、私が住んでいる街には学校がなくてこの先の町には先生が少なくて困っているんです。だから週に2日こうやってきているのです」



納得したようなノアの表情は節目がちになり下を少し向くので、そのまま絵画に残したいほど美しい。


出会ったばかりの頃は本人も衣類もぼろぼろだったため、気がつかなかったがノアは女の人のような綺麗な顔をしていた。




見惚れている場合では、ないのだった。


急ぎ学校へと向かう支度を小屋で始める。


「それでは、失礼いたします」


「お気をつけて」


にこにこと笑顔で見送ってくれるノアを背に早めのスピードで町へと向かった。








出会ってから数日後。

ある日の授業前、たまたま余裕をもって出られたのでお話でもと座ったところで突然切り出された。


「長くお世話になりました

 あなたのおかげでケガ一つ残らず元気です」



ノアはふわっと微笑むと腕や首などを見せてくれる


「今日、僕を心配してくれている人たちのところへ戻ろうと思います」




「そっそれはよかったです」


なにも直ぐに出ていかなくても

まだ回復はしていないのでは

ここにずっといても…とか

言いたいことがたくさん胸につっかえてくる。


しかしノアを待っている人がいると言った。自分が逆の立場で大切な人が安否不明であると想像すればそんな残酷なことは言えない。


「これでお別れなのはとても寂しいですが、これから向かうところでも幸せに過ごされていることを願っています」


その後の会話は最後とは思えないほど、再会するのに必要になるであろう情報なんて一言もされることなく終わりを迎えた。


授業をサボるわけにもいかず立ち上がると、ノアもついて来きてくれる。


小屋から少し歩いた先でノアは止まった。


隣の気配がなくなったことに気づき

反射的に振り返ると、太陽が輝く元で見るノアはとても優しい表情をしてこちらを見ていた。








それから季節がひとつ進み、日差し鮮やかな暑い季節がやってきた。


この国のほとんどは水で成り立っているため、日照りなど続いても生活や農業に困ることなく皆いつもどおりの生活を送っていた。



しかし、王家は騒がしい。


スリティールは代々続く偉大なる王家であるが、今世の王は優しくも頼りない人だった。



春の戦争で隣国、バラルクが内戦の一歩手前まで荒れたことは小心者ゆえの情報でなんとか手に入れ自国にもその波が少なからず影響を与えようとしていることに怯えることしかできない。


王太子の弟およびその貴族派は過激極まれりと聞くないなや、自国を狙わないことを約束に王太子が万一生き延びて見つけた場合は引き渡すことを約束し加担してしまっていた。



そしてこの夏。

隣国の表には出ていない揉め事は終着したのである。狙われ行方不明となり死亡推定とされるまであと少しというところで王太子は傷ひとつない姿で戻ってきたらしい。その後はあっけないほど簡単に事態を収束し即位したと聞く。



焦ったスティール王に王太子、もとい現在では国王となったものから正式な謁見文が届いた。


賠償金だろうか

無謀な貿易だろうか

自国の民を兵として差し出せだろうか


そもそも自分を見せしめに殺しにでもきたのだろうか


恐怖しか伴わない想像しか出来ないまま、猶予などくれるはずもなく早くも手紙を受け取ってから2日後に若き国王はやってきた。



「はじめまして、スティール王。

 時間を取ってくれたこと感謝する」



スティール王は国王が到着するやいなや死刑宣告をするのではと覚悟をしていたのだが


彼は怒りも憎しみも何も感情のなく淡々と1週間の滞在の許可と王家の姫をひとり自国に引き渡せと言う



「スティール王につきましてはさぞ心配ではありましょう。実質人質と変わりない。


しかし私たちとしても罪なき姫君に酷なことを強いたいとは考えておらず


必ず当国の尊き者、加えて年の近い好青年を選出することを約束しよう」


娘はとても大切にしている。

非情な申し出を想像していた中では出てこなかったもので、その時はとても願ってもない約束に拒否などするわけと思っていた。



冷静に考えれば可愛い娘を人質とされるのに





外に並んでいる豪華な馬車へ全身黒色の豪華な軍服に身を包んだ男と数人の部下がもどり、なにやら話している様子を自室からのぞいているとふとノアを思い出す。


「下に見えるのはバラルクの王、御一行?」


自室待機を父にいわれ、大人しく紅茶を飲もうと準備をしてくれていたミレアはちらりと窓を見る。


「えぇ、どうやら謁見は終わったようですね。」


この部屋からは高い位置にあり、入り口まで遠いため新しい王様がよくどんな人なのか見えないのが惜しい。


「どんなお話をされていたと思う?やっぱり私たちは弟の味方をしたから何かしら罰があるのかな」


「国内の反逆一派は皆殺しされたそうですが、あくまで我々は隣国。しかももし逃げてきたら教えること程度で、実際には見かけても匿ってもいないのです。きっと大丈夫ですよ」


下には数匹の馬が連れてこられ、新しい王様は軽く跨ると1人の部下のみと颯爽と城を出て行った。



同時に部屋の扉からノックオンが響いた


「姫様、陛下がお呼びです。」


ミレアと顔を合わせる

話の内容を教えてくれるにしてはやや早すぎる


嫌な予感がしつつも返答をするしかなかった








馬車に揺られ丸5日

隣国は大きく立派だと聞いていたが、城までも美しく大きかった。



自分の夫となるべく人が今日告げられるのかまだ決まっていないかもわからない


お父様はきっといい人が選ばれているはずだとあいまいまことを教えてくれたのみ


「姫様、微力ながら私もついております。」


1人ではありませんと、力強く見てくれるミレア。

年は10ほど離れているが、ずっと長いこと私の側にいてくれた。そして今回も誰よりもはやく一緒に行くと名乗り出てくれた侍女でもある。


「ありがとう。本当に心強い」


一定のリズムを奏でながら綺麗に舗装された道を進むと美しい正面玄関へとたどり着いた



「ねぇ、ミレア。私てっきり人質だと思っていたのだけれど。正面玄関に通されるのは王族だけではないの?」


「姫様も王族です」


一応…と自信なさげに続く彼女を見ると目を大きく開き驚いていた。


自国とは多少の文化の違いはあるとは思うが、教養として学んだ他国含むマナーでは正面玄関は王族またはその国にとって重要なお客様のみの非常に尊い入り口のはず。


2人で状況がわからず、固まっていると馬車は静かに黒く大きな豪華に装飾を施された扉の前に着いた。


扉はすでに開いており、中には何十人もの使用人が並んでいるのが見えさらに訳がわからなくなる。


ちょうど止まったところで待機していた執事らしき人が深くこちらにお辞儀をすると馬車の扉をゆっくりと開けてくれた




「スティール王国、姫君。ようこそ我が国へ。

 お待ちしておりました。」


手を差し出され降りるとビシッと皆さん揃って礼をされる


後ろでミレアが降りる気配と


馬車回しを去っていく馬と車の音だけが鮮明に聞こえた





城に到着して2日目


お疲れだからだろうと通された部屋は立派な一等客室だった


十分すぎる休息を与えてもらえたものの、バラルク国王からは音沙汰なく過ぎ今に至る。


丁重なのに対応してくれてるのかどうなのか


むしろどうでもいいからとりあえず丁寧に対応しておけみたいな感じなのか




響くノックの音と共に昨日の執事らしき声がした


「姫君、午後お時間よろしいでしょうか」


ミレアと顔を見合わせて、呼び出しの時がついに来たと覚悟を決めた






大丈夫大丈夫、殺されることはないはず。


私なら無事終えられる


静かに開かれた扉の奥には貴族らしき人たちが多く待っていた


ここにいる人間はきっと自分のことを快くは思っていないのだろう

中に入ると沢山の貴族の視線を感じる


だがどれも刺さるようなものではなかった


有効的にも感じ取れてしまうのは彼らが大人で優秀であるがゆえなのだろうか


真っ直ぐと進むと玉座の前へと着く


たとえ最近王となったものでも、歳が少し上くらいらしくとも身分の低いものから視線を交えてはいけない



玉座手前の床を見つめ意識しながら、膝を折る。


「カーメルラーナ・スティールでございます

 王へとご挨拶申しあげます」


挨拶を返す声ではなく、はたまた無視をされているというわけでもなくただ階段を下る硬い足音が聞こえた。細長く照明が反射するほど黒い皮靴が目の前で止まる。


「カーメルラーナ殿、お顔を上げていただけないだろうか」


美しい湖畔を思い出すような声。この距離だから感じたのかもしれないが少し震えていたように聞こえる。


視線を目の前の王へと移すとそこには


黒い瞳と黒い髪

湖畔の彼が美しい服を纏ってこちらを凝視していた


お互い固まっていたのはしていたのは10秒もないかもしれない



「カーメルラーナ殿」


ふわっと差し出された手に反射的に重ねてしまうと共に階段の上、玉座の前へと連れ出されてしまった。訳がわからずノアの手元を見ることしかできない。



「カーメルラーナ・スティール姫の婚約者はノア・リコハリス。彼女には次期王妃となっていただく。」



驚いてノアを見る

階段下からははっきりと驚きのどよめきが広がっていた


ノアはニコリとこちらへと微笑み


「今後については明日の国議にて執り行うこととする」


カルラの手を引くと間を後にした


出てすぐのときふと疑問に思う

自分はノアと会う時にいつも髪色は変えていた

服だって全然違う。よくわかったものね、と。


廊下の美しいステンドグラスを背に立ち止まったノアはそれだけで絵ができてしまう


少し伸びた黒い髪をさらりと肩からこぼし、私と同じ目線に合わせてくれた。

まっすぐと見られる黒い瞳は夜のようだがゆるく下がった目尻が調和する



『服装も雰囲気も髪の色だって違うけれど、ぼくは君の優しい声と瞳を間違えないよ。』


真っ直ぐとこちらを覗く視線は反らせない


『あの時助けれくれたこと、心より感謝してる』


『ありがとう』


半歩下がった彼は頭を下げた

あまりに恐れ多い行動に驚く


「ご無事で何よりです

まさか陛下だとは思わず不敬なこともたくさんしてしまったと思います」


それでもこうしてまた再開できるなんて思わなかった。まさか彼と一緒にいられる地位をくれるとも思ってなかった。


もう一度視線を合わせ、ニコッと嬉しそうな彼。


『美しい心の姫君、やっと見つけられた。


僕はひどい大人なので、これからはこの手は離さないし去る君を見送ったりなんてしません。ただし、ずっと大切にすることを誓うよ』


「私も、私も出会えるなんて。

 ありがとうございます。嬉しいです」






-------------------------------

「陛下、見つかってよかったですね」


カルラを客室まで見送り、今後の計画のため執務室へ戻ったところで先に事務仕事を整理していた幼馴染兼、側近のサコルがしみじみと話しかけてきた。


「あぁ、サコルには色々と助けてもらって感謝しているよ。直接会うまでこんな奇跡ありえないと思っていたから本当に驚いてしまった。あの場で余裕のある大人の男になれてた?」


「そこは王でしょう…陛下」


呆れたようなジト目が返ってくる


王としてではなく

心優しい彼女に惚れた男として必死なのだけれど


「まさか妖精の国の王女だったとは思わなかったよ」


「あの時は面倒そうだから、とりあえず姫取り上げわておくかくらいの提案でしてからね。」


スティール王に会ったときは、彼女を探す時間が欲しかったので必死で他のことはどうでもよかった。



「あぁ、王家の人間が生まれた時に渡される妖精の薬を安易とボロボロの見知らぬ男にやるのは思わないだろう?」


自分を助けた薬の正体が早くわかっていたら、彼女をそのまま連れ帰ったのに。


「他の男を当てがうところだった。ぞっとするよ」


「これからが楽しみですね」



「まずは彼女のやりたいことを確認して、きっと自然も好きだろうから小さな池でも庭につくろうか」


場内の庭はまだまだ何も整備がされていない

ほとんど更地状態だ


彼女と過ごしたところまでとはいかないが、あの美しい世界をできる限り再現したい


せっかくいちから作れるのだがら彼女好みにしよう


どんな花が好きだろうか


愛しい姫君のためにできることを考えるだけで満たされる










縁は巡り巡っていつかどこかで繋がるものだと思う


この出会いは早く運良く巡ったことで


お互いが幸せに導かれた物語


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