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激しい嵐の夜だった。
過去を遡っても、そしてその夜から幾年も経た今までも、あのような嵐はあの日一度きり。
神の戯れか。
それとも奴等は気象までも操ることができるのか。
両親を殺した敵は、赤く染まった顔で真っ直ぐこちらを見ていた。
『いつか、もっと強くなって、私を殺しにおいで』
ふわりと美しい笑みを浮かべ、そして…。
「やめ…っ……はぁ…ぁ……はぁ…」
目の前は闇。
あの美しい敵の姿も血に塗れた両親の姿もない。
──夢と気づくまでには暫し時間がかかった。
腕で目の前を覆い、歯を食いしばる。荒い呼吸を整え、残像を追い払う。
朝まではまだ、遠かった。