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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第4章 機械人形と決着

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EPISODE75 最期のトリガー

 リバティーズ、地下アジト。

 D4による砲撃も、さすがに地下には向けられないらしく、現状ではもっと安全な場所と言えた。そこで一安心する騎士団員を含むアークの乗船員たち。敵マシンドールと交戦していたマシンドールはとっさの判断ができなかったせいで、その大半をロストしてしまったが、生身の人間たちはすぐさまその場を離れて逃げたこともあり、全員が帰還に成功していた。


「さてと、こっからどうするかねえ」


「どうするもこうするも向こうのD4を破壊しないといけないわ。最悪はこっちもナナとレイの……」


「あ~、やめとけやめとけ。俺が向こうの指揮官なら、同じ武器を使われるリスクも考えて、それを護る方法の一つや二つくらいは用意してある。サイケ、D4を防ぐ手段はあるのか?」


「僕も再現とはいえ開発した身だからね。答えはYes。D4と同種のエネルギーをバリア状に展開すれば、緩衝作用によって、攻撃がずれる。さっき僕らがやったようにね。問題はD4の特性上、常時展開は不可能だけど、発動タイミングがもろばれの兵器だから、そこの問題のクリアはたやすい」


「つーわけだ。この作戦ではこちらのD4は向こうのD4兵器を防ぐためだけに使う」


「D4バリアが仮にあるなら、魔法も通常武装も通用しないわよ」


「となればとる手段は一つ、基地機能の完全掌握だ。作戦としては騎士団とマシンドールが敵を惹きつけている間に、俺の部隊が第一城壁の内部に侵入。内部から指令室を落とし、D4兵器を無力化。その後、D4でも通常武装でも良いから向こうのD4兵器を破壊すればいい」


「分かったわ。グラムさんのマシンドールの指揮は任せて。現場での指揮はお願い」


「おうよ。俺も久しぶりに体を動かさねえとな!」


 グラムは久々の戦場ということもあり、気が高ぶったせいか王国から支給された剣を軽く振るう。自前の獲物でないのが心もとないが、贅沢は言ってられないと抜いた剣を鞘に納める。

 そして、作戦タイムが終わろうとしたとき、エリア3で内乱を引き起こしていたアヤメが戻ってくる。


「アヤメさん、無事ですか!」


「見ての通りでござるよ。あと第2城壁の様子を見に行ったでござるが、ひどいありようであった。生き残った兵士も屍のように続々と投降……」


「射線上の街はどうなったの?」


「見ない方がよかった。妻だった者の肉片を抱きしめる夫の姿を見てはな。あの様子を見るにあと数歩でもずれていたのであれば一緒に生きていたか苦しまずに死んでいただろうに」


「ひでえことしやがる」


「我らを弾圧してきたお主が言うとはよほどでござるな」


「ぐっ……そこはいわねえ約束だろ。俺だって、作戦たてるときは民間人の被害が少ない方法を取る。実際、お前たちをおびき寄せるのも餌場は軍の施設だったろうに」


「表向きは民間施設でござるが?」


「ああいえばこういうやつだな、お前は。ほぼあそこは軍が仕切っているって公然の事実だったろうよ」


「それもそうでござるな。おかげでセブン殿にもあえたから、感謝している」


「ああ、俺もあの日は忘れねえよ。とにかく、今は争っている場合じゃねえ、そうだろう?」


「でなければ、中に入れたりはしないでござるよ。この作戦をもってすべての戦いを終わらせるために……共に!」


 長年、敵・味方に分かれて戦っていた二人だけに溝が深そうではあったが、互いに手を取り合う。アヤメ率いるレジスタンスも白兵戦に加わり、さらには北・南の侵攻部隊も無事な戦力の一部を遅れてでも出すこととなり、あとはナナたちが敵マシンドールやD4兵器を前にしてどれだけ持ちこたえられるかが問題となっていた。




 第1城壁東門、その眼下には他国の大使館が住まう街が広がっているが、自国と帝国が戦争になると知った彼らは既に全員退去しており、閑散としている建物が広がるばかりである。それらの街の前にはせりあがったD4兵器、D4ブラスターが黒く光っている。


「今はまだ4門しかないが、D4ブラスターが量産された暁には帝国の覇道を止める者などおらんよ」


「ええ、そうですわね。だからこそ、歯向かうとしたらこの瞬間しかなくて」


「言われなくともわかっている。マシンドール隊、前面に出せ。エリア1から送っていただいた新型もな」


 不用心なほどまでにD4ブラスターの護衛にマシンドールを回し、城壁前の戦力はほぼすっからかんになっている。D4を破壊されれば北南の生き残り部隊が東門に回ってきて、エリア1に攻め入られる穴になりかねない。よって、彼のとる戦術もあながち間違ってはいなかった。


 そして、砲門の側面から攻めてきたアークに向けて砲塔の台座が回転し、ロックオンされる。


「D4ブラスター、発射!」


「「ダブルブラスター!!」」


 先と同じように上空へとそらされるD4ブラスター。その様子を見て、アンジェロはたまたま敵戦艦にあたらなかったのではなく、自力で回避したのだと分かる。ならばと、マシンドールの数で敵を押しつぶすしか彼のとれる戦術は無かった。


「甘いな、お敵さん。どこの馬の骨が指揮を執っているか分からんが俺が居たら、こっちにも戦力を最低限残すつーの」


 あまりにもあっさりと街の中に侵入出来たせいで敵の罠かと思うほどだ。あとは目の前にある城壁の中へと入るだけだが、それもアヤメが地下水道を利用するルートで多少は時間がかかるものの確立してあった。



「あれは……!?」


「衛星砲の時に見たギースの機体!みんな、あの大型機に気を付けて!」


 人間サイズのマシンドールに紛れてひときわ目立つ巨体。宇宙でナナを苦しめたギースのマシンエンペラーⅠ。ナナを苦しめた多方向からの攻撃ドローンたちは地上でも健在のようだ。


「この新型アーマーの機動性なら!」


 悠々と躱しながら、目についたドローンを片っ端から狙い撃っていく。さらに数を増やそうと、別の機体も執拗にナナを狙っていこうとしたとき、突如としてドローンが破壊される。


「おっと、女の子の尻を追い掛け回すのは感心しないな」


「エドウィン団長!」


「さすがに機体の方は懐に飛び込めないと僕でも手が焼きそうだから、そっちはナナちゃんに回すとして、付属品は任せてもらおうかな。僕もオールレンジ使いなんでね」


 戦場に舞う花吹雪がドローンを斬りつけていき、爆炎の華を咲かせていく。フィンガーレーザーで必死に応戦するも、強化されたGシールドで防ぎながら懐に飛び込まれる。カイザーブラスターを放とうとした瞬間、マシンエンペラーⅠに手にしたロングブレードを突き刺し、誘爆させる。


「やるねえ」


「一人ではやられていました。援護ありがとうございます」


「本体はまだいるし、まだ向こうさんはまだやる気みたいだ」


「ええ、エドウィン団長は私の後ろに」


「オーケー、即席のコンビネーション見せようじゃないの!」


 ナナと団長は再び量産マシンエンペラーⅠの下へと向かっていく。今度は二機並んでのカイザーブラスターでこじ開けようとするも、強化されたGシールドはビクともしない。そして、攻撃を防ぎきった直後、団長が前に飛び出る。


「第4の剣、抜かせてもらう!!」


 団長の抜いた剣には刀身が無く、柄だけを握っている状態であった。だが、斬る瞬間にのみ魔力を込めると、薄い刃が形成され、マシンエンペラーⅠを2機まとめて両断する。


「僕の刃、君に見えたかな」


「攻撃する瞬間にのみ実体化させることで、攻撃範囲の予想をさせない見えない刃。まさかあの巨体ごと切れるほどの長さを形成できるとは思いませんでした」


「伊達に団長をやっているわけじゃないってことさ。こいつらの相手は部下にちっと重い。僕たちで片付けないと」


「やりましょう」


 バーストモード無しでも、かつてのギース機と渡り合えることにナナはうれしく思いながら、団長を護り、剣を振るっていく。


「私にはこれほど心強い味方がいる。貴方にはいない仲間が!」




「ええい、マシンドール部隊は何をしている!」


「北と南から敵の援軍。先の生き残り部隊かと思われます」


 次から次へと戦況が悪くなっていく知らせに青ざめていくアンジェロ。彼の短絡的思考には逆転の方法は一つしかなかった。


「D4だ。D4をあの戦艦に向けて放つんだよ!」


「ですが、フルパワーにはまだ時間が……」


 パアン!


 どさっと倒れる兵士の遺体に慌て蓋めくオペレーターたち。アンジェロが白煙が昇る銃を向けながら、彼らに怒鳴り始める。


「逆らった者は死あるのみ。撃てと言っている。マリリン、こいつらを洗脳しろ!!」


「そうね。させてもらうわ」


 マリリンは洗脳光線を放つ。瞼を閉じた程度では防ぎきれない光線がこの場にいるものを襲う。


「ただし、洗脳するのは貴方だけよ、アンジェロ指令。他は解かせてもらった。逃げたいならどうぞ。止めはしないわ。でも、その前にD4を止めてくださる」


 マリリンの言葉に自分たちがしでかしたことを思い出し、その場で崩れるものもいた。だが、同僚たちが励まし合い、最後の仕事と言わんばかりにD4ブラスターのシャットダウンを行っていく。そして、目の前の画面が真っ暗になったとき、マリリンはコンソールに向けて銃弾を2,3発撃ち込んでいく。


「これでアレはガラクタも同然。あとは……」


 後ろを振り返ると、ガシャガシャと警備用のマシンドールがこちらに向かってくる音が聞こえる。


「まったく、機械相手は洗脳が効かないから苦手なのよ。貴方たち、机の陰にでも隠れて弾が当たらいよう祈りなさい」


 そそくさと隠れ始める兵士をみながら、地震が苦手とする力作業で扉の前にバリケードを作っていく。だが、それらも到着したマシンドールにあっけなく壊されるのであった。




「銃声!? 向こうから聞こえたぞ!」


 グラムが広大な城壁内部を探索していた時、鳴り響く数多くの銃声音。ここから近いということもあり、走っていくと、そこには数機のマシンドールが部屋の中に向かって発砲している様子が見えた。それを見たグラムが、すぐさま持っていた剣でマシンドールの首や胴体を斬り落としていく。


「仲間割れか……いったいな、に…………」


 グラムが見た先には血だらけになっているマリリンと戦闘が終わったことで隠れていた兵士がのこのこと出てきたところだった。


「おい、しっかりしろ!ちっ、騎士団の連中を1人でも連れてきたらよかった。魔法でなんとかできたものを。ってそんなこと言っている場合じゃないな。ちっと踏ん張ってくれよ!」


「お……そい、のよ……」


「しゃべるな!外に行けば、騎士団がいる。奴らなら魔法で傷口を塞ぐくらい朝飯前だ」


「もう、ま、にあ、わ、ないことく、らいわかる……」


「だからしゃべるなって言っているだろうが。死にてえのか!」


 ぽたりぽたりと落ちる赤い雫。彼女を背負いながら来た道をグラムは必死に戻っていく。


「そうね……さいごにひとつ…………あのこはどうなった……?」


「まだ戦っている。だから、お前も!」


「あん……し、ん……た……」


 げほげほと血を吐き出すのをみて、グラムは大急ぎで城壁から飛び出す。近寄ってくる騎士団。外のマシンドール部隊は不気味なほどに沈黙し、アヤメたちが別の場所に会ったマシンドールの制御装置を止めたのだと思った。


「よし、騎士団の連中がきた。これで……」


「……………………」


 もう彼女の返事は無かった。ここにいる優れた術師であっても、その目を開けさせることはもう二度とできない。帝国の猛犬の慟哭は空の彼方へと消えていった……

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