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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第4章 機械人形と決着

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EPISODE71 真意

 バチバチと音を立てる暖炉の前でアイリスたちはサイケからどうして追われていたのか話を聞いていた。話す内容次第ではサイケたちを帝国に突き出さなければならないからだ。


「どうしてって言われてもね。僕に分からないことが君たちに理解できると思う?」


「理由なしに撃ってくるわけねぇだろうが。なんか思いつくフシがあるんじゃねえか?」


「思いつくものと言ったら……D4の軍事利用は控えたほうが良いんじゃないって進言しちゃったことかな」


「何か不味いもんでもあったのか?」


「威力高すぎ。制御に失敗したら周囲一帯がパァ。はっきり言って欠陥兵器だよ、アレ」


「それに関しては同意だ。実際、D4ミサイルで街1つが消し飛んでいるのを見させてもらった。だが、もう一つ、やべえことが起こる可能性がある」


「作った僕が見落としているって言いたいのかい。はっきり言うけど、制御試験するまでに様々なシミュレーション、バグチェックをしてきたんだ。生半可な反論は認めないよ」


「アイリス、どうせ話すつもりだったんだから、この場で話しても構わねえだろう」


「はい。では、この論文を見てください」


 アイリスが携帯デバイスから投影されたモニターをサイケの前へと移動させる。


「執筆者はDr.ヴェクター? 誰それ」


「これはD4を最初に開発した本人が書き上げた論文です。中身はD4の機構とその危険性について描かれています」


「ふ~ん、僕はてっきり君が作ったものとばかり……ほお、これはこれは……」


 サイケがときどき唸りながら読み進め、今の時代では途絶えてしまった専門用語については恥を捨ててアイリスに問い尋ねる。すらすらと答える彼女を見て、自身が見下していた王国の技術力を改めなおす。

 そして、数時間が経過し、もうすぐ夜が明けそうな頃にサイケが論文を読み終わり、自信を失ったかのように項垂れる。


「……僕より数歩先、いや低すぎるかも。僕が世界ナンバー1の技術者だという自負はあったけど違った。正直へこむ。この人物に合わせてほしいくらいだよ」


「先生はもうお亡くなりに……」


「そうか……ん? 先生? ってことは君がお弟子さんってことだよね!」


「ええ、そうですけど……」


「僕を弟子にしてください」


「ええー--!!」


 流れるような動作で土下座して頼み込み始めるサイケ。もはやプライドもあったものじゃない行為にあわてふためるアイリス。さすがにこの行動を読み切れなかったのか友人でもあるグラムも驚きを隠せないようだ。


「いくら何でもそれは無理って話だ。敵国の、一般人ならまだしも国のトップなんだぞ。本当なら、こうしてため口で話すのも憚られる立場だ。それをわかってんのか」


「じゃあ、結婚してください。夫ならそばに居ても……」


「無理に決まっているだろう!お前も何か言ってやれ!!」


「お断りします!」


「ふられた……一応、これでも国の重鎮なんだけどなぁ。立場的にはつり合いが取れそうなのに」


「ショックを受けているんじゃねぇよ。で、論文とやらどうだったんだ? 俺も一緒に読ませてもらったが、1ページ目でめまいがしたからよくわかんねえんだ」


「まあ、学術論文を予備知識なしで読んでもちんぷんかんぷんだろうね。結論から言うと僕が危惧していた以上にヤバイ」


「次元崩壊、マジで起こりうるのか?」


「理論上は起こりうる。平時なら机上の空論と言って笑い飛ばす輩もいるかもしれないけど、このひび割れ現象が実際に観測されたからね。誰もこの理論を否定することはできない。僕もここまで危険なものだなんて想定外だ」


「マジかよ……」


 性格はともかく科学に関しては誠実なサイケがここまで断言するあたり、半ば信じられなかったグラムに強い説得力を持つ。問題は門外の軍上層部や政治家たちをどう説得するかだが、そこはグラムたちの手に委ねられている。


「だとしたら、リスクの見積もりが甘かったにしても危険な兵器というのには変わりはない。僕が狙われる理由にはならないよね」


「だよな。上は何を考えているんだ?」


「だったら、発想を逆転させて『なぜ、私たちを狙うのか』ではなく『私たちを狙わないと不都合があった』と考えるのはどうかしら?」


「狙われなかったら……まあ、民間人虐殺の件を伝えて、D4の危険性を訴えていたな」


「つまり、お上さんにとってどっちかが都合の悪いことだったってこと?」


(さあ、ここで判断を間違えたら駄目よ。これまで帝国がやってきたことを思い出して、どちらの方が都合が悪かったのか考えるのよ)


 周辺国への侵略行為。ディアボロスを復活させようとしたこと。D4兵器の開発、並びに使用実験。他の国ではスキャンダルなことでも、これほど人の命を軽く見ている帝国が街1つ消し飛ばしたくらいでたじろぐだろうか。そして、サイケがしたこととグラムがしようとしたことの共通項。

つまり、答えは――


「D4の危険性……それに気づかれるのが不味かった?」


「それはおかしいだろう。いくら強力な兵器でも安全性が確保されないんだったら使いものにならないぜ」


「僕も同意。それこそ自殺願望だとか次元崩壊を引き起こしたいとか思わないかぎりはね」


「むしろ、それが狙いじゃあ……」


「おいおい、敵を素早く倒すのに強力な兵器を作るのはわかる。百歩譲ってハイリスク・ハイリターンだとしてもな。だが、ノーリターンな目標なんて聞いたことがねえ。目標ってのはどんな意図があろうがリターンを狙うものだろうよ」


「リターン……」


アイリスはこれまでにあってきた人たちのことを思い出す。果たして次元崩壊することでリターンをえる者がいるのだろうかと。


(普通に考えればありえない。でも、私たちは世界に悪意を向けた人を知っている。もし、そうだとするなら……)


「……リターンならあります。復讐の完遂。それが彼の得るリターンです」


「たった復讐ごときで、世界を崩壊させようとなんて馬鹿げた話あるわけがない」


「それが自分の目的を果たす直前に2度も、同じ人物に阻まれたとしたら?」


「世界ごと……その人物を殺すつもりか!? ふざけてる!非ぃ論理的だ!!」


「どうやら黒幕に心当たりがあるようだな。一から順に説明してくれ」


「どういう経緯で彼が帝国と組んだかはわかりません。しかし、彼と手を組んだ帝国は彼が持つオーバーテクノロジーを利用し、これまで多くの国を侵略して支配下に置いてきました。それは彼の真の狙いを達成するために、反抗する勢力を減らしたいから」


「――っ、なにか、俺たちの国は……!?」


「利用されていたのか!」


「建国当初なのかそれとも途中で歪められたのかは今となっては確かめることができませんが。そして生と死を司るディアボロスの封印を解こうとしたのも、それに失敗してD4に手を出したのも、彼の目的が自身を否定した世界そのものを呪い、その対象者ごと破滅に導こうとしたのであれば説明がつきます」


「それにしてもその彼ってのはどういうやつなんだ……俺たちの国は建国してからそれなりに長い国だぞ。生きていられる人間なんかいねえ。それに皇帝陛下も代替わりしている。建国時の思想が狂っていたとしても、全員がそれを受け継ぐなんてありえない」


「『人間』じゃないとしたら」


「なんだと……!?」


「彼の名はギース。かつて人類の大半を殺したAIです」


 そして、アイリスは彼らに語っていく。過去の世界でギースが何をしてきたのかを……




 夜が明け、日差しが差し込み始めたころ、グラムは重要な話があると聞いて全員に召集をかけた。そして、昨夜アイリスたちと話した出来事を簡潔に話していく。


「――つまり、俺たちは世界の崩壊を招くうえでお邪魔虫になったわけだ」


「では、我々がしてきたことは……」


「お上さんの命令には絶対順守、それは間違ってねえ。だが、軍ってのは自国の人間を護るために他人を討つ組織だ。その理念を忘れた奴は軍人じゃねえ。ただのテロリストだ」


「………………」


 既に民間人を虐殺した戦艦の乗組員は手が震え、何も言う資格はないと自認し、黙ってグラムの話を聞いている。


「テロリストに乗っ取られたのであれば軍人は何をするか。そんなの決まっている。奪還するんだよ、俺たちの手で!」


「しかし、今の我々では……」


「なら力を借りるまでだ。俺たち、カーディナル帝国軍はシャルトリューズ王国と共に国を牛耳るテロリストを駆逐する!」


 湧きだつ軍人たちの中にバツが悪そうにしている者も数多くみられる中、グラムはそんな彼らに視線を合わせる。


「この中にはテロリストに加担してしまった者もいる。過去は取り戻せねえが、罪ってのは償えるものだ。国を取り戻して、汚名返上と行こうじゃねえか!」


「艦長、本当に我らが一緒に戦ってもよろしいのでしょうか?」


「……我々は作戦、いえ私情交じりで民間人を殺しました。戦いが終われば罰は受けます」


「そのときは我々も」


「いえ、罰を受けるのは私一人で十分。それに亜人に対する考えを変えたわけではありません」


「しかし……」


「ですが、機械に扱われる人間など亜人以下。駆除しなければなりません」


 わなわなと怒りで震えている手を見て、部下たちは彼の罪を少しでも軽くすべく、グラムたちと同じく国を救おうと決意する。

 胸に込める思いは様々。だが、目的は同じ。それは彼らの顔を一望しているグラムが一番わかっている。


「俺たちはこの地域を脱出し、シャルトリューズ王国にいく。内陸は帝国内を突っ切るため、駄目だ。よって沿岸部に行き、海上ルートで迂回し、シャルトリューズ王国に入る」


「陸上戦艦には海上を走る機能はありませんが……」


「そこはタイラントに説明をしてもらおう」


「めんどくせえ。セブンスセブン、お前に任せた」


「では、私から説明させてもらいます。タイラントの知り合いであるリヴァイアには海を操る権能があります。彼女の力で戦艦ごと運んでもらい、コパール王国に入港する予定です」


「あの質量を運べるとはとても……」


「失礼ですが、以前私がリヴァイアさんと戦った時は国丸ごと飲み込むような大津波を発生させていました。そのことを考えると戦艦を運べる可能性はあります」


 アイリスが補足を入れるも、質問をしてきた軍人はまだ納得していないようだった。こればかりは実際に目で見てもらわないと信じてもらえないのかもしれない。


「というわけで俺たちはエスト港を目指す。当然だが、俺たちを逃がさないように敵も本腰を入れて防衛に戦力を回しているはずだ。これを突破しない限り、俺たちに未来は無い」


 運命共同体となったアイリスたちと帝国軍を乗せた地上戦艦は港を目指していく。その最中、サイケとアイリスは電源を切って横たわっているPタイプの量産型マシンドールに様々なケーブルをつなぎ始める。


「今の制御システムはギースによる制御システム、バックドアがあっても困るので別の制御システムに書き換えます」


「それは良いけど、代用のプログラムはあるのかい?」


「簡易AIのデータなら」


 アイリスが量産型マシンドールに読み込んでいるのは、かつて衛星砲攻防戦で活躍したヴァルキリー部隊に用いたのと同じAIだ。この時用いた簡易AIはマシンドールの基礎となったナナのAIを基として作られているため、ほぼ同系列なPタイプでも互換性はある。

 何の問題もなく進行されていくインストール作業にサイケは面白くなさそうな、いやデータには興味がありそうな複雑な顔を浮かべながら、一行は戦いに備えていくのであった。

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