EPISODE70 撤退戦
民間人虐殺を行ったモンペラを捕らえ、砦に戻ったアイリスたちはタイラント討伐から始まった次元崩壊を含む一連の騒動をグラムを含む将校たちに伝えていた。なお、砦に大きな被害を出したナナは古城にてお留守番だ。
「……おいおい、いくらなんでもそんな夢物語を信じろって言うのか?」
「信じられないかもしれませんが、私が話したことはすべて真実です」
「それが真実だっていう証拠はあるのかよ」
「あのひび割れ……貴方たちも見たのではないでしょうか?」
「まあな。たしかにアレがこの世の終わりだって言えば信じられる光景だ」
「だったら!」
「個人的になら信じても構わないが、軍、さらに言うなら政治を動かすには動かぬ証拠や根拠ってのが必要なんだ」
「監察官殿。失礼ですが、敵国の世迷言を信じるつもりで?」
「じゃあ、あのひび割れはなんて説明するつもりだ? 俺たちが魔法で幻覚でも見せられたっていうのなら話は別だがな」
「そ、それは……」
「今頃、本国も市民からの問い合わせで回線パンクしているぜ。本当か嘘かはともかく、俺たちは答えを出す必要があるのさ。どうだ、根拠を示せるか?」
「……できます。ですが、1つ頼みがあります」
「いいぜ。何が必要なんだ? 俺ができる範囲なら手配してやるよ」
「Dr.サイケ、彼と合わせてください」
アイリスはD4ミサイルを復元できる技術力を持つとしたら、1号機らを建造したサイケしかいないだろうと踏んでいた。ならば、彼を過去から持ってきた証拠で納得させることができる出来れば、それは十分すぎるほどの説得力を持つ。
「待ってろ。セブンスセブンのこともあって補給部隊と一緒に呼んである。もうじきくるは……」
「た、大変です。大量のマシンドールがこちらに!!」
「ん? 本国からの応援もついでに来てんのか。参ったな、砦が壊れているからあまり数は来てほしくなかったんだが……追い返すわけにもいかねえから、受け入れるよう手配を――」
「いえ、マシンドールがこちらに……攻撃を仕掛けています!」
「なっ、どういうことだ!?」
悲壮感を漂わせている兵士に問いただしても分からないとの一点張り。埒が明かないと考え、グラムは将校たちにこの砦を放棄、ナナがいる古城まで退却することを指示する。
「ドラゴンの下へ行けと言うのですか!」
「四の五の言わずにさっさとしたくしろ。少なくとも俺の知っているセブンは無防備な奴を殺そうとする奴じゃねぇよ。奴が撃つのは撃たれる覚悟をしている奴だけだ」
「しかし、ここから移動となると時間が……」
「こっちには拿捕した陸上戦艦がある。必要な人員もそろっているっていうおまけつきだ」
「民間人を虐殺した者を使えと!?」
「裁判にかけていねえんだからまだ無罪だろ。事情が分からねえ以上、今は退却が優先だ。俺たちが殿を務めているうちに、お前らと女王様は――」
「待ってください。私にも撤退戦の手伝いを」
「ダメだ!俺が死んだところでごたごたにはなるだろうが、代わりはいる。だが、お前に万が一あったら、外交問題だろうが!」
「だからこそです。こちらに来る部隊に外交相手のDr.サイケがいるなら、無視することはできません」
「まったく。ああいえばこういう奴だ。分かった、俺の権限で出来る限りの許可は出す。今は猫の手も借りたいくらいだからな」
「そうと決まったら、レイ、ナナに連絡して撤退部隊の支援の要請。タイラントさんは古城の守りについて欲しいけど、そこは彼の自由に」
「了解。伝えておくよ」
「救助は早さが勝負。最初から全速力で!リミッター解除!!」
「オッケー!」
赤く発光したレイが帝国軍を救いに行くため、すでに発進しているマシンドール部隊をあっさりと追い抜き、夜空をかけていく。
味方の識別反応を出しているマシンドールから攻撃を受けている補給部隊を乗せた小型戦艦。最近になって武力の制圧した地域ということもあり、反抗勢力に対する武装やマシンドールが搭載されている。とはいえ、その量や質は正規軍に敵うはずもない。そのため、マシンドールで足止めしているうちに全力で逃げることに徹していた。
「エンジンに被弾。走行不能!」
「う~ん、ハッキング電波はなし。そもそも僕のマシンドールがハッキングされるようなヘマはしないけどね。あっ、フルウェポンのステルスは例外か。まあ、あれは試験データとるのに必要だからノーカン。今度の新型マシンドールにはそれを踏まえた対ハッキングシステムも搭載されるもの。だからノーカン、ノーカン」
「Dr.サイケ、指示を!」
「う~ん? 走行に回していたエネルギーを装甲に回すしかないでしょ。そうこうだけに」
「やってますよ!」
「じゃあ、後は神様の運頼みでもしたら。僕は神様は信じないタイプだから祈らないけどね」
大きく揺れる車内でサイケが興味なさげにコンピューターをいじっている中、艦内に映し出されるモニターにはダメージ箇所が青から赤に移り変わり、もう装甲が持たないことを示している。救助部隊が来ることを祈っているとレーダーに感あり。希望を見出したかのように読み上げる。
「数1。だが早い。通常のマシンドールの何倍だ、これ?」
「ん? ちょっと見せて。この速度、間違いない。僕が完全な復元ができなかった……赤い死神だ」
「赤い死神といえばあの……」
「あっ、言っとくけど、僕は再現していないから同一機じゃないよ。アイリス女王陛下がどうやって作っているのか知りたいところ。いや、製法を聞くのは面白くない。さっきのはなーし」
「光学映像を出します」
「こ、これは……あの国の小さな悪魔!」
「へえ~、あの機体も使えるんだぁ。あの赤くなる奴」
目を見開き、興味津々でモニターに顔を近づけるサイケ。そこにはリミッターを解除したレイの姿があった。
「リミッター解除カット!通常運転に切り替えてからの……レイバスタァァァアx!!」
タイムスリップした際に全力を出せなかった分までの鬱憤を晴らすかのような極太ビームが敵の隊列を撃ちぬきながら、敵の飛行船を落としていく。乱入してきたレイにエーテルの剣を抜いて襲い掛かるマシンドールをひょいとかわし、お返しと言わんばかりにビームサーベルで振り払う。
「へへん。そんな鈍い動きであたるわけないよ~だ。って、おっと」
数多くの光弾を避けながら、ビームライフルで撃ちぬいていく。だが、その程度の攻撃では数が中々減らない。レイバスターで効率的に倒そうにも先ほどの密集形態から打って変わって、飛行船から敵機がある程度距離を取り始めている今ではその効果は薄い。
「さてとどうしようかなっと!」
打開策が無きまま小型艦を狙うマシンドールを打ち落としていくと、上空から月光を遮る黒い影が映るり、レイの前に降り立つ。それは暴君の名を持つドラゴン!
「おう、おもしれええことになっているじゃねぇか!」
「う~ん、自由とはいったけど防衛はどうしたの?」
「セブンスセブンに任せた」
「うわぁ、ブラック。黒いアーマー来ているし、ちょうどいいかもね」
「つーか、雑魚如きで時間喰ってるんじゃねえよ。殲滅ってのこうやるんだ。メテオレイン!」
上空に描かれる無数の魔法陣が所せましと敷き詰められる。その魔法陣から目の前の敵に目掛けて隕石が降り注ぎ、マシンドールを、敵の空母を押しつぶしていく。運良く逃げ切れた機体もあるが、統率を取るものはおらず、目の前の敵に反撃するだけの機械的な行動しかとれなくなっていた。もはや殲滅戦しかならないところに遅れてやってくる救援部隊。もう勝負は決まったも同然だ。
「ちっ、雑魚に混じって骨のあるやつの1匹や2匹いると思ったが、いねえか」
「居たら困るんだけどなー」
「そうか。俺はいたら喜んで殴り合うぜ」
「う~ん、この戦闘狂」
「ガハハ、それは誉め言葉か。雑魚はおめえらに譲るわ」
目の前の敵に興味を失ったタイラントがとんぼ返りで今の住処である古城へと戻っていく。ドラゴンの規格外の強さにあきれながらも、レイはとろとろと走る小型艦の護衛につく。
それ以上の追手の姿は見えないまま、サイケが乗った艦は古城へ無事にたどり着くのであった。
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