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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE67 BREAK THE SKY(FINAL)

 コンピューターに表示された無数の文字列が滝のように流れてくる。アイリスはそれらの文字列を頭の中で想像しやすいイメージに変換――今は発射システムという城を護ろうとしている兵士(セキュリティ)城壁(ファイアウォール)、それに立ち向かおうとしている自分といったところか。兵士に見つかればか弱い自分は一撃でやられるだろうし、城壁を壊すには時間がかかる。


「猶予が無いなら迂回するパスを造ればいい!」


 それと同時に衛星砲の発射システムへのクラッキングも開始する。残り時間をモニターに映し出すと残り銃分程度でチャージが終わる。もはや一刻の猶予もない中、アイリスはせわしくキーボードをたたきつける。


「時間? ないなら作る。ギースに関する資料から察するにすべての機械の制御を自身の支配下に置きたい性格だからスタンドアローンにはしていないはず。ここから電気系統のコンピュータにアクセスして別の演算でもやらせて重くすればチャージを遅らせれば……」


 手持ちのデバイスもつなぎ、複数のコンピューターによる並列作業が始まる。一人で二人分、いやそれ以上の作業量をこなしながら、ハッキングを仕掛けていく。


「思っていた通り、急ピッチで仕上げたせいでこっちは弱い。演算項目はそうね、三大未解決魔術予想でもやらせるわよ!この時代に存在しない演算を無理やりやらせれば、いくらハイスペックコンピューターでもエラーの一つくらい引き起こせるでしょ」


 別のモニターに映し出されたカウントダウンが残り数分のところで行ったり来たりしている。目論見自体は成功している。あとはパスの成形をいかに早く、見回りの兵士に見つからないようにするかだ。

 外では銃声が鳴りやまない。だが、それは同時にレイの無事を意味している。背中を任せている以上、振り返るようなことはしない。

 そして、さらに別の小さなモニターにはセブンスセブンがギースと戦っている様子が映し出されていた。


「急にカウントが進んで……気づかれた!? 」


 こちらに向かおうとするギースを行かせまいと奮闘するセブンスセブン。そして、大きな揺れと共に彼女が叩きつけられるシーンが映る。


「ナナ!」


 彼女のピンチに自分は呼びかけることしかできない。そして、目の前には迂回路が50%以上できているが、残されたカウントは残り1分を切っている。そして、兵士たちもこちらに刻々とこちらに近づいてくる。カウントが終わるが先か、兵士に駆除されるのが先かを競うレースとなっており、それ以外の答えは存在しない。


「それでも――」




 死をいざなう光が自身に向けられている中、セブンスセブンは身体を必死になって起こそうとしていた。だが、セブンスセブンの背部のスラスターは外壁にたたきつけられたときに壊れており、姿勢制御どころか前へ飛ぶことすらままならない状況であった。


「私は……まだ……あき……」


 まだ動ける。ならばと、射線から離れようと外壁を押しのけてその反動で逃れようとする。だが、それは迫ってくる光よりもはるかに遅い。


「ふはははは、諦めろ。もはや貴様らに勝ち目はない」


「それでも――」




「「私はまだあきらめない!!」」




 アイリスとナナの思いがシンクロした瞬間、アイリスの持っていたデバイスが突如光りだす。モニターには作業中の画面の他に別の画面が映し出されていた。


「BURST MODE? よくわからないけど、この状況を覆せるなら!ナナ、バーストモード!!」


 ひどい倦怠感と共にデバイスから発せられた赤い光が何層もある外壁すら通過し、ギースのカイザーブラスターとほぼ同タイミングでセブンスセブンに直撃し、爆炎が上がる。


「ふん、内部で何かしたようだが、もう遅い。あとは中にいる虫けら共を……む!?」


 セブンスセブンが居たほうから高圧縮されたエーテル弾が放たれ、寸でのところでかわす。まだ動けたのかと、ドローンを飛ばして警戒心をむき出しにしていく。そして、ギースの目に再度映ったセブンスセブンの姿は以前と同等ではなかった。

 左手こそは失ったままだが、青かった髪は赤く燃え、炎を纏った身体は先ほどの攻撃を全て吸収したと言わんばかりだ。そして、炎の羽根を広げながら、こちらへと向かっていく。


「まずはそのドローンを落とします」


 変貌した彼女にギースが驚愕している隙に、近くに展開させてあったドローンが瞬く間に2つ撃墜される。我に返ったギースがドローンによる包囲網を造りながら自身は後退していく。


「このエーテルの爆発的増加……一体、何が起こっている!?」


「よっつ、いつつ!逃がしはしない」


 宇宙空間を高速で縦横無尽に飛び回るセブンスセブン。その速度はギースと同等、いやもはやそれ以上だ。いくらドローンと言えども半数を失い、自身よりも小型で早い目標を完全にとらえきることはできない。だが、逃げ場を誘導できるはずだとギースは考え、誘いを入れていく。


「むっつ、ななつ!これで――」


 セブンスセブンが頭上に来たドローンを狙いに入れようと右手を掲げ攻撃を放った瞬間、その一瞬だけ動きを止めたところにギースはカイザーブラスターを放つ。


「ならば、躱せばいいだけのこ……この位置は!?」


「そう逃げれば貴様の仲間を巻き込むことになる。衛星砲を失うのは口惜しいが、外壁を貫くほどの火力。仮にエーテルの壁を張ろうと、それすらも打ち砕く!」


「そうはさせません。Gシールドを前方に展開……ストライク・ノヴァ!!」


 セブンスセブンが円錐状にシールドを張り、猛スピードでカイザーブラスターに突撃する。二つの攻撃がぶつかった瞬間、超新星爆発もかくやと言わんばかりに光り輝く。


「「いっけええー---!!」」


「馬鹿な、押し戻されるだと!!?」


 撃ち負けることが無いと思いあがっていたギースの胸元に風穴を開けるセブンスセブン。


「この流れを途切れさせはしない」


「ぐおおおおお!この程度のダメージで思いあがるな!」


「力で押してくるなら、バーストインパクト!!」


 体格が4倍以上あるギースが力で負けるわけがないとニタリと思いながら拳同士でぶつけ合う。だが、それは彼が思い描いた結果ではなく、大きく腕が押しのけられ体制を大きく崩すこととなる。

 その瞬間を見逃すセブンスセブンではない。背中にマウントしてあったロングブレードを引き抜き、ギースの腕に突き刺す。突き刺して動きが止まった瞬間が好機と思ったのか、フィンガーレーザーを浴びさせようとするも、ロングブレードを置き去りにしてナナがその場を去っていく。自身の攻撃で片腕を失ったものの、距離を取ることに成功したギースは踵を返す。


「今の隙に退却しなければ……」


「そうはさせません」


 セブンスセブンの手には彼が先ほどゴミのように捨てた彼女の左腕が握られていた。そして、自分自身の腕を野球の球を投げるかのように大きく振りかぶり、背中を見せて逃げようとするギースに向かって投げつける。


 ロケットのように高速で突き進むそれは、それは――


 数百年前の時代から伝わるロボットの定番武器――


「「ロケットパンチ!」」


 セブンスセブンが持てるエネルギーの全力投球で放たれた腕はギースの背中のスラスターを潰しながら食い込み、彼を予期せぬ方向へと突き進めさせる。


「ぐおっ!? 方向転換ができん。このままでは地球圏から遠ざかってしまう。せめて、我の基幹データだけでも地上に送らなければ……」


「ギース。今の私では貴方を倒すことはできません。ですが、いつか貴方を倒すその日まで私は戦い続けます」


「おのれええええええ。セブンスセブン!そして、内部に入ったアイリスとかいう虫けらの女!貴様らは必ず!この手で殺してやる。何年かかろうと、何十年かかろうと、幾星霜の時を超えてでもだああああああ!!」


 恨み節を言いながら地球から遠ざかっていくギース。このままいけば、デブリ帯に衝突してめでたく彼もデブリの仲間入りするだろう。仮にデブリ帯を超えたとしてもその先は何もない宇宙空間をさまようだけである。


「アイリス、衛星砲は?」


【止まったわ。ギースが直々に参戦していたせいでまずい状況だったけど、ナナとの戦いに専念してくれたおかげで、カウントがギリギリのところでとどまってハッキングに成功。内部の掃討も終わったみたい】


【みんなやる気なくなったみたいに、動きがとまったんだよね】


「ギースが直接操っていたのかもしれません。それでは安全を確保したのち、FINAL PHASE-衛星砲の破壊任務にうつります」


 付近に伏兵が潜んでいないか注意しつつ、セブンスセブンは二人に合流すべく衛星砲の内部へと戻っていく。動力炉から砲塔につながるケーブルの切断、並びに砲撃システムを初期化していく。そして、脱出したシャトルからは衛星砲のバーニアが点火され、地球から少しずつ遠ざかっていく様子が見える。


「衛星砲の移動を確認」


「移動コースは万が一もあるから、ギースが飛んだ方向とは逆にしたわ」


「あとは自然と壊れるのを待つだけだね」


「完全に壊すには時間も労力がかかります。これが一番手っ取り早い手段でしょう」


 元気いっぱいなレイがシャトルを動かしている中、セブンスセブンは助手席で疲れ果てて点を仰ぎ見ているアイリスに窓を見るように促す。


「何かあっ……」


 アイリスの目に映ったのは壮大な青い星、地球。衛星砲に行くとは周りの景色を見る余裕はなかったが、終わった今ならこうしてゆっくりと眺めることができる。初めて見るそれは、自分たちの時代の地図に描かれている大陸がちっぽけにみえるほど大きく、そして広い。まだ自分たちが知らない土地があれほどあるのかと思うほどだ。


「これが私が住んでいる星……」


「ええ、そして私たちが護った星です」


 美しいとかきれいだとかそんな言葉では言い表せない存在感を放つ地球。蒼い宇宙に宝石のように浮かぶ青い星。アイリスはこの光景を一生忘れないように網膜に焼き付ける。


「いつか、もう一度……戻ってくるわ。どれだけ時間がかかるかは分からないけど」


「この不可能と思えたミッションを成功させたあなたならできますよ」


「そうね、『私たち』なら」


 大気圏突入のため、窓のシャッターが下りてくる。そして、熱くなる機内の中でアイリスは宇宙に戻ることを誓いながら、地上に残してきたみんなの無事を願うのであった。

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