表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/85

EPISODE66 BREAK THE SKY(ACT4)

「うわ、ナニコレ。どうなっているの?」


 成層圏を抜けたシャトル内でふわっとした浮遊感に襲われていた。地上で説明を受けていたとはいえ、無重力状態を体験するのは初めてである。手足をばたつかせながら宙にぷかぷかと浮いているアイリスを外から戻ってきた二人が眺めていた。


「何をしているのですか?」


「無重力ってどんな感じかなって思ったからシートベルトを外したんだけど……これって凄く動きづらい」


「想像がつくと思いましたが……未来だと宇宙開発が廃れているんでしたね。仕方ありません」


 セブンスセブンが床を蹴って宙に浮いているアイリスを抱きかかえ、天井を軽くおした反動で席に着かせる。今度はシートベルトを外さないようにと子供に言い聞かせるような優しい口調でアイリスに伝える。


「平時であれば宇宙遊泳や遊覧飛行もいいのですが、それは後でとっておきましょう。今は……」


「あれが衛星砲? 思っていた以上に小さ……ん?」


 目の前にくっきりと見えたシルエットに小ぶりな施設だと思っていたソレは近づいていくにつれて、その大きさを示していく。大気のある地上とは違い、宇宙では遠くにあっても空気による影響が無い分はっきりと見えてしまう。そのため、遠近感が狂い、遠くにある大きなモノを近くにある小さなモノと誤認してしまう。

 そのサイズは乗っているシャトルをすっぽりと覆うほどの巨大建造物であった。


「抵抗がありませんね。迎撃システムくらいはあるかと思っていましたが」


「宇宙に行ける手段って宇宙港しかないから、そこを抑えていた時点で迎撃の用意をする必要もなかったんじゃないのかな」


「あとは衛星砲を造るのに精いっぱいで迎撃まで手が回らなかったとか」


「迎撃システムを取り付る時間はいくらでもあったはず。外してでも完成を急がせる理由があるとすれば……」


「あるとすれば?」


「私たちが勝ちすぎたのかもしれません」


 そう告げるとセブンスセブンは船外作業のため、宇宙空間へと出る。いくら迎撃手段は無くても、港らしき場所はシャッターで固く閉じられている。スターアーマーに換装したセブンスセブンがGブレードで熱を駆けながらゆっくりと扉を切り開いているとき、何者かが放ったエーテル光が彼女を狙う。


「宙域に敵!?」


 宙域での戦闘は想定していたとはいえ、そのほとんどは拠点に設置されている対CIWSであり、運用面で難がある機械兵との戦闘はレアケースと思われていたからだ。だが、襲ってきた方向に拠点などあるはずもなく、明確な悪意を持ってソレは接近してきた。

 人の悪意を凝集させたような真っ黒な人型から、多くの血を見てきたツインアイに赤い光が零れる。人型ではあるが、セブンスセブンやレイのように人間に似せたものではなく、ロボットと評したほうが良い。その大きさは宙域戦闘に合わせてエーテルドライブを大型化させたせいか10m弱はある。


(オープンチャンネルで通信……?)


「まさか虫けらが宇宙まで来るとは思わんかったぞ」


「この声は……ギース!」


「さよう。虫けらを潰すのに殺虫剤を巻くのが効率が良いが、たまには我自身で踏みつぶすのも一興。それにだ、ここでお前を完膚無きに叩きのめせば騒いでいる虫けらも大人しくはなるだろう」


「レイ、船外作業の続きを。短時間であれば宙域での行動は可能なはずです」


「任せて」


「ナナ、無理はしないでね」


「わかっています、アイリス。ですが、ここでギースを倒せば!」


 全ての戦いに終止符をうてると勢いよくバーニアを吹かす。並の機械兵ならば回避行動をとる暇はないほどだ。だが、いくらエーテル濃度が薄い宙域戦闘とはいえ、突っ込んできた相手に身動きしないギースに違和感を覚えたセブンスセブンはとっさに回避行動をとると、自分が先ほどまでいた空間に光の射線がよぎる。


「砲撃!? いえ、これは……」


 回避できたのは偶然、2度目は無いとセブンスセブンが砲撃を躱しながら辺りを見渡す。すると、彼女の周りを四角錐の小型ドローンがビュンビュンと飛び回っているのが見えた。ドローン4機がギースの背中に戻り、代わりの4機が射出される。

 どうやら宙域空間があるゆえにある程度の行動後は充電が必要になるようだが、空戦と同じくあらゆる方向から狙えるオールレンジ攻撃は彼女にとって脅威であった。


「各頂点に砲塔……計20本の射線を掻い潜ってギースに近づくのは困難。ならば!」


 撃ち落すのみだとGライフルにすばやく切り替え、近くで飛び回っていた1機をうち落とす。


「まずはひとつ!」


「付属品とはいえ我に傷をつけるとは……この虫けら共が!」


 余裕をもって充電していた残る4つのドローンとギースの10本の指から放たれるフィンガーレーザーが宇宙を蛍光色に染め上げていく。先ほどと同じようにドローンの数を減らそうとGライフルで狙いをつけようしたが、死角からの砲撃が肩アーマーに着弾してしまう。


(っ……外付けの装甲が外れただけ。行動に支障はない。それにスターの機動性なら回避に専念すれば被弾は抑えられる)


「さあ、踊れ!死のダンスを!!」


(チャンスは必ず来る。今は耐えるときです)


 ギースの嘲笑が宙域中になり響きながらも、セブンスセブンはいつ終わるか分からないダンスの演目を踊り続けることになった。



 一方、衛星砲の内部に侵入したアイリスたちは整備ロボたちの手荒い歓迎を受けていた。対人に特化した警備ロボではなく、装甲の薄い整備用のロボットに銃を持たせて戦闘させているあたり突貫工事であったことがうかがい知れる。だが、衛星砲の巨大さがゆえにその数は多く、宇宙から送られた生半可な戦力に対して十分な脅威となるはず……だった。


「そんな攻撃ボクに効かないよ!」


 レイの赤黒い装甲に銃弾が弾かれ、ナイフで首元にある露出したケーブルを斬りつけられて機能を停止していく整備ロボたち。その後を機動隊が持つような大楯で身を守りながら進むアイリス。もはや中東基地の二の舞となってしまっている衛星砲の内部であった。

 彼女たちがあの基地を制圧した時点で、衛星砲の建造は進んでいた。マシンドールの整備がこれ以上進む前に衛星砲による人類抹殺を急いだのもこの事件があったからだ。だが、結果はどうだろうか。結局のところ、内部の機構を変えることはできなかった時点でこうなることは自明の理だったのかもしれない。


「まずは衛星砲を撃たせないようにコントロールルームを探すわ。どこにあるかしらないけど」


「こういうのって中心部にあるのがお決まりじゃない?」


「上層から侵入しても下層から侵入しても時間がかかるものね。私たちが入ってきたのは衛星砲の下層だから、昇っていくわよ!」


 階段を駆け上がり、衛生砲のコントロールルームを目指していくアイリスたち。固く閉ざされた扉も対機械兵用のライフルの前では豆腐と同じ、あっけなく砕かれ中の部屋を暴いていく。


「人が居ないから全力ぶっぱできるのも楽だね」


「どうせあとで壊すもの。景気よく壊していきましょう」


「さんせーい!」


 視界につく部屋を片っ端から開けて、いや壊しつづけていくうちにやたら頑丈な扉に遭遇する。


「あたりかな?」


「外れたとしても中身はきっと大切な物よね」


「でも、壊すのに時間がかかるかも」


「こういうときにこそ奥の手よ。監視カメラは壊しているし、一気に行くわよ!」


「「リミッター解除!」」


 レイが赤く輝き、持っていたビームナイフをサーベルモードに変換。リミッター解除で得られた膨大なエーテルをビームナイフに注ぎ込み、ハイパービームサーベルと同等の巨大な光剣に姿を変える。


「ボクの剣に断てぬモノなしってね!」


 一刀両断!鳴り響く警報を無視し、チーズのように溶解した扉を壊して部屋の中へと入っていくと、コンピューターが敷き詰められ、モニターが目が痛くなるほどにちかちかと輝いている。どうやらお目当ての部屋のようだ。


「あとは私が内部構造を把握して衛星砲が発射されないようにロックをかけるだけ。発射までの時間は残りはあとわずか……やってやろうじゃないの」


「ボクはこの部屋に誰も入らないようにしないとね」


「レイ、背中は任せたわよ」


「任せて!その代わり頭脳戦は任せたよ」


「もちろん。必ず基幹部のデータを見つけ出してみせるわ。皆のためにも」


 次に顔を見せ合う時はすべてが終わった時だと言わんばかりに大きく頷いた二人は互いの持ち場につき、それぞれの作業を始める。



 彼女たちの行動は外で戦っているギースにも伝わっている。


「なに、クラッキングを受けているだと!? あの部屋はそう簡単には破れないはずだが。こうしてはおられん」


「貴方の相手は私です!」


 全身の鎧は砕けおち、柔和な肌を露出させながらGライフルを打ち込んでいくセブンスセブン。煩わしく追ってくるコバエを追い払うようにドローンによる一斉射撃を行う。


(あと10、9、8……)


 セブンスセブンはドローンの攻撃をかわしながら心の中でカウントダウンする。そして、0になった瞬間、ドローンがギースの背中にある充電ポッドへと帰ろうと反転する。


「この瞬間を待っていました!」


 この一撃にすべてを賭ける!

 左腕のGブレードに残っているエーテルを注ぎ込み、火力の上昇。背中のブースターはレッドゾーンになるまでアクセルを踏み込み、スラスターを焚いていく。閃光のような速度でセブンスセブンがギースの腹部に突き刺そうとする。


「なめるな!」


「この速度で……エーテルの剣を白羽取り!?」


「パワーも!装甲も!スピードも!貴様より格上なのだ!!」


「ぐあっ!」


 左腕を千切られたセブンスセブンは衛星砲の外壁にたたきつけられる。アーマー越しとはいえ今まで受けていたドローンのダメージと先ほどの衝撃で身体がうまいこと動かないセブンスセブンに対し、ギースは見下しながら胸の砲塔を向ける。


「我が砲を傷つけるのはナンセンスだが、その区画ごと貴様の墓標にしてやろう。中にいる虫けらなど貴様を葬り去った後でじっくりといたぶってやる」


「ぐっ……アイリス……」


「アイリスというのか、中の虫けらは。ふん、その名くらいは覚えてやろう。だが、お別れだ。カイザーブラスター!!」


 外壁ごと焼き尽くさんとするほどの膨大なエネルギー波が満身創痍のセブンスセブンに襲うのであった。


「私は……まだ……あき…………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ