表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/85

EPISODE65 BREAK THE SKY(ACT3)

 ――作戦当日。

 スイス北部より、地球のマークを付けた国連軍の有人戦闘機が群れとなって飛来する。それを迎え撃つのは彼らの半分ほどの大きさの無人戦闘機。北欧の国連軍が持てる戦力のすべてである百数十機に対し、ギース軍はその数倍である300機近くの機体を送り込んでいる。


無人機(デストーイ)をまだこれだけの数を残していたのか」


「まさによりどりみどりのバーゲンセールってやつだ」


「狙いをつけなくても当たりそうだぜ」


「一人頭たった3機堕とせばいい。無茶はするなよ。トール1より各機、攻撃開始!」


 隊長の指示が飛ぶと同時に、待ちくたびれたと言わんばかりのミサイルが飛び交っていく。無人機がそれらを中に人が居れば失神しそうなマニューバーでかわしながら、あるいは迎撃し、撃ち落していく。爆炎の華が散えゆく前に無人機からお返しの無数のミサイルが飛来する。それを躱そうとする国連軍の戦闘機だが、圧倒的な物量の前に撃ち落される期待が多数見受けられる。


「た、隊長――!」


「カール!? ちっ、おもちゃ如きが!」


 隊長機が怒りをぶつけるかのように2機の無人機を続けざまに葬り去っていく。だが、死を告げるギースのおもちゃの数が一向に減った気がしない。


「いくら陽動とはいえ、このままでは持たんぞ」


 隊長が文句を言いながらも、部下の背後を追いかけていた無人機を撃つ。この戦いが終わったら、生き残った部下と一緒に司令官の顔をぶん殴ってやろうかと思いながら、こちらの周りをウロチョロとする無人機をまた1機撃ちおとす。


「ん? 友軍機の反応……? 予定にはなかったはずだが」


 そもそも全戦力を投入しての戦いに援軍を送り込む余裕などないはずと疑問視をしながらも、後ろに追いすがろうとして来る無人機を振り払おうとする。だが、向こうは小回りが利き、人間という無駄なパーツが無い分機動性も高い。背後に迫りくる死神からロックオンのアラートがコックピット内に響き渡ったとき、天より降り注いだエーテルの光が無人機を貫く。

 窮地を脱した頭上を見上げると、暗雲を斬り裂きながら太陽の光と共に数十機の女性型マシンドールが駆け付ける。その幻想的な光景に目を奪われそうになるほどだ。


「あれは……お偉いさんのお人形か」


「ヴァルキリー部隊到着シマシタ。コレヨリ友軍ノ援護ニ入リマス」


「ああ、助かる。だが、その数で押し返せるほどこの戦場は甘くないぞ」


 地上戦でのマシンドールの大躍進を間近で見たことはあるとはいえ、地上と空では勝手が違う。いくら彼女たちでも、ゲームチェンジャーになりうるとは思えなかった。それでも五分五分、いやヨンロクくらいの状況に持ち込めるのであれば、御の字といったところだった。


 だが、その予想を覆そうとするかのように彼女たちの肩部のアーマーから2体の小鳥状の攻撃ドローンが排出され、嘴からエーテルの光が放たれ、無人機のエンジンや翼を狙いすましていく。被弾して一瞬でもバランスを崩した戦闘機など格好の的と言わんばかりに、手に持った槍でとどめを刺していくヴァルキリー部隊たち。ドローンとの連携を取りながら無人機を瞬く間に落ち堕としていく様子は戦乙女の名に恥じぬ戦いっぷりだ。


「これで未完成というんだから恐れ入る。トール1より、各機に通達。一度、ポイント220に集結し、前線を立て直す。ロキの部隊もついてこい」


 置き土産のミサイルを放った隊長機は部下や仲間と共に混戦状態となった戦場から離脱していく。空戦用マシンドールの実戦投入により、北部前線は狙い通り膠着状態に陥いるのであった。



 そして、スイス南部からはマシンドールと国連軍の歩兵部隊が進軍していた。また、陸戦用装備のマシンドールと比べると数は少ないもののプロトアサルトの飛行能力のみを抽出したフライヤータイプのマシンドールも見受けられる。それらを迎え撃つのは陸戦に特化したノーマルな機械兵と中東で猛威を振るっていたイージス、そして、北部よりかは少ないが、無人戦闘機も発進されている。


「相変わらずふざけた戦力差だ。抵抗する蟻を踏み潰すかのように圧倒的な戦力で踏みつぶしたいとでも思っているんだろうな、向こうは。今回ばかりはその思考に感謝するかねえな」


「軍曹殿!いかがしますか」


「軍曹じゃねぇ、大尉だ!上が死んでの成り上がりだけどな。よーし、全軍攻撃開始だ」


 量産型マシンドールが近づく間、機械兵を足止めをしようと人が砲撃を開始するもそのことごとくがイージスによって阻まれる。これでは中東のレジスタンスが苦戦していたのも納得だと報告通りの結果に軍曹は不敵な笑みを浮かべながら、次の指示を出す。


「特殊徹甲弾を放て!」


 後方に控えていた自走砲から鋼鉄の槍が勢いよく放たれる。イージスのバリアがなんなく受け止めるかと思われたソレはまるでバリアなどなかったかのように貫き、イージスに突き刺さり倒れていく。無敵の盾を失った機械兵はマシンドールの近接格闘を許し、瞬く間に倒れてしまう。


「S-FORCEの連中も良いモノ造りますね」


「ああ、確か耐エーテルコーティングだったか。この技術が流出したら、こちらのエーテル武器による優位性が失われるから実戦投入はしなかったらしいが、決戦の場なら後のことを気にせずに使えるという判断だそうだ」


「おかげで奴らも面を喰らっていますよ」


「だが、油断はするな。これは虎の子の一撃だ。数で攻められたらおしまいってのは変わってねえんだからな!」


 徹甲弾によって鉄くずと化したイージスを見ながら、機械兵の軍団に絶え間ない砲撃を放っていく国連軍たち。爆音が響くたびにどこかで国連軍の人間が死んでいるが、その勢いと戦意は衰えることを知らない。

 予想外の抵抗を見せる北部とじわじわと押していく南部の前線にギース軍はイラついたのか更なる増援を決めるのであった。




 その様子を東部から眺めるアイリスたち。宇宙センターの近くの基地からスクランブル発進されていく機械兵らを見て、作戦が予定通り進んでいることが分かる。


「北部と南部に敵の部隊を2分に別れさせ、手薄になったところを私たちが強襲。それに合わせて西部からはステルス部隊が施設の制圧と民間人の安全の確保……理屈はわかるけど、とんでもない作戦よね」


「ですが、数が劣る私たちが勝つには陽動と奇襲、その両方を使わなければなりません」


「それもそうね。さてと、いくわよ!アクセル全開!!」


 どうせ音で場所がばれるのだからとステルス機能を解除し、その分のエネルギーを動力へと回し、更なるスピードアップにつなげる。隠す気は一切ゼロの猛スピードで山を下っていく。石に乗り上げられて車体が浮こうと何のその、アイリスはアクセルペダルから足を離さない。


「目の前に敵の反応!ナナ、レイ!!」


「了解、セブンスセブンPA出ます!」


「ボクも出るよ!」


 車両から二人が飛び出し、前方で慌てて陣形を組もうとする機械兵に向かってライフルを放っていく。その攻撃を防ごうとドシンドシンとイージスが近づいてくる。中東で戦った時のように足場が悪いわけではないため、同じ手は通用しない。


「ですが、こちらには耐エーテルコーティングしたロングブレードがあります!レイ!」


「オッケー!セブンに合わせるよ」


 2人の接近にバリアを張っていくイージスだが、セブンスセブンがロングブレードを振るい、バリアを斬り裂いていく。バリアが自己修復するそのわずかな間隙を狙って、レイの対機械兵用ライフルが火を噴く。2機の息の合ったコンビネーションでイージスが倒れ、後ろに控えている機械兵に狙いを定める。


「マルチターゲット、ロック!フルバースト!」


 プロトアサルトに積まれた火器が一斉に放たれ、眼前に展開していた機械兵たちを火の海へと変えていく。それらの戦火の中をアイリスは勢いを止めることなく突っ込んで行く。


「女は度胸!」


 半ばやけくそになりながらも、装甲車を走らせていくアイリス。モニターに映し出されるパラメーターは車両に大きな負荷とダメージがかかっている赤ランプが点滅しているが、そんなことはお構いなく今の速度を維持していく。


「こっちにはナナとレイちゃんもいるのよ。へんてこりんなゴーレムなんかに負けないわ!」


 弾丸のように我が道を突き進んでいく車両とその行く手を阻む機械兵を打ち落としていく。車両の走行の一部が剝げながらも、宇宙センターへとたどり着く。敵の本拠地だというのに意外と静かな様子にアイリスは少し拍子抜けする。


「ステルス部隊の熱源あり。どうやら、見えない敵の対処に後手に回って籠城戦となっているようです」


「敵が引きこもって施設から出てこないってこと?」


「そのようです。まずは私がステルスアーマーで先行し、宇宙港のコントロールを奪還、ステルス部隊に後を引き継がせます」


「それなら、ボクたちは港とシャトルを抑えたほうが良いね」


「そうしましょう」


 3人は別れ、透明になったナナが警備用ロボットが行き交う施設内へと潜入する。熱源反応を見る限り、施設の内部にもステルス部隊は潜入していることが伺え、これなら施設の制圧も楽そうだと思いながらコントロールルームへと向かう。


「さてと、中東のときと同じようにやりますか」


 あの時の再現VTRでも見せられているかのように制圧されていく宇宙港。いや、今回はナナだけでなく他の機体もいるせいで、それよりもスムーズかもしれない。手はず通りにコントロールルームを奪取したナナはプロトアサルトに装備を変えて急いで港へと向かう。

 発射準備に取り掛かっているシャトルを護ろうと外で奮戦しているレイと、貴重なシャトルを破壊してでも宇宙行きを防ごうとする警備ロボたち。その頭上からアサルトの火器が火を噴き、為すすべなく破壊されていく。


「シャトル、発進準備が終わったわ!」


「了解!そのまま発進シークエンスに!私たちは外部にしがみつきます」


「大丈夫?」


「ボクたちが上空の敵を打ち落とさないとシャトルがおとされちゃうからね」


「信じるわよ!」


 シャトルが動き始め、徐々に速度を上げていく。その様子に気づいた無人戦闘機が迎撃をしようと旋回するも、セブンスセブンの手によって撃ち落される。シャトルが宙に浮き、はるか上空へとその高度を上げていく。


「セブン!」


「わかってます!」


 車体にしがみついたレイが手を伸ばし、セブンスセブンを捕まえようとする。徐々に速度を上げていくシャトルにセブンスセブンが少しずつであるが引き離されていく。


「ナナ、エーテルブースターを使うわ!」


「了解、エーテルブースター起動!」


 アイリスの魔力がエーテルに変換され、セブンスセブンに流れ込む。過剰なエーテル供給により、一時的にエーテルドライブの限界点を超え、機体性能が上昇する仕組みだ。それは後にG.E.E.Sによるリミッター解除へとつながる機構ではあるが、この時点の彼女はそのことを知らない。

 圧倒的なエーテルの光を放ち、シャトルの距離を縮めていく。あと100、80、50、20、3m……そして、ついにレイの手をつかむ。


「セブンの手をつかんだよ!」


「分かった。一気に行くわよ!」


 遥か上空へと向かう一筋の光。それはこの戦場にいる誰しもが眺めることができた希望の光。彼女たちが無事に帰還することを願って、国連軍たちは気合いを入れて目の前の敵に銃口を向けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ