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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE64 BREAK THE SKY(ACT2)

 作戦開始の期日が刻々と迫っていく中、叢雲博士とアイリスは作業台の上に置かれている携帯デバイスの電源を入れる。空中に映し出されたモニターにSTAND BYの文字が表示された後、メニュー欄が映し出される。


「多機能デバイスの動作良好……あとはこの受信装置をナナに取り付けるだけですね」


「エーテルブースターの動作確認をしたいところじゃが、もう時間は残されていない」


「大丈夫ですよ、私って本番に強いタイプですから」


 アイリスがデバイスを受け取り、セブンスセブンがいるであろう整備室へと駆け出していく。その様子を見送った叢雲博士はイスに深く腰掛け、ふぅと息を漏らし、時計を見る。地下にいるため、時間感覚が不明瞭になるが、外は既に真っ暗になっている時間帯だ。


「夜が明けたら人類存亡をかけた戦いが始まるんじゃな……」


 自分で言った言葉だが、まるで幼いころに見たB級映画のセリフのようだと思う。長引く戦いのせいか、それとも自身の開発したマシンドールが戦争に使われていることで、厭戦気分が生じたのかもしれない。だが、自分よりも若い者が、この時代の生まれさえない者が、必死になって動いている中で、そんな物思いに更けている場合ではないと、逃げ腰になっている自分に鞭を撃つ。


「この作戦が終わっても戦争は続く……やれることはやらねばならん」


 叢雲博士は終わったことも考え、マシンドール用の装備の図面を引き始めるのであった。



 ねじを締め終え、整備長が汗をぬぐっているところにアイリスがバタンと勢いよく扉を開ける。男くさい、油臭い、この部屋は女性などよほどのことが無い限り近寄らない場所なのだが、アイリスはお構いなしによく来ており、紅一点の彼女は短い期間ながらも多くのメカニックに覚えられている。


「ナナ、取り付け作業終わった?」


「ええ、終わりました。そちらの準備も問題なさそうですね」


「もちろんよ。なんたって決戦は明日だもの」


「まったく。あんなわけの分からないものを取りつけやがって。おかげで本来なら量産機と部品共有して楽々整備のはずが、コイツはオンリーワンの特注品状態だぞ。おまけに魔法だのなんだの。整備する側にもなれっての」


「ははは、それって私だけの責任じゃないような……」


「おもちゃ箱は片付けろって話だ。お前さんに文句言っても仕方ねえがな。今日はもう遅い、早く寝るのも仕事だ」


「でも、寝る前に新装備の状態を確認をしておかないと……」


「まったく。その年でワーカーホリックになるなよ。新装備はそっちの区画でムニエルが担当している」


「わかりました」


 ナナと一緒にトタトタと歩き始める。戦いが始まれば、基地内にいる整備士にすることはない。できることと言えば、この荒廃した世界にいるのかさえ分からない神にみんなの安全を願うだけだ。



 作業台に置かれている青黒い装甲を見ながら、パソコンにデータを入力しているムニエルに話しかける。


「ムニエルさん、装備はどうですか?」


「ああ、一応できた。作動は問題なし。だけど、大型スラスターの調整に手間取って、プロトアサルトと同じ武装をつけることができなかった。といっても、エーテルの消費量を考えると、使えるのはGブレードとGライフル、あとは実体剣くらいしか使えないから、あってもなくてもって感じだ」


「武装が少ない分、機動力は上がってそうですね」


「と思うだろう。宇宙空間っていう特殊な状況下だから、大気圏内よりも低下しているんだぜ。どっちかっていうと、速度の低下を抑えるための大型化ってところだ」


「……戦闘シミュレーションの設定を厳しめにしておきましょう」


「そうしておいたほうが良いかもな。こっちから宙域戦闘用装備(スターアーマー)のデータを送るよ」


 データを受け取ったセブンスセブンとアイリスが退出するのを見送ったムニエルは、気分転換に貴重なコーヒーを飲み始める。人類史上最大の試練を前にしているということもあり、この二日間は貯蓄してあった酒やタバコといった数多くの嗜好品の類を解禁している。今、彼が飲んでいるコーヒーもその一つだ。


「仕方がないとはいえ、世界の命運をたった一人の女の子に託すってのはな……これが小説とかなら、俺たちは子供に無茶を押し付ける情けない大人たちってところか」


 誰しもが子供の頃は夢描いていた自分が主人公の物語。だが、誰しもが英雄になれるような活躍ができるわけではない。それができるとしたら、ほんの一握りの人間だけだ。


「だけどな、端役にも意地があるんだ!」


 ムニエルは武器開発班を呼んで、実体剣だけでも装備できないかと提案する。突如の仕様変更だが、開発班も手持ち無沙汰になるよりかはずっと良いと思い、快く承諾する。歴史の本で決して語られることの無い彼らの小さな戦いは夜明け前まで続くこととなった。



 アイリスの自室へと戻ってきた二人。別れを告げた後、作戦開始まで戦闘シミュレーションをしようかとセブンスセブンが戻ろうとしたとき、待ってとアイリスに呼び止められる。


「どうかしましたか?」


「ちょっと一緒に寝てほしいかなぁって……これまでにない戦いでしょう。ちょっと緊張しちゃって」


「甘えん坊ですね」


 一緒にベッドの中に入る。二人で寝るには少々小さいが、アイリスはそんなことを気にしていないようだ。体はクタクタ、頭も疲れている。いつもなら目を瞑れば、すぐに睡魔に襲われるのに今日は中々襲ってこない。なんてあまのじゃくなんだろうと思うほどだ。


(やることはやった。でも、もし、明日の作戦が失敗したら……)


 そんな彼女を思ってか、不安を取り除こうしているかのようにセブンスセブンはアイリスの頭をなでる。


「大丈夫です。どんなことがあっても貴方を元の時代に送り返します」


「明日のこと、不安にならないの?」


「不安ですか。作戦成功率は限りなく0に近いですが、それでも遂行するのが私たちの役目です」


「それは……頭ではわかっているけど、間近になると不安になるのよ。本来いないはずの私のせいで失敗したらどうしようとか」


「貴女が、いえ、ここにいる誰かがミスをしたとしても責める人はいませんよ。ここにいる人たち全員が互いに全力を尽くしているのはわかっているのですから」


「でも……」


「大丈夫。私たちを信じてください」


 セブンスセブンがアイリスをぎゅっと抱きしめる。突然のことに、心臓がバクバクと音をたてるものの、次第にゆっくりとした鼓動に戻る。


「ナナ、本当に貴女って機械なの? 実は人間だったりしない?」


 あまりにも人間らしい行動に思わず言葉を漏らしてしまう。アイリスの言葉を聞いたセブンスセブンがきょとんとした後、苦笑しながら機械ですよと答える。


「前から思っていたけど、時々機械だってことを忘れるくらい自然だもの」


「そうでしょうか? 私から見ればレイの方も……」


「レイちゃんもレイちゃんだけど……この時代の技術力ってやっぱり変よ」


「そういわれても……」


 自分が前々から思っていたことを吐き出し、セブンスセブンが滅多としない困惑した表情をみて、どこかすっきりしたアイリスは再び目を閉じると、睡魔に導かれるようにぐっすりと寝始める。


「貴女が来てから、ここも一段と騒がしくなりました。こういうのを面白い人というのでしょうか」


 すやすやと寝ているアイリスを見て、残されたわずかな時間でもシミュレーターによる訓練をしようと、彼女の部屋から出るのであった。

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