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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE63 BREAK THE SKY(ACT1)

 ギースの衛星砲による北アフリカ消滅から数時間後、国連軍との緊急リモート会議が開かれた。時間に猶予が無い中で、遅きに失している軍の動きだが、何も始まらないよりかはマシだとS-FORCE代表の宇月と博士2人が参列した。だが……


「あれをさっさと破壊したまえ」


「馬鹿言え!宇宙への足も無い状況で衛星軌道上のものを破壊することなどできん」


「これもヨーロッパベースの貴様らが怠けていた結果だろうが!」


「何を言う!それを言うならオセアニアは何をしたというのかね。ただの穀潰しではないか」


「今は争っている場合じゃ……」


「黙れ!軍でもない民間もどきが!」


 責任のなすりつけ合いが始まり、中にはギースに命乞いをして降伏する案まで提出される始末。貴重な刻々と時間だけが過ぎていく中で、隣にいたヴェクター博士が眉間にしわを寄せながら服を引っ張り、退出を促す。貴重な時間を潰されるよりかはマシかと思い、叢雲博士にこの場を任せて宇月たちは一度席を外す。


「アレはいかん、いかんぞ。愚かな振る舞いをするなら商売のチャンスだが、今はそれどころではない」


「ええ。今は衛星砲の破壊……それに向けた準備を一刻でも早く進めないといけない」


「最悪はBREAK THE SKYをS-FORCEだけで実行せねばならん」


(だけど、そんなことが僕たちだけでできるのか……?)


 不安になりながらも宇月は作戦室にS-FORCEの主要メンバーだけを集め、これまでのいきさつを話していく。


「……移動に費やす時間と作戦時間を考えると、僕たちに残された時間は約40時間。それまでに空戦用簡易AIを完成させ、北欧ベースの戦乙女の部隊を起動させる」


「北欧ベースは協力してくれるのか?」


「ああ。あそこは僕の友人もいるからね。起動実験と評して援軍を送ってくれる手はずになっている」


「簡易AIはセブンスセブンのデータを流用する。機密事項の塊を丸ごと使うのはご法度だけど、今は時間が惜しい。空戦用AIの開発班はセブンスセブンのオーバーホールが終わり次第、データを受け取り、簡易AIの完成を急いでくれ」


「了解!」


「武器開発班は宇宙での戦闘を可能にする装着武装の開発。最悪、ぶっつけ本番で1機分でも構わない」


「1機分ってことは……」


「ああ。セブンスセブン、そしてアイリスとレイには衛星砲を破壊する任務を与える。君たちがこの作戦の要だ」


「私たちが……」


 かつてブリュンヒルデから聞いたこの時代の行く末を決める重要な戦い。彼女の話ではナナ一人で解決したように語っていたが、実際は物語の裏で多くの人たちが動き、活躍している。この時代の人間でないアイリスも『今は』この時代の人間。傍観するなどという甘い考えは初めから存在せず、出す答えはたった一つだと覚悟を決める。


「わかりました。衛星砲を破壊します」


「作戦はBREAK THE SKYに乗っ取り、アイリスたち3名を宇宙港まで送り届け、シャトルを強奪したのち、宇宙へと上がる。そして、衛生砲にたどり着き破壊する。制圧する必要はないから最小限の戦力で済むはず」


「待ってくれ。それなら、あそこにとらわれている民間人は?」


「…………最悪の場合、ギース軍が彼らを盾にする戦略がとられることもある。それでも……」


「会議が終わったぞ!」


「先生!」


「バロン軍曹、今は大尉だったか。現場指揮官である彼の口添えもあったおかげで、国連軍も正式に強力してくれる」


「よかった~作戦をもう一度見直す必要はあるけど、軍の協力が得られるなら……」


「ただし、指揮を宇月君に一任するのが条件じゃ」


「えっ……?」


「軍は失敗した場合の責任を誰もとりたがらなくてのう。業を煮やした軍曹君が、『てめえらの下につくぐらいなら、S-FORCEの下についた方がマシだ』と啖呵を切り始めてな。これでは軍が内部で崩壊するのではないかという暴れっぷりじゃった。ならばと、宇月君が作戦失敗の責を取るとワシが提案しておいた。すると、指令代理とかいうポジションを作ってくれたというわけじゃな」


「待って。僕はただの科学者。軍略家でも策略家でも……」


「よっ、指令代理!」


「指令代理に昇進したんなら、俺たちに何かおごってくれるんですよね」


「指令代理、秘蔵のビールとかワインとかねえの」


 アレックスたちが茶化すように宇月を指令代理と言い始め、先ほどまでの緊張感はどこへやら。場の雰囲気はすっかり緩くなってしまう。


「ああ、もう!作戦が成功したら青空の下、打ち上げでもしよう!どのみち僕らは勝つしか道は無いし、食料の備蓄を少しばかり崩しても文句でないだろ!勝負の2日間、君たちの健闘を祈る!」


 作戦会議は解散となり、各々が持ち場へと帰っていく。そして、アイリスは武器開発班と共に新造アーマーの制作に取り掛かっていく。彼らの目の前にはセブンスセブン用のプロトアサルトアーマーが置かれ、腕組みをしながら班長がメンバーに話しかける。


「ベースは大気圏内で飛行可能なプロトアサルトで良いだろう。予備パーツもあるしな。だが、問題は宇宙空間で活動しないといけないってところだ。アイリス、何が問題分かるか?」


「えっ~と、確か真空状態、大気が無いから宇宙線の影響を大きく受けるのと……」


「エーテルが薄いことだ。わかりやすく言うなら、大気圏内で動くように作っている装備を宇宙に持っていくと、短時間ならともかく長時間運用すればガス欠を起こしてしまう」


「エーテル装備はこういうときに不便なんですよね。旧来の装備はエーテルの濃度に依存しないから安定するけど、ウチにそんなものはない。対策を講じないと」


「でも、宇宙開発はしていたんですよね。ナナから月まで行ったって聞いたことがあります。だったら宇宙用の装備を取り付けるだけでよさそうな……」


「シャトルほどの大きさなら大型のエーテルドライブを積む余裕はある。だが、マシンドールの運用となると、装着武装にエーテルドライブを追加しないといけない。つまり――」


 班長がホワイトボードにキュッキュッと絵を描いていく。完成した絵には巨大な凧を背負っているようなセブンスセブンの絵が描かれる。


「大型になりすぎて戦闘行為は実質不可能。つまり、我々の任務は残り二日弱でエーテルドライブ機構の小型化までこぎつけないといけないということだ」


「無茶苦茶だ、そんなの……」


 それを聞いた隊員が困惑した顔を浮かべる中、アイリスは真剣な表情でそれが可能かどうか考えていた。


「……叢雲先生のエーテルブースター。アレなら最小限の装備で必要なエネルギーを確保できるかも」


「俺も聞いたことはある。ワイヤレス充電の応用で別のエーテルドライブからエネルギーを供給する装置。確かアレもエーテルドライブの小型化が課題になっていたと記憶している」


「それを解決するために魔石を使えないかと相談されたことがあって……」


 アイリスがカバンの中から魔石を取り出し、隊員に見せる。ダイヤモンドのように煌めいているソレは一見すればただの宝石にしか見えない。


「ナナが言うにはこれもエーテルドライブと同じ働きをします。ただ通常のエーテルドライブと違って魔力を送り込まないといけませんが」


「様々な試作品を取り扱ってきたセブンスセブンと言ってもさすがに魔力? とやらは使えないだろう。何も解決は……まさか」


「私にとっては使い慣れたエーテルドライブの装置。これをエーテルブースターに組み込めば、私の魔力がエーテルに変換され、ナナの出力上昇につなげることができます」


「……問題は出力だな。いくら小さく、取り回しがしやすいと言っても送られるエネルギーが少量なら意味が無い。どれだけのエネルギーが出せる?」


「実験データならここに」


 アイリスは手持ちの携帯デバイスを班長に渡し、パソコンにそのデータを入力をしていく。そして、空中モニターに大きい翼が生えたセブンスセブンの姿が映し出される。


「プロトアサルトよりもやや大きくなるが、戦闘に支障をきたすほどでもない。これならいける!アイリス、君は叢雲博士の手伝いを。我々はこの実験データをもとに装備を改造していくぞ」


「了解!」


 隊員が元気よく返事をし、それぞれ持ち場に着き始める。そして、アイリスもまた期日にまでにエーテルブースターの完成を急ぐのであった。

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