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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE60 SNEAK

 レイが上空からザイードたちがいる街を眺める。ザイードの攻撃に仕掛けるのと同時にセブンスセブンの潜入作戦を開始させる以上、彼らの監視の行き届かない上空から眺望でき、機動性に優れているレイが監視役に選ばれるのは必然であった。また、機械兵に攻められたとしてもすぐさま救助に入ることができるのもその理由の一つだ。


「もうすぐ日が沈むころ合いだねえ。今日も動き無しかな……ん?」


 レイが退屈そうに手足をばたつかせているとき、武装車が街の外へと出ていくのが見える。数台程度ならば威力偵察やパトロールの類だと思ったが、次から次へと出ていく武装車を見る限り、街に残っていた全勢力が投入されたのではないかと思うほどだ。


「防衛戦力も全て投入の神風特攻なんて今時流行らないよ!急いで知らせないと」


 レイは急いで秘匿性の高い短距離通信を使い、ザイードたちが動き出したことを伝える。それと同時にステルスアーマーを装備したセブンスセブンが姿を消して、基地に近づいていく。


(まだ日が沈んでいないこの時間帯はまだ気温は高く、私の熱源は気温でごまかせる。ですが、日が沈み気温が下がれば熱源センサーに引っ掛かるリスクが増える。日没までに基地内に侵入しなければ)


 物陰に隠れながら、パトロール機体の巡回コースを見極めつつ基地へと近づいていくセブンスセブン。パーフェクトステルスがあると言えども、実戦で使うのはこれが初めてだ。予期せぬ不調でパーフェクトステルスが解けて、目の前には無数の敵という状況もありうる。

 装備品の力を過信せずに、敵に気づかれないように注意を払いつつ行動する。スニーキングの基本に忠実に、なおかつ迅速に。今の彼女に課せられたミッションは些細なミスも許されないのだから。



 レイと合流したアイリスらもザイードと基地から出た機械兵との交戦場所へと急いで向かう。窓から身を乗り出したモハメドがバズーカ砲で歩行しようと足を上げた機械兵の軸足を狙い、爆風で転倒させる。その隙を逃すほど、ザイードは愚鈍ではない。彼らの憎しみの籠った一斉放射によって、倒れた機械兵はただの鉄くずへとなり果てていく。


 地上でアイリスたちが踏ん張っている中、レイは上空を我が物顔で飛んでいる戦闘機の機銃やミサイルを避けながら、片翼に反撃の一発を入れて黒煙を上げさせる。


「墜落するならこっちに堕ちてもらうよ」


 無事な方の翼に砲撃を加えて、その爆風で落下する軌道が変わる。墜落していく先には前面にいるイージスを突破できずに立ち往生しているザイードの部隊らが見える。辛くした戦闘機がイージスの後方に隠れながら砲撃を行っていた機械兵の軍隊に突っ込み、道連れにしていく。

 その攻撃に何か気づいたのかザイードの部隊が射角を変更し、イージスの頭上を乗り越える砲撃を行っていく。空高く打ち上げられた砲弾は地球の重力に引かれ、機械兵の頭上へと落ちる。付け焼刃がゆえに命中率こそは低いものの、曲射攻撃でゆっくりではあるが機械兵の数は減っている。だが……


「くっ……数が減らん!」


「おっさん、むしろ増えてねえ!?」


「そりゃあそうだろうよ。俺たちは陽動だからな」


「でも、これだけの数があの基地内に入り切れるの?」


「噂じゃあ、地下に生産工場でもあるんじゃないかって話だ。真偽は知らんがな。喋っている暇があるならもう少しスピード上げろ!充填した武器をよこせ!返事は!」


「「はい!」」


 2人の元気のいい返答を聞きながら、モハメドはスコープから目を離さず、転倒している獲物を狙い撃つ。だが、横で同胞が登場している車が一機、また一機と爆発していく中で歴戦の勇士である彼の額にも一条の汗が流れる。


(時間稼ぎしようにもこのままだと全滅だ。もって1時間、いや30分もてばいい方か)


 レイが制空権を握ろうと、空を飛びまわる戦闘機を惹きつけてくれているため、一方的な戦いにはなっていない。とはいえ、このままでは戦いのいく末は既に決まっているようなものだ。この結末を変えるにはたった1機で基地を制圧すると言う馬鹿げた任務が成功するしか方法は無い。


「あっちと比べればこっちのほうがはるかにマシか。少し後退しろ、基地に近づきすぎている」


 勝ち目のない戦いよりかは気が楽だと思いながら、アイリスがイージスの脇を通り抜けてくれたおかげでがら空きとなった機械兵の頭部に光線銃を叩き込み、ゆっくりと倒れるのが見える。こちらも無茶な出力に耐えられなかった光線銃を投げ捨て、別の銃を手に取る。

 S-FORCEが事前に用意しておいた武器とはいえ、その量はあくまでも自衛分だけであり、基地の制圧までは考えられていない。相手に有効な武器が限られている中、武器が先に尽きるのが早いか、こちらが先に全滅するかの2択しかない。


「早く戻ってきやがれってんだ!」


 モハメドは文句を吐きながらも、一人で潜入している彼女の身を案じ、神に祈る代わりに引き金を引き続ける。




 一方、そのころ。セブンスセブンは機械兵の出撃口から、基地内へと侵入していた。


(第2陣がさきほど出発……到達時間、彼我の戦力差を考えると彼らが持ちこたえるのは良くて15分。パーフェクトステルス……過信はよくないですが、開発チームを信じるしかありませんね)


 覚悟を決めたセブンスセブンは機械兵の脇を堂々と走り抜ける。奥の通路は人間が通れるサイズの通路なため、機械兵が入ることは不可能。そこまでの距離を姿を消しながら、誰にも悟られずに入り込む。

 基地内の通常通路には武骨なデザインの人型の警備用のロボットが巡回しているが、手に持っているのは対人用の機関銃。対機械兵用に作られたマシンドールに対抗するにはいささか火力不足と言ったところだ。


(万が一、戦闘になっても強行突破は十分に可能。建物の大きさから、機械兵が建屋を蹂躙闊歩しているわけではないと見抜き、この作戦を……)


 策略家でもないアイリスがそこまで深く考えているわけでもなく、ただどんな逆境下でもひっくりかえしてきたナナのことを信じているだけである。セブンスセブンが考えているようなことはこれっぽちも考えていない。

 セブンスセブンがアイリスのことを過大評価し始めている中、外で激しい戦闘が行われているにもかかわらず、見張りがピタリとついているいかにも重要そうな一室を見つける。巡回している警備用ロボットの数も多く、彼らの目を掻い潜るのは不可能なほどだ。


(ナイフ1本で彼らに気づかれずに制圧することは不可能。ならば!)


 意を決し、余計な重荷になるステルスアーマーを解き、ノーマルスーツに着替えたセブンスセブンは扉に向けてエーテルキャノンを放つ。基地内に突如として現れた彼女に対し、警報が鳴り響き、各フロアから警備用ロボットが集まり始めるが、もう遅い。エーテルキャノンで出来た穴に飛び込んだセブンセブンがGシールドでその穴を防ぎ、部屋内にいた武装も持たない作業用ロボットを即座に鎮圧する。


「ここは……コントロールルーム。各階のシステムに機械兵の指示……地下にある工場への指示もここで一元管理されている。効率的ではありますが、内部に忍び込まれたときのことは考えられていない甘いセキュリティ。それだけ慢心していたというわけですか」


 ならば、そこをつくまでと内部のシステムを弄っていく。背後で銃撃の音が聞こえるが、機械兵の攻撃すら耐えうる鉄壁のバリアが、警備用ロボットの火器で破壊されるわけもなく、ただ無駄弾を討っているに過ぎない。とはいえ、友軍のことを考えれば悠長にはしていられない。


「……バルブ全開放、時間設定完了。後は外にいる機械兵に侵入者が来たことを伝え、基地に戻らせるように指示を通達。残るは……」


 後ろを振り返ると、いまだにGシールドを打ち破ることができずにいる無数の警備用ロボットの姿があった。普通の侵入者ならば、バリアを解除したとたんにハチの巣どころかミンチになるだろう。だが、ここにいるのは世界屈指の性能を誇るセブンスセブンだ。


(エーテルキャノンを撃つと同時にGシールドを解除。一気に駆け抜ける!)


 エーテルキャノンによって消し飛んだ隙間を走り抜ける。後ろから放たれる機関銃は無視し、前面にいる警備用ロボットをGブレードで斬りつけながら前へと進む。スクラムを組んで逃がさんとしている相手にはエーテルキャノンの砲口を向けて吹き飛ばし、警戒して散開している相手は無視するかGブレードで最小限の敵だけ倒していく。

 たった1機で無双していたセブンスセブンだが、機械兵の発射口にたどり着いた途端に機械兵から銃撃の洗礼を浴びせられ、物陰に素早く退避する。彼らの背後には無数の機械兵が続々と基地に戻っていく様子が伺える。


(コントロールルームの指示通りに動いてくれましたね。これで外にいる友軍の全滅は避けられたはず。1機の損失で基地1つ潰せたのであれば、十分な戦果と言えるでしょう)


 残り時間もあとわずか。侵入者がそこにいるとわかっている以上、この絶え間ない銃撃をやめる理由は無い。仮にステルスアーマーで姿を消したとしても、銃撃の隙間を縫って移動することはできない。あとわずかな距離だが、セブンスセブンは詰みという状況だ。


「こういうとき、人は走馬灯というのを見るのでしょうが、機械である私は見ることが――」


【ナナ!】


(――!?)


 セブンスセブンの脳裏に一瞬だけ浮かぶアイリスの顔と声。先ほどの警備用ロボットの銃撃を受けてのシステムエラーかと思ったが、システム内に異常は見受けられない。機械に聞こえない、見えないはずの一瞬の幻聴と幻覚だが、諦めていたセブンスセブンを奮い立たせるには十分だった。


「そうでしたね。貴女を未来に送り届けるまでが私の任務。ここで尽きるわけにはいきません」


 理由は何でもいい。今は立ち上がる時だと言い聞かせ、セブンスセブンは銃弾の嵐に飛び込む。


「武装に回しているエーテルを全て装甲の強化に!名付けてディフェンシブモード!」


 赤く発色したセブンスセブンが駆け出しで前進する。鳴りやまない銃弾が彼女の行く手を阻むがそれをものともせずに、着実に歩を進める。




 外で戦っていたアイリスたちは突如として基地へと帰っていく機械兵を呆然と眺める。侵入作戦は失敗したのか、それとも機械兵側に何かトラブルでも生じたのか、理由もわからぬまま立ち尽くしていた。

 それからしばらくして、地下から鳴り響く轟音と爆発。地震かと思うほどの大きな揺れは、基地の残骸すらも地中へと飲み込んでいく。


「ナナ!」


 アイリスは通信機に向けてセブンスセブンの名を呼ぶ。先ほどの爆発の影響か、聞こえるのはザッピング音ばかり。それでも呼び続けると……


【ザッ、ザッー――、こちらセブンスセブン。近くにガスを充満させ、スパークを起こさせるように機械の設定を変えていたのですが、思った以上に火力がでました。こちらも損傷が激しく、指定するポイントまで足をくれると助かります】


 アイリスは無事だったセブンスセブンの吉報に胸をなでおろし、急いでその場所へと向かう。

 たった1機による基地の攻略戦は敵・味方双方に大きなインパクトを残した。特にこの知らせを聞いたギースは自身が住むセントラルタワーの構造を大きく変える羽目となり、他地域への侵攻を遅らせ、反撃の隙を与える要因となってしまうのであった。

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