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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE59 DECISION

 カシムを連れ戻し、セブンスセブンと合流したアイリスたちに向けられたのは敵意の目であった。セブンスセブンの攻撃で死者を出さなかったとはいえ、修理すらままならない状況下で機械兵に対抗しうる武装車を失ったのは痛手でしかない。


「お前らはこの街から出ていけ!」


「待ってください、話を――」


「誰が国連の話を聞くか!!」


「おまえらのせいで負けたんだ!」


 街の住民たちは誰もアイリスらの聞く耳を持たない。仮にセブンスセブンが見捨てたのであれば、おそらくは武装車が1台も帰っては来なかったのだから、それと比べればはるかにマシな損失ではある。

 だが、ザイードに良いように吹き込まれた彼らに理性的な判断は難しかった。いや、まだ言い争っているだけ理性的ともいえる。いつ彼らの怒りが暴発して、暴力沙汰になってもおかしくない状況下でモハメドが彼らとアイリスの間に割って入る。


「よさないか。彼女たちも何らかの事情があったのだろう。まずは彼女たちの言い分を聞いてからでも――」


「うるせえ!あいつらは敵だ!!」


「そういえば、アンタ、妙に連中の肩を持つな……」


「国連のスパイじゃねえか?」


「そうだ!そうに決まっている!」


「なに馬鹿なことを……!?」


(この流れはまずいんじゃない?)


(ええ、今すぐここから立ち去ったほうが無難です)


 小声で話したアイリスたちはすぐさま止めてあった装甲車に乗り込み、その手を伸ばす。その手を取るのを一瞬ためらったが、この状況下ではやむなしとその手を取り、後部の座席へと移動する。

 子供のカシムだけでも街に返したいところだが、この激高した状態ではただですまない可能性がある。彼ら5人を乗せた車はぐんぐんと街から遠ざかっていく。追手が来るのではないかと緊張しながらハンドルを握っているアイリスにモハメドが話しかける。


「そのまま北上してくれ。今では廃墟の街だが、この車を隠すくらいの建物はある。それにあそこは奴らの索敵コースからは外れている。そして、ザイードはこちらに刺客を送り込むくらいなら、ギース軍に再度アタックを仕掛けるタチだ。追手のことは考えなくてもいい」


「あ、ありがとうございます」


「礼は言わんでいい。それよりも今後のことについて話すべきだろう」


「そうだよね。ボクたちの元々の目的っておじいちゃんの研究所の確保。ギース軍も一度は追い払ったし、後は知らぬ存ぜぬを決めても問題は無いんだけど……アイちゃんはそんなことしないタイプ」


「当たり前よ。それに前線基地が近くにあるなら、研究所の防衛も難しくなる。あの基地の攻略は私たちにとっても無視できないことよ」


「でも、お姉ちゃんの機械兵ってあいつらをバサバサッ倒していたじゃん」


「局地戦なら勝てるかもしれんが、最終的に戦いは数で決まる。少数の戦力が大局を制するには奇襲しか無い」


「ですが、その奇襲はイージスによって封じられています」


「結局そこよね。私たちが警戒網に一度入って、戦闘も行ったから、相手は警戒するだろうし……」


「ごめん……」


「過ぎたことは気にしない。問題はこれからどうするかよ」


「レーダーに引っ掛からない方法か……この車にステルス機能とかは無いのか?」


「ステルス性能は高いけど、完全に映らないわけじゃない。それに光学カメラにはばっちり映るから、近づいたらアウト」


「姿が消える装備など夢物語にもほどがある」


「そうね…………あっ!?」


「アイちゃん、何かあった?」


「パーフェクトステルス。この前、ムニエルさんが新しく開発したって言っていたわ」


「しかし、あれはまだ武装が完成していない未完成品のはずです」


「武器はナイフ1本しかないけど、ステルス性能は完成しているから、潜入とかに使う分には問題ないはず」


「……ナイフ1本で基地を制圧しろと?」


 セブンスセブンが何を言っているのだと言わんばかりにアイリスに冷たい視線を送る。だが、そんな無言の抗議は彼女に届くはずもなく、力強く断言する。


「ナナならできる!!」


「いくらなんでも無茶だ」


「考え直したほうが良いよ、お姉ちゃん!」


(アイちゃんって結構無茶ぶりするよね……)


 3人がガヤガヤとアイリスを止めようとしているのを見て、生暖かくレイは彼らを見つめていた。抗議するだけ無駄。決めたことはよほどのことが無いと変えることは無いとわかっていた。それが良い方向に働くのであれば良いが、悪い方向に働くこともありうる。そうならないようにレイは彼女を支えないといけないと思っていた。


「最悪、内部でばれても良いからステルスを解いて、通常火器で破壊工作すればいいよね。コントロールルームだとか管制室とかを破壊できればなお良しだと思うんだけど」


「破壊工作による混乱の隙を突いての脱出……苦労しますが、ナイフ1本制圧よりかは現実味があります」


「そうなると俺たちの役目は潜入中に奴らの目をこちらに引きつける陽動部隊ってことになる。俺たちの戦力だけでは陽動は難しい。やはり、ザイードの協力は必要だろう」


「でも、おっさんが力を貸すなんて天地がひっくり返ってもあり得ないぜ」


「ああ、だから俺たちは利用させてもらう」


「どういうこと?」


「兵糧の面から俺たちが籠城戦を決め込むのは不可能。ザイードの性格からも応急処置が終われば、間違いなく攻撃を仕掛ける。これが最後のチャンスだと焚きつけてな」


「じゃあ、止めないと!」


「逆だ。俺たちはその攻撃の最中にステルス機を送り込む。内部での破壊工作をし、基地機能を失って右往左往する機械兵を各個撃破!いくらザイードと言えども、戦場ならば敵の敵を討つ暇はない」


「おっさんの部隊を囮にするってことか!?」


「あくどいね~」


「初めに言っただろう。敵の敵は利用できるとな。大まかな道筋はたてたが、どうだ?」


「それが一番よさそう。ステルスアーマーは秘匿通信で転送してもらえるようにします」


 車内での作戦会議が終わるころに、アイリスは廃墟になったビルの中へと車を止める。街のはずれにあった建物のせいか、すぐに建物が崩落することは無さそうだ。

 今日はまだ日が昇り始めたばかり。ザイードがことを起こしてから、ギース軍の基地に向かっても十分に追いつける距離だ。つまり、ザイードが動かない限りはこちらは完全に暇を持て余している。


「ちょっと街の中、見に行きます」


「……そうか。長い間運転していたんだ。戦略価値もないところに敵はいないと思うが、護衛1人くらい連れていけ」


「それでは私が行きましょう」


「ありがとう、ナナ」


 セブンスセブンとアイリスが街の中心部にむかって歩いていく。中心部に行くにつれて、原形をとどめていた建物の数は少なくなっていき、目の前には爆弾でも投下されたのか巨大な窪みがあちらこちらに見受けられる。アイリスが近くにあったがれきの影から、壊れた子供のおもちゃを拾い上げ、ぽつりとつぶやく。


「話には聞いていたけど……ここの人たち、無事であってほしいわね」


「ええ、そうですね」


 アイリスはかつてはあったであろう賑わいも人影もすべて消え去ったこの光景を忘れないように目に焼き付ける。元の時代では機械兵とマシンドールの差異はあれど過去と同じく、機械が帝国周辺の国々の人々と戦っている。まるで過去にあった出来事をなぞらえるかのように。


(ナナの言っていた鋼鉄戦争……私たちの時代で繰り返すわけにはいかない)


 元の時代では帝国からの自衛にとどまっていていた三か国同盟。まだこちらから攻撃を仕掛けることは無かったが、D4ミサイルの件、そして、戦争の歴史は繰り返すと言わんばかりの機械による侵略行為。対話による和平交渉では到底解決できないところまで来ていた。おそらく、元の時代に戻ったら、アイリスは愚かかもしれない重大な決断をしなければならないと思った。


 だけど、今のアイリスはS-FORCEの一員だ。たとえ、この時代の戦争はS-FORCEの人たちが止めることを知っていたとしても、この時代にいる間は全力を尽くし、元の時代のことはそれからだ。

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