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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE57 FIRE

 うす暗い地下へと案内されたアイリスたち。そこには石のテーブルの前で男が数人、敵視しているような眼光でコチラを睨めつけている。だが、獣王や魔王の威圧感と比べると同族なだけに生ぬるくさえ感じるほどだ。アイリスは男たちの視線にひるむことなく、空いている席へと座る。


「国連からの援軍と聞いたが、こんなガキ1人か。ずいぶんとケチ臭いんだな」


「俺たちを殺すためには何百倍の人材を送り込むくせにな」


「二人ともよさないか。ここで俺たちが言い争っても機械兵の数が減るわけでもない」


「それもそうだが、国連の連中と手を組むのは反吐が出る」


「俺たちだけで十分だ」


(相当恨みを持っているわね。当然と言えば当然だけど)


 アイリスは車内で聞いた話でも、内部に問題がまったく無いとは言えないが、周りの状況に大きく振り回されていることは理解している。そして大義名分はあれど、彼らをまるで新兵器の実験台のように扱ってきた国連軍に嫌悪感を抱くなというのは無理な話だ。


(といっても、彼らの協力なしでギース軍の基地は落せない)


 かつて少数の戦力で自身の国を取り戻したことはあるが、今回はあの時とは違い、内部が二分化されて無い機械だけの兵隊、航空戦力の乏しさがあげられる。機動力が無い以上、奇襲を仕掛けるのは難しく、仮にできたとしても失敗すれば対策をとられてしまうことも考えれば、攻撃を仕掛けるチャンスは恐らく一度きり。

 たった1回のチャンスをものにするにはたとえ会って間もない人に「死ね」と命じるような覚悟が必要になる。そのような冷酷な覚悟を決め、この交渉にたてるのかアイリスは自身に問いただす。


(…………違うわ。死なせるために戦うんじゃない。生きるために戦うのよ。殺すような作戦は間違っている)


 それはより困難な道。お花畑だと笑うのであればそれでいい。だけど、目指すべき目標がそれだと思うなら、その道を選ぶのだとアイリスは決意を固める。


「国連があなた方に何をしてきたのか私には想像できません。ですが、ここは互いに手を取り合い――」


「断る!」


「……私たちと手を組まなくても基地を落とせる自信がおありだと?」


「当たり前だ。何のために命を懸けて戦っていると思う」


「そうですか。では私たちは後方で眺めていれば勝手に基地が陥落すると言うことですね。なぜ、今までそれができなかったのか教えていただけると今後の作戦の立案に生かせるのですが……」


「そ、それはだな……」


「まだ作戦に必要な条件がそろっていないのであれば、私たちに作戦の指揮を任せてください。必ずや陥落させてみます」


「何か策でもあるのか?」


「あります!(無いけど)」


 ここまで来たらハッタリを貫き通すしかない。今やるべきことは、彼らと手を結ぶこと。多少の嘘はバレなければ問題ないのだと言い聞かせる。


「それでどんな策か聞かせても?」


「その策が可能かどうか地形や気象条件などのデータを検証する必要があります。そちらの負傷者も傷がいえるのに時間は必要でしょうから、数日……いえ1日だけでも待たせてもらえないでしょうか」


「……ザイード、彼女がそう言っているのであれば1日くらい待ってやるのはどうだ」


「明日の日が沈むまでにここに戻ってこい」


「ありがとうございます」


 時間は稼いだ。あとはハッタリを現実に変えればいい。そう思いながら、この日の対談は終わりを告げる。装甲車の中へと戻ったアイリスたちは、今後どうしようかと話し合っていると、こんこんとノックされる。


「これから作戦を立てるつもりだろ。現地の人間が居たほうが立てやすいと思わないか」


「助かります。えっ~と……」


「モハメドだ」


「私はアイリスです。こちらがレイちゃん、そして――」


「知っている。国連の広告塔の機械人形、セブンスセブン。それくらいは俺たちの耳にも入っている」


 どうやら自分が思っているよりもナナの名は広まっているようだとアイリスは思った。そして、モハメドが地図を広げ、バツ印の書いてある地点をトントンと叩く。


「ここに奴らの基地がある。付近に他の施設が無いから、敵の援軍が来ることは無い。だが見晴らしが良い分、こちらは隠れながら接近することは不可能だ」


「このあたりは砂漠が多いと聞きました。砂嵐で身を隠すのは?」


「そんなことをしたら、生身の俺たちがお陀仏だ。それに、ここには巡回用の機械兵イージスの目がある」


「イージス?」


「火器系統を減らした代わりに背中にドーム状の装備を背負った機械兵のことだ。レーダー系が強化されているのと全方位のバリアが張れる。厄介な相手だよ」


「弱点は?」


「あればとっくに倒している。まあ、どういうわけか基地周辺から離れることは無いから交戦することは無いのが救いだ」


「う~ん、もしかするとボクと同じ問題があるのかも」


「高出力がゆえに戦闘時における燃費の悪さ……だったら長引かせれば倒せるかもしれないけど」


「こちらの人的被害を考えると避けたいところだな」


「つまり、今の運用をしている限りは実質的に弱点は無いということですね」


 モハメドの話を聞いてどん詰まり感が漂う。さて、どうしようかと考えているとどたどたと足音が聞こえる。外を見ると子供たちが数人、どんどんと扉を叩いている。


「どうかしたか?」


「おじさん。カシムの奴がどこにも居ないんだ」


「また家出か。ほっておけ、明日、明後日には戻ってくるだろ」


「今度は違うんだよ。隠れ家も滅茶苦茶になったし……」


「大人たちは誰も探そうとしないし」


「おじさんだけが頼りなの」


 子供たちの言うことにやれやれと言った表情で肩をすくめる。明日は交戦するつもりはない上に、復興作業は他の者に任せても問題は無い。明日だけだぞと答えようとしたとき、こちらに向かってくる男性がモハメドを呼びかける。


「今度は何だ?」


「管理していた銃が1丁足りないんだ」


「あれだけ激しい戦闘だ。紛失してもおかしくなかろう」


「でも、戦闘直前には確かにあったはずなんだ」


「1人いなくなった子供に、1丁足りない銃か……まさかな」


「あの、もし最悪なケースを考えているなら、私たちが探しましょうか?」


「ん? アンタらずっと働いていただろう。今晩くらいは休め」


「この方の言う通りです。仮に少年兵1人失ったところで戦力は大きく減りません」


「大小の問題じゃないわ。失われようとする命があるなら助ける。人として当然よ」


「たった一人の、ほぼ見知らぬ少年のために己の命を懸けると?」


「ええ。命を惜しんで立ち止まって悔やむくらいなら、私は前へと進む。他の誰のせいでもない、それが私が選んだ未来(みち)よ」


「合理的ではありません」


「そりゃあそうよ。人は合理的には動かないわ。でも、だからこそ選べる未来がある。なんでもかんでも合理的に選んでいたら、それこそ機械同然、ううん、それ以下よ」


 セブンスセブンはアイリスの言葉にハッとする。戦争前の人類はAIやドローンのサポートを受け、在宅からでも多くの仕事ができ、一部の労働者を除けば現場に出ることはまれとなっていたと聞く。そして、戦争すらも遠く離れた安全圏からボタン1つで解決するようになっていた。

 これはまさに合理主義の行きついた果てではないかと思うほどだ。科学の進歩が人類を破滅へと追いやったのであれば、この戦いに意味はあるのかと思ってしまう。


「………………」


「ナナ、どうしたの?」


「いいえ、何もありません。ドクターアイリスがそのような判断をするのであれば、私はそれに従うまでです」


「まあ、アイちゃんならそうするもんね」


「モハメドさん、カシムくんの行き先について心当たりは?」


「さあな。ガキ共が最後に見たのは東側の地区……ここから道なりに歩けばギース軍の基地はあるが、さすがに単身で潜り込もうとは思っていないだろう」


「でも手がかりはそれくらいしかない……基地周辺を偵察しつつ、カシムくんを捜索しましょう」


「おけー、それでいこう。セブンもそれでいいよね」


 セブンスセブンは若干不服そうな顔をしながらも頷き、同意する。地元民であるモハメドも同行してほしいところだったが、街に再び機械兵たちが襲ってくるかもしれず、前線指揮官である彼が街から離れるわけにもいかないため、3人だけで捜索することとなった。




 一方、そのころ、カシムははあはあと息を吐きながら、荒れた道を走っていた。遠く離れた場所に見える人工の光。彼が生まれ育った街には墓標のようにギースの基地が建っている。手元には大人たちが機械兵を倒すのに使っている光線銃。


「ザイードのおっさんから貰ったこの銃があれば、機械兵の奴らを倒せる。パパやママの仇をとれるんだ」


 未熟な子供である彼は知らない。機械兵1機を倒すのに大人がどれだけ苦心をしているのかを。武器の性能だけで勝てるのであれば、とっくの昔に人類は滅んでいることに。

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