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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE56 MASCHINE ARMY OR DOLL

 非政府組織の基地まであとわずかといったところで、轟音が鳴り響く。それが意味するのはもはや明白であった。


「急ぎますが、この悪路ではまだ時間がかかります」


「わかった。レイ、先行して助けに行って!」


「おけー。空なら悪路なんて関係ないもんね」


 車から飛び出していったレイが猛スピードで上空を駆ける。グングンと勢いを増して、装甲車がミニカーのように小さくなって姿が見えなくなった頃、火の手の上がる廃墟へとたどり着く。そこから聞こえるのは銃撃戦の音、人々の怒声だ。


「まずは戦闘機から!」


 レイは制空権を抑えようと数機の小型戦闘機へとライフルを向けていくのであった。




「負傷者は一度下がれ!足手まといだ!」


 地上にいる非政府組織のリーダーを務めているモハメドは周りに指示しながら、こちらに向かってくる機械兵の関節部を狙いすましていく。放たれた光線が装甲の隙間にあたり、溶解させ、片膝をつかせる。

 いかに機械兵が自己修復機能を持った強固な装甲を身に纏っていると言えども、関節やフレームはその限りではない。ましてや巨体となればその的は必然的に大きくなる。撃破できずとも、動きを止める程度であれば違法改造した光線銃で対処は可能だ。


「こちとら、機械兵との戦いになれているんだよ!」


「油断するな、次はB-5ポイントの――」


 上空からの銃撃に周りにいたモハメドたちの仲間がずたずたに引き裂かれ、肉塊へと変貌する。運よく助かった彼は落ちていた仲間の遺品である銃を拾い上げ、次のポイントへと単身向かう。上空からは逃がさんと旋回してきた戦闘機が彼をロックオンする。


「ちっ、当たるか!」


 上空にいる戦闘機に一泡吹かせようと銃口を向けようとした時、片翼に攻撃を受けた戦闘機が郊外へと墜落していく。


「援軍か!」


 憎むべき国連軍傘下の組織とはいえ、ヴェクター博士が身を寄せているS-FORCEからの援軍が来たと身を隠しつつも喜ぶ。しかも援軍に来たのは虎の子である飛行タイプのマシンドール。たった1機なのは不満ではあるが、アレがきたことで戦闘機による地上への攻撃が止んだのは僥倖であった。


「こっちは俺以外がやられた。C-7に誘導だ」


【……………………】


「向こうもやられたのか!」


 返事が無いのをそう受け止めたモハメドは他に無事な仲間がいないか短距離用の通信機を使って連絡を取り合っていく。だが、返ってくるのは無言の返答ばかり。焦りながら、無事な仲間がいないか探していると機械兵にバタリと出会ってしまう。

 機械兵がこちらを振り向く前に、関節部を狙おうとするが光線が出ない。


「くぞ、焼き切れたか!」


 改造のツケが来たのだと、自棄になったモハメドが乱暴に銃を投げつけ、走り去ろうとする。


(このあたりのトラップはもう――)


 事前に準備していたものは最初の爆撃で吹き飛ばされてしまっている。もはや対抗手段を持たない彼に待ち受けているのは死のみ、そう思われていた。機械兵を溶かすほどのエーテルの光を見るまでは。


「あれは――」


「こちら、S-FORCE所属セブンスセブン。これよりあなた方の援護に入ります」


 エーテルキャノンで機械兵を吹き飛ばしたセブンスセブンは次の敵を求め、空を駆けていく。機械兵をGブレードでやすやすと斬り裂いていく。


「レイ、上空の敵は?」


「全機撃墜。残りは地上だけだね」


「私は引き続き北側の敵を掃討します」


「じゃあ、ボクは南側だね」


 2機が南北に分かれて機械兵を赤子の手をひねるかのように倒していく。死の象徴、中東の絶対たる支配者は今や、哀れな犠牲者へと立場を変えていく。たった2機で戦況を巻き返していく様子にモハメドはただ舌を巻くだけだった。


「あれが機械人形の力ってやつかよ……」




 機械兵を掃討したレイとセブンスセブンはアイリスが運転する装甲車を街の中心部まで誘導していく。そして、モハメドが連絡のついた仲間たちをその場に連れて行き、けが人の治療を受けさせる。アイリスが持ってきた水筒からきれいな水を怪我している個所にかけて、汚れを洗い落とし包帯を巻いていく。


(ひどい怪我……こんなときに治癒魔法が使えたら)


 少ない物資でより多くの人が救えたかもしれない。だが、無いものねだりをしても仕方が無いと割り切り、自分ができるだけのことをしていく。慣れていない手つきで治療を施している様子を訝し気に見ていたモハメドはアイリスに問い尋ねる。


「水をそんなに使っても良いのか?」


「これくらいは平気よ。どんどん使いましょう」


「しかしだな……いや、待て。明らかに水筒に入る量よりも多くの水が出ていないか?」


「これは魔石を使って、どこに行っても水が飲める水筒『のめるくん』です」


 アイリスが水筒の内側をモハメドに見せるとサファイアのような宝石がが埋め込まれており、わずかな水が付着しているだけだった。だが、アイリスが水筒を傾けると水がドバドバと出始め、キツネにでもつままれる顔をする。


「前に極寒の場所に行ったときに水筒に入れていた水がカチコチに固まって大変な目に遭って……だったら、水を中に入れずに、魔石で直接水を出す仕組みにしたら良いと考えて作ったんですよ」


「言っていることがよく分からんが、無尽蔵に水を出せるということか」


「魔石も使いすぎると壊れますけどね」


「まるで魔法だな」


「魔法じゃないんだけど……強いて言うなら魔法科学かな」


「飲みます?」とコップに入った水を差しだされたモハメドは得体のしれない水を飲むことに一度ためらう。だが、怒声を飛ばしながら走り回っていた彼の喉は既にカラカラだ。


(まあ、一口くらいなら大丈夫だろう)


 恐る恐る舌で舐めるように味・感覚を確かめる。それは思っている以上に冷たく、石や泥が入ったざらついた感じも、毒物が入っているようなぴりついた感じもない。死ぬようなことは無いだろうとごくごくと一杯の水を飲み干す。まともな水を飲んだのはいつぶりだったかと思うほどだ。


「もう一杯飲みます?」


「いや、他の連中に飲ませてやってくれ。俺は地下壕に逃がした連中に負傷者が居ないか確認する。いかんせん古い施設だからな。奴らの攻撃で崩壊していないとも限らん」


「だったら、ナナも……」


「いや、俺一人の方が都合が良いだろう」


 そう言い残してモハメドが去っていく。彼が戻ってくる間、機動力のあるレイに市内の生存者を探させ、セブンスセブンと二人きりで負傷者の手当てをしていく。すると、建物の影から何かが投げつけられセブンスセブンの頭に当たる。カランコロンと転がった小石をみるに、これがあたったようだ。


「出ていけ!」


 声がした方を見るとまだ幼い子供が足元の小石を投げつけようとしている。たかが子供の投擲ごときで自身が壊れるようなことは無いのはわかりきっており、手出しするつもりもなく彼のことを無視している。そのことは十分にアイリスも頭では理解しているが、とっさに子供とセブンスセブンの間に立つ。


「おねーちゃん、どいてよ」


「嫌よ」


「僕はこいつらにパパもママも殺されたんだ。だから僕がとっちめてやるんだ」


「ナナがそんなことするわけないわ」


「うるさい。こいつら機械が僕たちの街をめちゃくちゃにしたんだ。返せよ、僕のパパとママを!」


 アイリスに向かって投擲しようとした手を後ろからモハメドが止める。


「よさんか。客人に手を出すものじゃない」


「だって、こいつらも国連の連中だろ。だったら敵じゃん」


「国連も敵だが、今の敵はギース軍だ。敵の敵は味方でなくとも利用できる」


「ただの腰抜けじゃん!べっー」


 あっかんべーをした男の子はどこかへと走り去っていく。それをやれやれと言った表情で見送ったモハメドは二人に話しかける。


「けがは無いか?」


「ええ、おかげさまで。あの子は?」


「カシムのことか。アイツの両親は優秀な戦士だったが、敗走する俺たちを逃がすために……な。機械兵の反乱に懲りず、国連の連中が機械人形とかいう兵器を繰り出した時は相変わらず腐った組織だとは思ったが……」


 モハメドが手当てが済んだ人たちをみる。人間であるアイリスだけでなく、彼から見れば兵器であるはずのセブンスセブンやレイが人命救助のために動いているのは不思議な光景にしか見えない。

 また、こちらに派遣してきた人間は一人だけとはいえ、薬などの物資は無限にあるわけではない。限りあるそれらを惜しむことなく使い、お金を要求する素振りさえ見せない彼女たちはあまりにも綺麗すぎた。


「あんたらみたいなやつもいるなら、博士の言う通り少しばかりは信じてやるさ。勘違いするなよ、国連じゃなくてS-FORCEに対してだ」


「博士って、ヴェクター先生?」


「先生? 教え子を取るようなタイプではないと思ったんだが……それはおいておくとして、俺たちの武器は博士が改造したものを使っていてね。そうでなちゃ、横流しされた古い武器で生き延びることはできんよ」


 壊れた光線銃を手渡されたアイリスはそれをまじまじと見て、慣れた手つきで解体し始める。


「出力を無理やり上げたせいで、この部品が焼き切れたのね。代わりの部品は無いけど、魔力銃を作った応用でこの機構の代わりに魔石を少し削ってつないで……魔力の代わりに電力で補えば…………これでどうかしら」


「試させてもらおう」


 がれきを並べて、少し離れた場所から狙い撃つ。引き金を引いた瞬間、光線が放たれがれきが砕け散る。


「凄いな。元通り、いや少し威力が上がったか」


「エーテルドライブで無限に電力供給できるからと言っても、部品には限界があるんだから注意してください」


「ああ、気を付けるよ(と言っても、替えの部品なんてないが)」


 彼は万年寒い懐事情については言わず、レイが戻ってきたところで三人を地下のアジトへと案内することにした。きっと彼女たちなら、同胞に迎えられると信じて。

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