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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE55 GO TO MIDDLE EAST

 ある日、アイリスが叢雲博士と一緒に新装備の開発を取り組んでいた時、宇月博士が慌てた様子で入室してくる。


「た、大変だ!みんな、作戦室に来てくれ!!」


「なんじゃい、急に。魔石を使った魔法技術の応用でエーテルブースターの目途がついたというのに」


 作業台にはセブンスセブンに取り付けるブースターの部品と基盤に部品を取り付けている状態のデバイスが置かれている。その基盤にはきれいにカットした魔石がちりばめられてキラキラと輝いており、宝石店のショーケースでも見ているようだ。


「それも重要ですけど、こっちのほうが一大事!中東で大規模なギース軍が侵攻を開始。進行先には非政府組織の基地があるんですよ」


「なんだと!?」


「中東って言えば私たちが行くところの……」


「そう。僕たちが次元崩壊を防ぐ要となる場所。そうでなくても、この侵攻を見逃すわけにはいかないから作戦室に来てくれ」


 大慌てで宇月博士が退出する。叢雲博士とアイリスも未完成のエーテルブースターとセブンスセブン用に開発していたセットアップ用のプログラムの手を止めて、その後を追うように作戦室へと向かう。

 手を開けられない隊員を除いて、ほぼ全員がそろった頃合いを見計らって宇月博士がモニターに中東の地図を映し出す。


「アラビア半島北部に非政府組織の基地がある。彼らの救難信号を受け、僕らはこの地域への派遣を行う」


「BEYOND THE TIME……次元崩壊防止作戦のために恩を売るってやつかい?」


「そういった下心が無いかと言われると嘘になる。でも、この基地には地下に行けなかった民間人も多数いる。僕らも軍と名乗っている以上、民間人の救出は何よりも勝る責務だよ、アレックス」


「そうかい。でも、こっちはBREAK THE SKYの発令がいつあるか分からない以上、そうそう戦力は出せねぇぜ」


「それは僕の方で人選は考えている。まずはセブンスセブン。国連軍からすれば、同等の戦闘力を持つGタイプのマシンドールを多数納めている以上、そのプロトタイプである彼女の出撃許可は取りやすい。そして、アイリスとレイ。未来から来た彼女たちは国連軍も知らない戦力な上に、許可を取る必要もないからね。以上、3名で行う」


「……マジ? いやいや、俺も戦力の出しすぎはどうよって意見したけど、これはいくらなんでも少なすぎやしねえか」


「アタシもそう思います。せめてあと数機は……アイリスちゃんはちょっと変わってて頭おかしいけど、普通の女の子なんですよ」


「キャシーさん、私ってそんなに変わっているの!?」


「そこじゃねえよ!普段のごみ漁り任務じゃねぇんだ。わがまま言うくらいの権利はあるぜ」


「そうよ、Gタイプ1ダース分くらいポンってくれるわ!」


「えっ、ナナとレイちゃんがいるから安心できるし……」


 アイリスは二人の意見を聞いて再度考え直してみる。

 リミッター解除は使えないとはいえこの時代のバックアップをフルで受けている全盛期のナナに、火器は失われたもののこの時代ではオーバースペックともいえる高い機体性能を持つレイ。しかも、この時代に来てからはまだ使っていない切り札のリミッター解除や、積極的には使う気はないレイブラスターもある。これ以上の戦力は必要なのかと思うほどだ。


「私たち3人だけで十分です!」


「マジで……頭のねじぶっ飛んでいるやつだとは思っていたけど、元から無かったんじゃね」


「さすがにそれは女の子に失礼よ。擁護しないけど」


「どうして!?」


 2人がドン引きしているのを見て、アイリスはちらっと他の隊員の方を見る。容姿は可愛らしく、性格も決して悪くはないが、自称天才科学者、悪の発明家であるドクターヴェクターとマトモに付き合えている時点で大きな減点対象となっている。そういうこともあり、目を向けられた隊員は顔をそらす。


「ははは、嫌っているわけじゃないからね。アイリスたちはE1のゲートから出発してくれ。あそこが最も彼らの基地に近い。彼らが持ちこたえてくれるまでに到着すればいいんだけど……そこは天に運を任せるしかない」


 ブリーフィングを終え、アイリスたちは指定されたゲートから装甲車を走らせる。戦闘に耐えられる装甲よりも戦闘回避のためのステルス性能に重きを置いた装甲は上空からの無人機によるレーダー索敵には引っかかりにくい。

 とはいえ、それは通常走行の話。今回は一刻を争う事態であるため、ステルス運用など知ったことないと言わんばかりの猛スピードで走らせている中、アイリスはマニュアルを読みながら運転しているセブンスセブンに話しかける。


「ねえ、中東ってどんな地域なの?」


「あそこの歴史は中々に複雑ですが、20世紀から21世紀初頭にかけては石油資源で潤っていた地域があった場所です」


「石油?」


「ええ、エネルギー資源としての用途だけでなく、衣服や容器を作るのに欠かせないプラスチックを作る原料にもなる万能素材。この地域で産出されるものは質・量ともに最高峰。それを手に入れた者は巨万の富を築き上げました」


「資源価値からみれば、この時代の魔石みたいなものね」


「そう見てもらっても構いません。しかし、一部の者だけが富を得る社会構造は歪であり、貧富の差による対立、そこに宗教的な対立も相まって一触即発な地域でもありました」


「アレックスさんが危険な場所とか忠告してくれたのはそういう意味なのね」


「ええ。そして、この構造は21世紀中頃にエーテルが発見されたことで大きく変わります。その世紀の終わりには半永久機関であるエーテルリアクターが開発され、エネルギー資源としての石油の価値は暴落しました」


「私たちの時代で魔石がただの石ころ扱いになったら、その採掘で潤っているコパール王国は立ち行かなくなるわ」


「はい、貴女が考えているように中東の経済状況は悪化。それに伴う革命、血みどろの紛争が一斉蜂起することになりました。そして、長らく続く混乱が他の地域に飛び火することを恐れた国連軍はAI制御した機械の兵隊を投入することを決定しました」


「AIを使った機械の兵隊……それって――」


「ドクターアイリス、考えている通りです。ギースが操る機械兵の初の実戦投入。彼はこの地域で人の悪意を学び、そして人類に反旗を翻すこととなったのです」


「ここが全てが始まった場所……」


 強化ガラス越しにどこまでも続く乾いた大地を眺める。紛争・革命が起こったようには見えない静寂な場所。この場所で争いを止めるのにどれだけの血を流したのかは、アイリスには想像することさえできない。

 しかし、人類の多くを滅ぼさないと平和にはならないとギースが至るまでの苦悩の一端は道中の数多くある破壊の跡からもうかがい知れる。


「平和って難しいことなのかしら?」


「……機械である私にはわかりません。人である貴女はどうなのです?」


「戦争を未然に防ぐのは難しいわ……獣人の人たちが戦争を理性で抑えてくれたのもあったけど、あれは運がよかったのも大きい。でもね、人は必ず争いを止めることができるの。子供の喧嘩だってそうでしょう?」


「子供の喧嘩ですか……つまり、私たちがやったことは子供同士の喧嘩に親が出て被害が大きくなったと」


「そうかもしれないわね。もし、親が出るのであれば武力による鎮圧ではなく話し合わせるべきだったのよ」


(それが私たちの過ちというわけですか……)


 アイリスが唱えているのは理想論なのかもしれない。だが、その理想を求めるのをやめ、安易な力に走った結果が今の現状である。


「武力ではなく話し合いで解決できる時代が来ると良いですね」


「来るわよ、きっと」


「ええ。では、その時代のためにもこの地域の人たちを助けに行きましょう」


 少しでも早くと車のアクセルをベタ踏みしている。だが、どれだけ急いでも彼らの基地にたどり着くまでにはそれなりの時間がかかる。自分らが先につくのはシミュレーションより困難。後は彼らがどれだけ持ちこたえるか、祈るだけといったところだ。


(祈るですか……)


 人が信仰する神とやらが理解できないのにどこへと祈るとでも言うのかと苦笑しつつも、要救助者がいる街へと向かっていく。

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