表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/85

EPISODE54 ONE DAY

 アイリスが過去に飛ばされてから、それなりの月日が経った。北欧ベースの空戦型のマシンドールはAIの熟成が遅れていること以外はおおむね順調であり、ジュネーブ奪還の日は刻々と近づいていった。

 そんな中、伸びてきた髪をヘアゴムで束ねたアイリスは最深部にある大扉のセンサー部に手を触れて開ける。


「ここの扉が開いたのも、私が働いていたからなのよね」


 ナナが眠っていた遺跡では地響きするような音を立てていた扉も、今の時代ではしっかりとメンテナンスがされており、音を立てずに滑らかな動作で開く。その先には、自分たちの時代ではその姿さえもなかった数多くの機械とスパゲティー状に広がる無数のコードが敷き詰められている。

 メンテナンス台にはセブンスセブンと同型の機体が横たわっており、腕や足が欠落している。また片隅には破損したフライトユニットが置かれており、撃墜された1機のようだ。


「これはまた……」


「レストアするより、一から建造したほうが早いって思うだろう。だが、俺たちには使い捨て出来るような余力はない。使えるものは使っていく。おかげでウチの機体はキメラ構成の機体が多い。誰がどのパーツを使っているのか、こうやって書き残さないとな」


 メカニックのムニエルが紙にパーツの型番を記載していく。細かすぎる情報に、第三者が見ればめまいがしそうだ。それを見ながら、アイリスも壊れた部品、まだ使える部品を仕分けしながら、新しくパーツを付け替えていく。


「データベース化はしないんですね」


「Dr.ヴェクターに大分と毒されているな。ギースのハッキング防止だよ。あの人のところのセキュリティならともかく、末端のコンピューターのセキュリティはざるだ。おかげで今時、重要データをこうした物理的な記録媒体で運んでいるんだぜ」


「ははは、ヴェクター先生なんて『部屋から出たいならワシのセキュリティくらい破ってみろ』と言って、監禁紛いなことをされたことが……」


 うつろな目で乾いた笑い声をするアイリスを見て、ムニエルは地雷を踏んでしまったと思い話題を変えようとするも必死に頭を捻りだす。


(俺、メカマンだし。女の子が好きそうな話題なんかなにもねえよ。そういうの無縁だったし、ちくしょー!でも、この子、いろんな意味であたまおかしいからむしろそっちの話題で行けるか)


「ああ、そうだ。新しい武装ができたばかりなんだ。見てみるかい?」


「見ます!」


 一転して目を輝かせるアイリスをみて、ムニエルはヨシと心の中でガッツポーズをする。保管してあった黒い鎧と武器である長身のナイフを見せる。


「こいつはステルスアーマー。エーテル粒子を纏わせることで光を屈折し、完全なステルス機能を……」


「知ってます。というより、ナナが戦ったことがあります。バサバサと倒していました」


「マジで!? パーフェクトステルスだぞ、パーフェクト!どうやって見破ったんだよ」


「ナナが言うには熱源センサーで対策できると」


「マジかあ……戦場なら熱源がたくさんあるから誤魔化せると思っていたんだけどなぁ。ステルス性能を落としてもう少し武装を詰めるようにしたほうが良いか」


「でも、そうすると機動性も……」


「だよな。ジャマーだけでも他のアーマーにつけられるようにしておくか」


 ムニエルが忘れないように改造プランを書き起こしている一方で、アイリスは撃墜された機体の修理を急ぐ。この後はセブンスセブンと一緒に地上のパトロールがあるからだ。



 赤く染まった大地となった世界でも、空は澄んだ青空が広がっている。太陽がサンサンと輝く中、アイリスとセブンスセブンは壊れた建物から、使えそうな物資が無いか確認していく。


「……あっ、缶詰」


「賞味期限は大丈夫ですね。このあたりはスーパーなどの商業施設があった場所。保存食の類は持って帰りましょう」


 アイリスはコンテナに使えそうなものを入れていき、地図を広げて未探索地域を塗りつぶし、探索済みの地域を広げていく。マシンドールの登場で地上に残された物資の回収ができるようになったとはいえ、大部隊での回収は敵に感知されやすく危険が伴う。そのため、少数精鋭かつ短時間しか、地上の探索を行うことができない。アイリスに渡された地図も黒塗りになっていない地域はまだまだ多い。


「それにしても暑いわね。少し動くだけで汗が出る……今は夏なのかしら?」


「暦の上では秋ですね。エーテル技術が開発されるまで温暖化が加速していましたから、夏のような気候が長期に渡るようになりました」


「そうなの? 私たちの時代だと秋はこんなに暑くないのに」


「エーテルの発展とともに温暖化ガスの排出量も大幅に減少、この戦争で多くの人が亡くなったことを加味し、長い年月をかければ地球の環境が元に戻る可能性はあるかと」


「技術の発展もあるけど、あまりうれしくないわね……」


「そうでしょうか」


「えっ?」


「私はいかなる手段を用いても人が長く存続してほしいと思っています。でなければ、私たちが戦う理由がありません。ドクターアイリス、貴女が本当に未来から来たのであれば、それは喜ばしいことなのです。人が繁栄しているという証拠なのですから」


 アイリスはこの時になってようやくナナが初めて会った時から、妙に慕っていた理由がわかる。過去の自分、この場合は未来の自分と言ったほうが正しいのかもしれないが、セブンスセブンの考えに賛同し、未来から来たと思わせるほどの痕跡を残し、未来へと戻ったのかもしれない。だが……


「それは違うわ。たとえ、それで未来を得たとしても失ったものは取り戻せない。それだけじゃない。残された人たちも傷つく。戦いで得られるものと失うものは決して等価値にはならないのよ」


 アイリスは帝国の策略もあり、獣人の国と全面戦争になりかけたことを思い出す。あのときは、獣人の人たちが理性を保っていたこともあって、最悪の事態は免れたが、もしも開戦していたらと思うと体が震える。


「得るものと失うものは同じではない……」


「ええ。だから、人は争いよりも平和を求めるのよ。それだけは忘れないで」


 気合いを入れなおして、地上に残された物資の回収を行っていく。しばらくすると辺りを警戒していたレイがこちらに戻ってくる。どうやら敵を見つけてきたようだ。会敵したポイントに向かうと、機械兵が決められコースに沿う様な動きをしながら闊歩している。


「数は少ない……ただのパトロール部隊ってところね。でも、こちらの動きに気づいて仲間を呼ばれると厄介かも」


「では仲間を呼ばれる前に片付けましょう」


「おけー。一気に行くよ!」


 廃墟となった建物の影から飛び出したレイとセブンスセブンが哨戒中の機械兵に対して、発砲する。タイムスリップした際にナイフ以外の武器を失ったレイだが、生まれ故郷たるS-FORCEで新たに手持ち武器を手に入れていた。その中の一つ、対機械兵用ライフルで機械の巨人を撃ちぬいていく。


「昔の武器だけあって、反動大きいよね。腕がもげそう」


「私たちにとっては最新鋭の武器なのですが!反動はともかく!!」


 ナナが文句を言いつつも、先ほどから取り回しのしやすい基本武装であるGライフルやGブレードを使っているあたり、そのあたりは自覚しているようだ。

 すぐさま敵を片付けたアイリスたちは長居は無用だと判断し、探索を中断して別ルートの出入り口から自分たちの基地へと戻っていく。



 持ち帰った物資を仕分けをしているとき、宇月博士がやってくる。持ち帰った物資の量を見て感心しているようだ。


「今回は大漁だね。焼石に水かもしれないけど、地上に残された資源は有効利用しないと、生活が苦しくなる一方だ。ところで、ここでの生活も慣れたかい?」


「はい、おかげさまで。知らないことがまだまだあって、毎日勉強漬け(スパルタ)です」


「大丈夫かい、それ?」


「ははは……昔と比べれば師がいるだけでも楽ですよ」


「幼少期のきみに何があったんだい。僕にできること言えば愚痴を聞くことくらいしかできないかもしれないけど、辛いことがあれば話し相手にはなるよ」


「ありがとうございます。でも、この後、ヴェクター先生に教えを乞うつもりなので」


「わかった。でも、あまりコンを詰めないように」


 宇月博士が他の人の報告を聞きながら、去っていく。彼もまた本職とはまるで違う業務をこなしながら、この部隊を率いていこうと頑張っている姿を見て、アイリスも負けられないと思い、ヴェクター博士のしごきに気合いを入れて挑むのであった。



 その晩、アイリスはへとへとになって眠ったはずが、夜中に目が覚めてしまう。深夜遅く、みんな寝静まってシーンとしている。もう一度寝ようと思ってもなかなか寝付けないので、水でも飲もうかと食堂へと向かっていくと、ある一室でカタカタと機械の操作音がしている。気になったアイリスがその部屋に入ると、セブンスセブンが昼間に自分らが開発しているプログラムの構築の続きをやっていた。


「まだ起きていたのですか?」


「ちょっと目が覚めちゃって。そのプログラムの進捗って、ナナが徹夜するまで遅れていないわよ。ナナも休めるときは休まないと」


「いいえ。私は疲れを知らない身体なので、北欧ベースの遅れを取り戻すくらいはしておかないと」


「……そうだ、ナナ。一緒に寝ましょう」


「私の話を聞いていましたか?」


「聞いたわ。ワーカーホリックってことでしょう。元の時代だと一緒に寝てくれたのになぁ~」


「未来の私は何をしていたのですか……わかりました。寝かしつけるまで一緒にいてあげましょう」


 セブンスセブンはアイリスの部屋に行き、彼女と添い寝する。寝かしつけ方などセブンスセブンのデータベース内にあるわけもなく、適当に頭をなでてあげると嬉しそうな顔をするので、これでいいのかと思い、そっと撫で続ける。

 しばらくすると、すやすやと眠り始めたアイリスをみてセブンスセブンは自分勝手だけどどこか愛しく思える彼女を見つめていた。


(これが母性というものなのでしょうか……)


 機械である自分が母親になれるわけもないのに抱いた感情に苦笑する。いくら人に近い感情、行動をとることができても所詮は機械。人にはなれないのだと自分に言い聞かせて、アイリスの部屋から退出するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ