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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE53 S-FORCE

 翌朝、アイリスは寝ぼけた眼で知らない天井を仰ぎ見ながら、これまでのことを振り返る。ナナと出会ってからは激動の日々を過ごしていたが、今回も中々にハードな事態になっている。去年の自分が今年の出来事を聞いていたら、卒倒するんじゃないかと思うほどだ。


「そう考えると私も成長したってことかな」


「失礼します。お召し物、お持ちしました」


「ありがとう、ナナ」


 S-FORCEのおろしたてのパリッとした黒い軍服を着る。昨日、身体測定や健康診断やらをしていたおかげで体にフィットしている。元の時代に戻って、服屋のアランにお土産として持ち帰ったら喜ぶに違いない。そのためにも次元崩壊を止めないとと気合いを入れなおす。そんなアイリスをナナは不思議そうな顔で見る。


「どうしたの?」


「怖くないのかと思いまして」


「一人だけならともかくレイちゃんがいるし、ナナも……って私に会う前のナナだとしても安心できるから怖くないわ」


「……未来の私ですか?」


「そうよ。私の知っているナナは頼りになるんだけどどこか抜けていて……一緒に冒険して、戦って、その最後まで私たちの国、いえ隣国すらも守り抜いた最高の騎士。私の大切な人よ」


 帝国に修理されて敵側についていた複雑な事情は話さずにセブンスセブンに伝える。壁に掛けてある時計を見ると、集合時間までにはもう少しだけ時間はある。アイリスは昨日は色々とあって聞けなかったことについて聞いてみることにした。


「そういえばS-FORCEってどういう組織なの?」


「話をしていませんでしたね。元々は科学研、機械やAI等の技術を研究していた研究所でしたが、マシンドールを開発して以来、軍事力を持つようになりました。そこで、国連軍は一定の軍事力の所有を認める代わりに自分たちの支援を要請、その際に組織名が変わりました」


「FORCEは軍で、Sは……サイエンス?」


「ええ、その通りです。いうなれば、私たちは陸海空軍に次ぐ第4の軍、科学軍と呼ぶべきものです」


「科学軍……」


「といっても、もともとは別組織でしたから国連軍とはそりが合わないところのが難点です。時間ちょうどに行くのも喜ばしいことではないでしょうから、少し早めにミーティングルームに行きましょう」


「わかったわ、ナナ」


 部屋から出るとバタリとヴェクター博士の部屋で泊まっていたレイと合流する。護衛が離れるべきではないとしかるべきだろうが、この事件を解決すればもう二度と会えない家族のような人と少しでも居させてあげたいと思い、レイを行かせたのだ。


 3人がミーティングルームに入り、時間を待っていると人がぞろぞろと集まっていき、総勢数十人ほどのスタッフが集う。壇上には代表者である宇月博士が立ち、スタッフたちに話しかける。


「これから話すのはもう一つの世界の脅威、そして新しい僕らの仲間の紹介だ。アイリス、レイ、こっちに来てくれるかい」


「はい!」


 宇月博士からマイクを受け取り、少しばかり緊張しながらも、これから共に戦う仲間たちに呼びかける。


「私はアイリス・シャルトリューゼ、未来から来ました。以後、お見知りおきを」


「ボクはそのお供のマシンドール、レイちゃんだよ。気軽に呼んでね」


「おいおい、未来から来ただって。そんな頭のおかしい子を入隊させるつもりかよ」


 周りのスタッフの心情を代弁するかのように、金髪の男性が立ち上がり宇月博士に文句を言う。


「アレックスの意見もよくわかる。僕たちも調べるまでは半信半疑だったからね。でも、彼女たちの持つものには数年先の技術もあれば、まったく未知のテクノロジーで作動する道具もある。総合的に見て、彼女たちは未来から来たと判断したんだ」


「どこかの基地で新開発した可能性ってのは?」


「マシンドールの飛行ユニットは僕らが先に試験運用した。連絡が取れる基地とのやり取りをしながらね。航空戦力の増強に力を入れている北欧ベースですら、飛行用としてデザインされたマシンドールがようやくできる頃合いだ。にも拘わらず、レイは僕たちよりも高性能かつ飛行ユニットを持っている。これが異常なのは分かるだろう」


「……とりあえず、その子がスペシャルなのはわかりました。で、どうやって未来から来たんです?そこを説明してもらわないと納得しませんよ」


「その話はこれから話す世界の脅威に関わることになる。彼女たちの居た世界ではD4兵器による次元崩壊現象が発生、これより先の未来は完全に消失した。その際、彼女たちの時代まで稼働していたセブンスセブンとの縁をたどり、アイリスとレイの2名はこの時代へと飛ばされた。しかし、これは次元崩壊の影響は過去にまで波及すると言う証明にもつながる。よって、今を生きる僕たちも次元崩壊を止めないと明日か数か月後か、数年後、はたまた数百年後になるかは知らないけど、対抗できぬまま消滅する」


「マジで言っているのか? あんな既存技術との組み合わせたくらいで、世界が崩壊するなんておかしいぜ」


「僕だってそう思っていたさ。でも、20世紀に開発された核兵器だって実際に使われるまで、威力のある爆弾程度にしか思われていなかった。だけど、それにより多くの人が犠牲になり、100年近く苦しみ続け、人類は自らその使用を禁じた……」


「歴史は繰り返されるってやつですか。まあ、論文を見せられても門外の俺にはちんぷんかんぷんだろうし、何かあったらそのときはアンタを追求するだけさ。それでいいよな、お前たちも」


 自分たちの意見も細部に違いはあれどアレックスの意見におおむね一致しているのか、黙り込みながらもゆっくりと頷く。何かあれば責任を取らせると言うが、これからとる作戦はその何かを未然に防ぐもの。つまり、作戦にさえ成功すれば、仮に失敗したとしても何も起きなければ責任問題にしないと公言してくれたということだ。


「ありがとう。次元崩壊を防ぐために僕たちはアイリスたちを未来に送り返す必要がある。そこで、ファーストフェーズとして、中東にあるヴェクター博士の秘密基地を奪還する」


 背後のモニターには中東を拡大した地図が映し出され、かつての国々の境付近のところに点滅された地点が映し出される。それを見たスタッフがざわつき始める。


「おいおい、あのあたりって反政府組織がバチバチやっていたところだろうが。冗談きついぜ」


「だからこそ、研究所を隠し通せたんだろうね。僕たちは反政府……いや、今では非政府組織の生き残りと協力し、中東方面にあるギースの基地を制圧し、秘密基地を手に入れる」


「おいおい、それこそ軍と協力しようぜ。なんのための支援部隊だよ」


「先生……叢雲博士にD4の危険性を訴えるのと同時に軍の協力を仰いでみたけど、ジュネーブ奪還作戦もあって戦力を投入できないらしい」


「マジかよ……こっちの戦力なんて実験機と試作機数体、試作量産型くらいだろ。作業用の機体に武装を施してもたかが知れている。しかもテロリスト共と協力して中東基地の攻略……ハードなんてもんじゃねぇぞ」


「それは……」


「ふん、黙って聞いておれば好き勝手喋りおって」


 後ろでおとなしく会議を聞いていたヴェクター博士がどかどかと壇上に上がり、宇月博士からマイクをむしり取る。


「非政府組織と言っても現状なら、あやつらも敵の敵である儂らに敵対する益がないと判断する知恵くらいはあるわい。本来なら交渉役として儂も行くべきなんじゃが、年が年だけにちょいと辛い」


(嘘こけ。アンタは単独でここまでやってきた妖怪よりもしぶてえ奴だろうが!)


 アレックスの心情を無視するかのようにヴェクター博士がしゃべり続ける。


「というわけで信頼できるものを送らねばならんが、戦後のことを考えるとほいほいと選ぶわけにもいかん。下手なコネを持たずに有力そうな人材がコロコロと転がっておれば……」


 チラリとアイリスの方を見る。目が合ってしまったアイリスはこの流れはマズイとひしひしと感じつつも、ヴェクター博士のわざとらしい口調の演説を聞く。


「おお、おるではないか。この時代に一切のコネが無い未来人が!しかも、こやつは未来のエンジニア。現代知識さえ与えてやれば使い物にはなるじゃろう」


 一部の人がガタツと音を鳴らす。S-FORCEのエンジニア部門はどうやらむさくるしい男が多く、紅一点、しかも美少女が来るとなれば大歓迎だ。


「これだから男ってやつは……」


 ため息をつきながら、オペレーターのキャシーが情けない男と新しく女の子を見る。数少ない女性スタッフとしては同性が来るのは大歓迎だし、未来人とやらのファッションや文化には興味はあった。


「というわけでアイリスには儂のもとで数か月ほど働いてもらい、一人前の科学者に仕立て上げる。その間に予定通りジュネーブ奪還作戦が実行すれば、国連軍との協力を得て中東の制圧に取り掛かる。何かしらの遅延で実行が送れば非政府組織と協力する」


「世が世ならすげー批判くる作戦だな、おい!」


「その批判相手はもうおらんがな、ガハハハハハ!」


「不謹慎ですよ、ヴェクター博士。とにかく、次元崩壊阻止作戦、コードネーム『BEYOND THE TIME』。この作戦を確実なものにするために、まずはジュネーブ奪還作戦、コードネーム『BREAK THE SKY』を成功させる」


「次元崩壊を防ぐために私たちを元の時代に戻すから、『時を超える』なのはわかります。でも奪還作戦が空を壊す?なのは……?」


「アイリスちゃんにはまだジュネーブのこと詳しく話していなかったね。知識の共有は重要だから、皆にも改めて説明させてもらう。ジュネーブは国連の本拠地であり、そして、ヨーロッパ最大の宇宙港がある場所でもある。ここを取り戻さない限り、宇宙からの監視によってこちらの動きが筒抜けになってしまう」


「宇宙から監視? 宇宙って月や星があるところでしょう。あんな高いところから!?」


「そちらの技術では無理でも、僕たちの技術だと朝飯前。この騒動が起こるまでは月や火星のテラフォーミングまで考えていたくらいだからね。ちょっと話がそれたけど、宇宙を取り戻さないと今後の作戦に支障が出る。よって優先すべきはジュネーブが先だ。そこを間違えないように。以上で今日のミーティングを終わる。各自は速やかに……って言いたいところだけど、午前中くらいは親睦を深めても構わない」


 ミーティングが終わるや否や、スタッフがアイリスたちに向かって群がっていき、矢継ぎ早に質問を投げかける。


「未来ってどんな感じなんだ? 自然は回復したのか?」


「心配しなくても自然に囲まれているわ。猛獣とか魔物が居て困るくらい」


「魔物? ゴブリンとかドラゴンとか出るのか」


「いくらなんでもファンタジーものの見過ぎだぜ、ブライアン。遺伝子異常で頭が2つある生物とかが関の山だろ」


「いるけど」


「いるのかよ!つーか、未来どうなっているんだよ。まさか剣と魔法のファンタジーですって言わねぇだろうな」


「ははは、私は使えないけど、魔法もあります」


「マジ? つーか、何が起こったんだよ。未来で」


「歴史書を見ても大昔のことはよくわからないからなんとも……」


「彼氏とかいるの~?」


「嫌われていたし、許嫁はいません」


「え~、こんなにかわいいのに。未来の男の目無いわ~」


 ハイスクールに女生徒が転校してきたような盛り上がりを見せるミーティングルームの一角。もみくちゃにされたアイリスが解放されたのはちょうどお昼時のことであった。

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