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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE51 ENCOUNTER

 アイリスが目を覚ました時、辺りの状況は一変していた。赤く染まった大地に、あちこちで無残に崩れている建物。D4ミサイルの余波でどこか遠くにでも飛ばされたのかと思ったが、ことはそう単純なものではなさそうだ。


「なんで私、着替えているの?」


 防寒着を着ていたはずがいつの間にか機能性を重視した私服へと変わっている。しかも、すぐそばには愛用のリュックまである始末だ。それどころか、冬の北国にいるにもかかわらず全然寒くなく、むしろ温かいくらいだ。わけのわからないまま、近くにいたレイを揺さぶって起こす。ナナやタイラント、ゼロツーたちの姿は見当たらない。


「アイちゃん、おはよう」


「おはようじゃないわ……ここがどこだか分からないし、服が変わっているし、分からないことだらけよ」


「へ~、知らない土地にワープし……う、ううううん? あれ、ここ知っている気がするんだけど」


「どこなの?」


「でも、ありえないよ。だって、ここは……危ない!」


 レイがアイリスを抱えてがれきの影に飛び込み、彼女が居た場所に銃弾が撃ち込まれていく。アイリスたちがそっと顔を出すと、そこにはマシンドールよりも一回り以上大きな巨人が近づいてくる。だが、その身体には銃口が余すところなく取り付けられ、少なくとも彼女たちのようにコミュニケーションをとることはできず、ただ殺傷目的で作られたものだと一目でわかる。


「なんなのあれ? マシンドールよりかはゴーレムに近いけど」


「あれはギースの機械兵。ボクたちはボクらが居た時代にタイムスリップしちゃったんだよ」


「え~、なんで!」


「ボクだって分からない。でも、まずはアイツらをやっつけなくちゃ。アイちゃんはここにいて」


「わかったわ」


 レイががれきの影から飛び出し、バスターランチャーを転移させようとするが、何も起こらない。慌てて、腰にあるビームナイフを抜き取り、接近戦を仕掛ける。


「この時代にボクの装備はまだ無いってことね。アーマーは装備していたせいなのか例外なのかは知らないけど!」


 迫りくる銃弾とビームを避け、射角的に隙が多い上空から機械兵に急接近する。そして、ナイフで首元を切りつけてメインカメラを遮断、隙だらけの背後に回り、ビームナイフの出力を一時的に上昇させサーベル状に変形し、動力炉に突き刺す。


「今更、機械兵に遅れはとらないよってね」


 余裕綽々といった様子で機械兵を切り落としていると上空から爆撃がなされてくる。レイが見上げると、上空には悠々と無人戦闘機が飛行していた。


「こっちにはナイフしか武器が無いっていうのに!アイちゃん、逃げて!!」


 レイが言うよりも早く、がれきが銃弾によって破壊され、はしるくんを身に着けたアイリスが飛び出す。走るよりかは早いとはいえ、相手は無人機。狙われたら逃げ切ることは困難だ。


 アイリスに機銃が向けられ、外すことの無い銃弾が向けられるようとする。


 レイの手元にライフル1丁でもあれば撃ち落せたかもしれないが、今は無い。虎の子のナイフを投げつけようとしてももう遅い。


 死を覚悟したアイリスは辺りがスローモーションに見える。これが死ぬ間際に見る走馬灯なのかと思うほどだ。


「助けて、ナナ!!」


 今はいない彼女の名を呼ぶ。

 銃弾が撃ち込まれようとした瞬間、ビームによって貫かれた戦闘機が爆発する。

 何が起こったのか分からぬまま、空を見上げると白銀の翼を煌めかせながら撤退していく戦闘機をあっという間に切り落とす。その職人芸とも呼べそうな早業に敵である機械兵ですらその動きを一瞬止める。そのわずかな隙を彼女が見逃すわけがない。


「全弾フルバースト!」


 彼女から放たれる流星雨。それらによって壊滅状態に追い込まれる機械兵たち。大方の情勢は決したが、油断することなく機械兵を葬り去っていく。

 彼女の勇士を眺めていたせいで、アイリスは頭上からぐらついて落ちてきたがれきに気づくのが遅れてしまう。もうだめだと思った瞬間、彼女に抱きかかえられる。


 そう、この時代に彼女が居ないはずがない。残された人類が生み出した最初にして最大の希望。後に世界を救う大英雄。その名は――


「大丈夫ですか?」


「あ、ありがとう。ナナ!」


「私はナナではなく、国際連合軍支援部隊S-FORCE所属、セブンスセブンです」


 セブンスセブン。彼女に会えたことでアイリスの中に複雑な感情がこみあげてくる。時代は違えど彼女にこうして出会えたことによるうれしさなのか、自分の知らない彼女なのが悲しいのか、それは自分にもわからない。


 ほどなくして機械兵との戦いは終わる。そして、互いに向かい合うアイリスとセブンスセブン。


「貴女たちから事情を聴かなければなりません。まずは貴女の名前と所属をお聞かせください」


「私の、私の名はアイリス・シャルトリューゼ。未来の国の女王です」


「………………はあ?」


 長いフリーズの後、セブンスセブンが未だかつて見せたことが無い呆れたような表情をする。本当のことを言っているアイリスでさえ信じられないほどなのだから、仕方がないのだが。そして、彼女が連絡を入れたのち、自身の基地へと案内する。



 アイリスが廃墟の一部に偽装された基地の出入り口に立っているマシンドールを見たとき、少し身構えてしまう。そこには彼女が初めて目にしたマシンドール、遺跡を守護していたのと同型の腕が銃口になっている機体が居たからだ。


「どうかしましたか?」


「い、いやあ~、ちょっと昔に襲われたのを思い出して……」


「プロトタイプのマシンドールはここにしか配置されていないはずなのですが……そういうことでしたら」


 セブンスセブンがカードを取り出してかざすと、その動きが一時的に止まり、背中にあるコンソールを用いて警備用マシンドールにデータを入力していく。そして、再起動したマシンドールのメインカメラがパシャリと光る。


「……これであなた方の顔を認証しておきました。この2機に襲われることは無いでしょう」


「ありがとう」


 アイリスが初めに会ったときのことを思い出してみると、銃口付きのマシンドールが襲ったのは護衛の騎士とナナだけだ。剣付きを除けば、初めから自分を狙っていなかったように思える。


(もしかして、ここで顔認証してもらえなかったらあのときに死んでいたりして……)


 いやなIF展開が思い浮かぶ。未来を変えないために、あまり干渉しないと言う選択もあるかもしれないが、この顔認証一つさえ、未来を大きく変えかねない出来事だ。


(何をしたら未来が変わってしまうのか分からないし、自分の思ったことをしましょう。それにしても、ここ見覚えがあるんだけど……)


 あの警備用のマシンドールを見た時に薄々は気づいていたが、ナナと出会った遺跡と同じ造りになっている。つまり、この基地が自分たちの時代における遺跡と同じものであれば、この場所は未来におけるアイリスたちの国であることが分かる。


 そんなことを思いながら、セブンスセブンに案内された部屋に入ると壁一面には様々な機械やモニターがびっしりと置かれ、部屋の中央にあるテーブルには乱雑に置かれた書類や飲みかけの飲料が置かれている。そして、部屋の中にいた物腰が柔らかそうな男性がセブンスセブンに話しかける。


「戻ってくれたところ悪いけど、軍に今回の戦闘データを渡しに行ってもらえないかな。向こうでも、マシンドール初のフライトデータは気になっているみたい」


「了解しました。ドクター」


 セブンスセブンが退出し、部屋の中にいるのはアイリスとレイ、そしてドクターと呼ばれた男性と老人2人だけだ。


「えっ~と、君たちがセブンスセブンが言っていた未来人?」


「は、はい!」


「あっ、自己紹介してなかった。僕は宇月徹。専門はAIのプログラミング、今は国際連合軍と協力している一介の科学者だ。ここには僕ら以外誰もいないから、もう少し詳しい話を聞かせてもらってもいいかな」


(この人が宇月博士……この人たちがナナを造った科学者!)


 ナナの話から、後ろにいる白ひげの老人が叢雲博士、目つきの悪いモノクルの老人がヴェクター博士なのだろうと推測した。

 そして、アイリスはこれまで起きた出来事を一から順に包み隠さず話をする。

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