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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE50 終焉の日

 ぼろぼろに崩れた砦の修復が急がれる中、仮設のテントでグラムたちは今後の方針について話し合っていた。すなわち、タイラントが住まう古城をいかにして攻略するかだ。最前線から撤退し、合流メンバーにはGD-02らの姿も見受けられ、セブンスセブンとタイラントの襲撃で失われた戦力の穴埋めとしては十分であった。


「こちらの被害は甚大だ。万が一に備え、首都の防衛のためにも、古城攻略に割ける戦力は限られている。よって、少数精鋭による古城攻略戦を開始する」


「しかし、こちらの戦力が整っていても敵わなかった相手、ここは本国からの応援を待つべきでは?」


「残念だが、本国からの応援はすぐには来ない。作戦目的が変更されていない以上、今ある戦力で攻略しないといけない。攻略メンバーだが、俺の独断で決めさせてもらった」


 テント内がざわつきながら、メンバーの発表がグラムの口から言い渡される。


「GD-02、アサルトカスタム1号機と2号機、そしてアイリス女王陛下とレイの5名。以上をもって古城を攻略してもらう。敵の生死は問わない。また、現場での指揮官は――」


「待ってください。納得できません。これは我が国の存亡にかかわる問題。それを敵国の、しかも王に任せるなどとてもではありませんが容認できません」


「だったら、お前が女王陛下の代わりに行ってタイラントを退治してくれるんだな。俺たちはここでゆっくりと茶でも飲んで任務達成の報告を待てばいいんだろう。前任者もこんなにも素晴らしい部下を持って、今頃草葉の陰で泣いて喜んでいるぜ」


「そ、それは……」


 口をつぐむ帝国軍の人たち。反対すれば、無茶な作戦を任されるとなればそうなるのは当然だ。だったら、女王はどうなんだとアイリスに注目が集まるが、彼女の目線は揺るぐことは無い。


「女王陛下はこの作戦についてどうお考えで?」


「1号機さんや2号機さんもお会いしたことがありますし、特にGD-02さんとは一緒に戦ったことがある仲です。お互いをよく知る仲同士なら連携もとりやすいですし、その作戦に乗りましょう」


「決まりだな。現場での指揮はマシンドールの運用に一日の長がある女王陛下に一任する。GD-02、アサルトカスタムの3名は彼女の指示に従うように」


 了解と敬礼する3機のマシンドール。詳細についてこれから話すと言って、関係のない者たちを退室させる。


「さてと、聞きたいことは色々とあるだろうが、先にこちらから話させてもらうぜ。例のセブンスセブンについてだ」


 それはアイリスにとって一番聞きたかったことだ。グラムの話を一言一句聞き逃さないと言わんばかりで、前のめりで話を聞く。


「コパール侵攻の際、セブン1機に大損害を受けた俺たちは撤退を余儀なくされた。その際、セブンのパーツを回収。リバースエンジニアリングできれば御の字という軽い気持ちだったんだが、破損していないメモリーデータの回収に成功。データを取り出そうと試みたんだが……」


「取り出せなかったんでしょう。おじいちゃんたちはそういうところは厳しいから」


「そうなるな。取り出せたのは基本的なデータと一部の記憶データだけ。機密に関わる部分は一切取り出せなかった。そこで、サイケは記憶データを封印し、完全な言いなりになるように仕向けて新しいボディの制作に取り掛かった」


「それがあの黒いナナ……」


「その際にひと悶着があったらしいが、予算が無事に降りてきたことでセブンスセブンの再建に成功。データも貰い、あとは解体するだけだったんだが……解体を恐れたセブンスセブンがお姫様を拉致して離反。どういうわけかタイラントと合流しているってわけだ」


(ナナが解体を恐れる……そういう素振りはあったわね)


 アイリスは獣人の国での腕の修復作業の際に嫌がるナナの姿を思い出す。だが、それが原因で群を離反するだろうかと同時に思う。小さい子供が注射を嫌がったとしても最後は受けるように、ナナも抗議はするかもしれないが、離反してまで解体を受け入れないとは思えない。

 つまり、ナナが離反したのはそんな単純な理由ではなく、オーロラ姫を誘拐してまで逃げ延びる重大な理由があったのではないかと考えた。


「俺が知る限りの情報はこんなものだ。何か聞きたいことはあるか?」


「私たちに情報をくれるのは良いんですけど、利敵行為になりません?」


「なるな。だが、借りは返す。さっき、ほっとけばいいものを撤退せずに戦ってくれただろう。なら、こっちは誠意で返すのが礼儀ってやつだ」


「グラムって良い人なんだね」


「当たり前だろう。俺は戦闘は好きだが、戦闘狂じゃねぇよ。レイの修理に、俺たちの機材使っても構わない。修理が終わり次第、古城に向かってくれ」


 了解と答え、レイとアイリスは修理に向かう。PタイプとZタイプで使われている部品に多少の違いはあると言えども、流用できそうな部品は多く、数少ない資源で作ってきた科学者の苦労がうかがい知れる。

 セブンスセブンの襲撃から数日後、アイリスたちはタイラントが住まう古城へと向かうのであった。



 古城の上からセブンスセブンたちはこちらに向かう敵影を捕捉していた。数は5、そのうちの一人は人間だ。


「たった5人で俺様を倒せると思っているのかよ」


「陽動かもしれません。タイラント、貴方はここで待機を」


「指示すんな!数少ねえし、やりごたえなさそうだから、お前に譲るけどな!!」


 タイラントの了承を得たことで、セブンスセブンは彼女たちの真意を確かめるべく、飛び去って行った。




「前方から飛翔物……ナナよ!」


「これより先に進むのであれば、貴方たちを敵として排除します」


 滞空しているナナが銃口を突き付けながら、警告を放つ。いきなり攻撃を仕掛けるような真似はしないらしい。それならばと、アイリスは前に出て、大きな声でナナに話しかける。


「待って!ナナと話をしたいの」


「ナナ? そのような人物はいませんが?」


「あっ……ナナってのはセブンスセブンのあだ名? みたいなもので……とにかく、私は貴方と戦いたいんじゃなくて話をしたいの!」


(近くに待ち伏せしている戦力なし……その4機は護衛?ならば少ない戦力でも辻褄は会う)


 ハイパーセンサーによる強化された索敵や身構えながらも攻撃を仕掛けてこない様子からも、彼女の言葉に嘘はなさそうだと考える。ならばと銃口を下げ、彼女たちに背を向ける。


「話だけなら聞きましょう」


 そう言って、セブンスセブンはアイリスたちを古城まで連れていくことにした。


 うす暗い森を抜けて、隙間風がぴゅんぴゅんと入り込む城の中にはいると、オーロラが嬉しそうにセブンスセブンに駆け寄り、抱き着いてくる。そして、セブンスセブンの後ろに客人が居たことに気づき、恥ずかしそうにしながら少し離れる。


「この人たちは?」


「オーロラ様。私の名はアイリス。弟のベルンがお世話になっていたようで――」


「ベルンの姉ということは……あの有名な!」


「ゆ、有名? なにで有名なのかな……」


「はい。祖国を追われるも数か月も経たずに取り戻した英雄と聞きました。話を聞いたときはゴリラのような女傑かと思っていましたが、こんなにも普通の方だったなんて!」


「ご、ごりら? 私、他の国でどんなふうに伝わっているの?」


「それはもう、追ってくる帝国軍を魔法を使わずにちぎっては投げちぎっては投げ、悪い王様に顔が変わるほどの渾身の一撃を喰らわせたとか!」


「ははは……なんで、そんなことになったのかなぁ」


 心当たりが全くないアイリスは物理的な距離があるせいでナナの活躍が混ざって伝わったと思い込ませて、本題に入ろうとしたとき、奥から人間態のタイラントがやってくる。


「あ~ん、なんで敵を中に入れているんだ?」


「私たちと話をしたいそうです」


「話ねぇ……それくらいなら構わねぇか」


「ナナ、この人は?」


「紹介遅れました。彼はタイラント。人間の姿に化けることができるドラゴンです」


「リヴァイアさんと同じことができるんだ」


「ん? あの蛇女を知っているのか」


「知っているよ、ゼロツーと一緒に島を護ったもの」


「ゼロツー……? GD-02のことか」


「へえ~、そうなんだゼロツー」


「2号機、なんだその目は?」


「別に。そんんあ面白そうなことがあるなら一緒に行けばよかったって思っただけ」


「面白くはないぞ。海水浴やサロンのどこが楽しいのかよくわからん」


「痴話げんかは放っておくとして、蛇女に勝った実力を見せてほしいぜ」


「ダメですよ、タイラント。彼女たちは戦いに来たのではないのですから」


「けっ、つまんねーの」


 2人の夫婦漫才に少しやきもちしながら、アイリスはようやく本題を切り出せる。


「私たちはタイラントを討伐するために来たの。でも、ナナが何の理由も無く人を裏切ってタイラント側につくとは思えない。だから、ナナが帝国を裏切った理由、そしてタイラントさんが帝国軍を襲う理由を教えて」


「いいでしょう。私の目的も彼の目的も一致していますから」


 そして、セブンスセブンの口から秋の終わりごろに起こった出来事について話していく。





 セブンスセブンは再建された武装も無事に起動し、今年の終わりには解体が決まっていた。と言っても、オーロラの世話の任務を放り出すつもりは無く、少しずつだが、彼女の顔に生気が戻り始めているのを見てうれしく思っていた反面、自分が居なくなったら彼女はどうなるのかと心配していた。


「セブンスセブン、いなくなっちゃうの?」


「ええ、役目は終えましたから」


「そんなのいやー」


 オーロラがわがままを言えるまで、精神状態が回復していた時期に決まった出来事だった。自身が解体されることに関しては何の文句も無いが、彼女の存在が気がかりであった。今の彼女はセブンスセブンに依存することで精神を安定させているようなもの。居なくなれば、元の死んだような状態へと戻ることは容易に予想できた。


「そうですね。解体時期をずらせないか話してみましょう」


「そうしましょう。私も行けば延ばしてくれるかも」


 2人で今のオープナーを支配している帝国から来たお偉いさんの部屋へと入っていく。中には誰もおらず、床には1枚の紙が落ちていた。どうやら部屋の主が書類を持っていた際に落としたもののようだ。


「なんですの、これは?」


「どうやら指令書の一部のようで……D4……うっ!」


 その単語を見た瞬間、セブンスセブンの空洞となった記憶が痛みだすかのように頭を抱える。いつもクールな振る舞いをする彼女の変貌に、オーロラはあたふたとしていると、頭痛が収まったのか頭を上げる。そこには赤い瞳に変わったセブンスセブンの姿があった。


「だ、大丈夫ですの?」


「ええ。ですが、私は解体される前にやらねばならないことができました」


「なんですの?」


「D4ミサイル、世界を壊す兵器を止めないといけません。貴女は何も見なかった。そうすれば、手出しする人間はいないはずです」


「嫌です。私を一人にしないでください、セブンスセブン!」


「危ないですよ」


「私は……あの日から死んでいましたわ。でも、こうして生きていられるのはセブンスセブンのおかげ。だから、死ぬときは一緒に……」


「わかりました。しっかりと捕まってください」


 セブンスセブンはオーロラを抱きかかえ、彼女もまた離さないようにしっかりとセブンスセブンの服を握りしめる。そして、窓から飛び出した二人は首都から脱出するのであった。




「雨露をしのぐ場所としてこの古城をベースとし、D4のターゲットとなっていたタイラントと接触しました」


「俺様は縄張りに厄モノを持ち込んだ連中に喧嘩を売っていたからな。目的は同じってやつだ。俺様とセブンスセブンは手を組んだ」


「簡単に言いますが、力を見せろと言われて力を振るってきたことは忘れていません」


「弱っちい奴なら手を組む気もなかっただけだ。手ごたえがあったからこその協力関係だ」


(ナナの事情は分かったけど……)


 これからどうしようかと考える。D4兵器の運用は止めたいところだが、今回の作戦の趣旨から大きく外れる。それどころか、今まで築き上げてきた信用を無くしてしまうことになる。


「私たちの事情はすべて話しました。私たちと戦う気が無いのであれば、こちらからも手出しするつもりはないので、お引き取りを」


「待って。もし、グラム、軍のトップにこの話を伝えてD4を本国に送り返せば、攻撃を止めてくれる?」


「縄張りの外でなら何をしようが人間の勝手だ」


「ありがとうございます」


 あとはグラムにすべての責任を押し付けて、アイリスはこの件から身を引こうと思った。記憶を失ったとしてもナナが生きているのはうれしいし、いざとなったらリバティーズに頼み込んで匿ってもらえないか話をすればいいと考えていた。

 円満に話し合いが終わり、城から出ていこうとしたその時、不快な耳鳴りがアイリスたちの脳裏に響く。


「この耳鳴りはなんですの!?」


「こ、これはD4を使った時に発生する耳鳴り!」


「んだと!? 誰かが厄モノをつかったのか!」


 耳鳴りが収まり、アイリスは急いで辺りを見渡すが、空間のヒビはまだ発生していない。だが、次も大丈夫という保証はどこにもない以上、次のD4兵器の使用は止めないといけない。そして、タイラントが龍形態になり、セブンスセブンがアーマーを着こんでいることからも、すぐに現場に飛び立つつもりだ。


「私たちはどうする、アイリス。ここで止めなければ、間違いなく、あいつらは我が軍に危害を加えるぞ」


「落ち着いて、1号機。まずは状況を確認することが重要よ」


「つまり、ボクらも発生源にいくってわけだね」


「帝国軍が何にD4を使ったのか確かめないと……例えば凶暴な魔獣に使わざるを得なかったのなら、正当な理由があるわ」


「そうか、取り乱して済まない」


「1号機さんはここに残ってオーロラの護衛、2号機さんは基地に戻って事情の把握、私とレイ、GD-02の3名で現場に向かうわ」


 それぞれに指示を出したアイリスはタイラントと共に耳鳴りの発生源、D4ミサイルの爆心地へと向かっていく。魔王が予言した終焉の時は間もなく――

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