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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第3章 機械人形と再会

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EPISODE49 望まぬ再会(後編)

 針葉樹で覆われた山々が見える旧オープナーの土地に降り立つアイリスたち。北の国とはいえ、まだ雪は積もっていないものの、風が強く防寒着なしではとてもいられないほどだ。吐いた息が白くなる中、砦からグラムが出迎える。


「これはこれは麗しい女王陛下。遠路はるばるお越しいただき、誠にありがとうございます」


「今は敵対しているとはいえ、隣国が困っているのであれば、手を差し伸べるのが人道というものです。それに知らない仲でもないですし、そんなに畏まらなくても……」


「そうかい、それなら砕けて話させてもらうぜ。堅苦しいのは苦手なんでな」


 グラムの後を追い、砦の中にある作戦室へと案内されるアイリスたち。その道中、兵士たちが機械のように一定のリズムで軍靴を鳴らし、通りすがった時はビシッと敬礼する。メリハリのある行動に統率がよく取れていると思うほどだ。


(騎士団も統率は取れていると思うけど、ここまでは取れてないわね~)


 果たして機械のように寸分の狂いがなさそうなまで取る必要があるのかと思いつつ、作戦室に入る。ひげ面の偉そうなお爺さんが待ち構え、口には出さないがあきらかに敵視している視線をこちらに向ける。敵対している国のトップが来たのだから当然だと思い、空いている席に座る。


「色々と思うところはあるかもしれないが、タイラントの襲撃という未曽有の危機を前に矛を収め、手を取り合ってもらいたい」


「しかし、臨時司令官殿……」


「発言は良いが、その口から俺の客人に手を出すような提案を出すつもりなら、そのクビが飛ぶぜ。文字通りにな」


「失礼しました」


「見苦しいところを見せちまったな。まずは地図を見てもらいたい」


 スクリーン上に映し出される周辺地図。ドラゴンのマーカーがここからそれなりに離れている山中に描かれており、近くに前線が展開されているようだ。


「今、タイラントは住処であるはずの火山ではなくどういうわけかこの古城を根城にしている。偵察機を送り込んだが、いずれも城にたどり着くまでに堕とされており、内部を知るすべはない。総攻撃を仕掛けようにも最前線に送り込もうとした部隊に奇襲を仕掛けてくるため、得策ではない」


 最前線の部隊とこちらの基地との間に亀裂のマークが映し出される。どうやら、最前線とは分断されており、向こうは向こうで補給に難儀していたようだ。


「だが、これまでの交戦データより、タイラントの目的は我々であることが明白であり、本日の夕刻に帰還する最前線のメンバーと共にこの場所に奇襲を仕掛けてきたタイラントを迎え撃つ算段だ」


「そううまくいくのでしょうか」


「タイラントの目的が帝国軍の戦力を削ぎ落すことなら、空の要塞を壊すのに意味は少ない。マシンドールを使えば、数か月で再建できるからな。それに俺たちに恐れをなして手出ししないならそれでよしだ」


 逆に言うならば、この作戦が失敗するということは帝国に覆せる戦力は無いということ。そうなれば、周辺の国々に甘くみられる可能性もあり、帝国にとって負けられない戦いである。

 そして、タイラントの攻撃を受けた際の部隊の展開について話しているとき、自身かと思うほどの激しい揺れと警報が鳴り響く。グラムが通信機に怒鳴るかのような大きな声で話しかける。


「タイラントか!見張りはどうなっている」


【見張りのマシンドールからはタイラントが飛び立っていな……信号途絶、タイラントの攻撃を受けた模様】


「タイラントがそこにいるなら、この攻撃はどこのやつだ」


【わかりませんよ、監視カメラにもマシンドールからの映像にも襲撃者は映っていません】


「ステルス!光学カメラが駄目でも熱源センサーは?」


「女王様の提案だ。熱源探知に切り替えろ」


【了解です……だめだ、火の手が上がってあてにならない。マシンドールの信号、次から次へと途絶】


「だったらマシンドールの信号が途絶えているところに襲撃者がいるはずだ。マシンドールに消火を急がせろ。人間の兵は目視で襲撃者の捜索と迎撃。いくらステルスが優れていても親からもらったピンボールカメラなら問題ねぇだろう」


【は、はい!】


 通信を切り、グラムは作戦室に残されたアイリスたちに話しかける


「お前さんらはここで待機……って言っても言うことを聞くような目はしてないよなぁ!!」


「当たり前だよね、アイちゃん」


「困ったときはお互い様です」


「借りはいつか返すぜ。襲撃犯の捜索と迎撃にあたってくれ」


 元気よく答えた2人が作戦室から出ていくのを見送るグラム。窓の外にはあちこちから、火の手が上がる戦場。前任の指揮官が戦死した以上、今、全体の指揮を放り投げて戦場に立つわけにはいかないと歯を食いしばりながら、仲間たちに指示を与えていく。




 時は少しだけ遡り、セブンスセブンは遥か上空から帝国の基地を眺めていた。タイラントが理由なく住処を変えるわけが無いと相手の目を惹きつけ、敵の本拠地への奇襲を成功しやすくする作戦は功を奏するかのように思えた。

 だが、最前線にいる帝国軍の疲弊が思った以上に大きく、本拠地へと戻り始めたのは想定外であった。ただ、この機を逃すわけにはいかないとセブンスセブンはたった一人で本拠地を襲撃すると言う無謀にもほどがある奇襲作戦を実行した。


「ハイパージャマー作動確認。攻撃……開始」


 セブンスセブンが急降下しながら、備え付けられたフットミサイル、ガトリング、ショルダーキャノンを一斉に放ち、砦に着弾したそれらは火花を咲かせる。ハイパージャマーの弱点である熱源センサーも、火の手が無数にあれば誤認してしまい役に立たない。あとは人の目だが、奇襲で浮足立っている今なら、脅威ではない。


「ハイパーセンサー動作良好。スキャン開始……D4ミサイルはどこに!」


 目標を見失って右往左往するマシンドールや見張りの兵士たちを撃ち倒しながら、どこかで見たような光景にノイズが走る。だが、今は自分の記憶よりも、世界を護るほうが優先だとそのノイズを払い避ける。


「新手か!」


 セブンスセブンはビームサーベルを抜き取り、明らかに軍人出なさそうな金髪の少女と赤黒いアーマーを着た褐色の少女に向けて、襲い掛かるのであった。





「ナナの同型機!?」


「どこ!?」


「真正面!ビームサーベル持っている、来るわ」


「このあたりかな!」


 レイが適当にビームサーベルを振りかざすも、セブンスセブンは悠々と躱し、すれ違いざまに右腕を切り落として去っていく。まるで構っている場合ではないと言わんばかりだ。


「レイちゃん、大丈夫!?」


「平気。それよりも後を追うよ」


「う、うん」


 アイリスは切り落とされたレイの右腕を抱きかかえ、セブンスセブンの後を追っていく。すると、アイリスたちの目の前で銃撃の音が鳴り響き、セブンスセブンがたまらず外へと飛び出していく。


「予想より生身の人間の数が多い、奇襲の混乱も収まってきている……そろそろ潮時か」


「逃さないよ」


 レイが左手に握ったビームサーベルで斬りかかり、火花が散る。何度も空中で斬り結ぶも致命傷を与えることができない。


「しつこい!」


「それくらいの攻撃なら!」


 セブンスセブンの誘導弾を距離を取って引き離しながら撃ち落としていく。


「時間をかけすぎたか」


 レイを振り切ろうとしたセブンスセブンを囲い込む帝国軍のマシンドールの空中部隊。ステルスで逃げようとしても、火の手の影響の少ない空中ならば熱源センサーも有効だ。ここから逃げ出すには一苦労のはず……であった。

 巨大な火の玉が天から降り注ぐまでは。


「よお、苦労しているようじゃねえぇか、セブンスセブン!」


「声が大きいですよ、タイラント。敵に情報を渡す必要はありません、城周りの敵は?」


「お人形さんは全滅。人間も撤退。俺様が出張っても問題ねぇだろう。ところでD4は?」


「すべてのスキャンはできていませんが、砦内部に無いと見たほうが懸命です」


「撤退だな。ドラゴンブレス!」


 龍形態のタイラントが炎のブレスを吐き、砦の外を一面火の海へと変えていき、人間はおろかマシンドールさえ灰になって消えていく。もはや、砦の機能を失った帝国軍の基地を後に撤退するセブンスセブンをアイリスたちは眺めていた。


「さっきセブンスセブンって……」


「うん、確かにセブンの名前を呼んでいた」


「……ナナなの?」


 生きてくれてうれしいと思う反面、どうして帝国に居たのか、そしてなぜタイラントと一緒に帝国軍を襲うようになったのか、そして、私たちに何の言葉を告げないのか、それらの理由もわからずにただ望遠と消えていった空を眺めていた。

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