INTERLUDE5―FORBIDDEN―
サイケが帝国領土の自室でデータの解析を行っていた。あまりにも強固なロックがかかっており、入手できたデータが全体の1%でもあれば御の字といったところだろう。
「僕がここまで悪戦苦闘するとか、頭おかしいんじゃないの、コレ作った奴。これ作ったの大昔の人なのかなぁ、それとも王女殿下が後付けでつけたのかなぁ。王女殿下なら、まずます欲しいんだけどなぁ。ダメかなぁ、駄目だろうなぁ」
ケーブルでつながった頭部のパーツを見る。首から下は焼失したが、残っていた頭部を1号機たちが回収した。だが、陽電子砲の熱により、無残にも焼け落ちており、今の状態を見ても、かつての姿を想像することは不可能だろう。
「壊れても味方がデータを回収できるよう、メモリーが入っている頭部はより強固に作られていたんだろうねえ。それにしても陽電子砲を耐えるとか馬鹿じゃないの!? それだけのコストをかけるなら、複数造ればいいだけの話だよね!大昔の人って馬鹿じゃないの!!」
ぶつぶつと言いながらも、彼女のデータを拾っていく。パソコンのカタカタと叩くキーボードの音だけだがうす暗い部屋に響く。
「しかも記憶領域がコンタミ起こしているし……大昔の兵器が彼女を知るわけないでしょうと」
サイケが記憶データの一部を見ながらぼやくのであった。
「我々、人類は誤った進化をしてしまった。我々には科学という禁断の果実はまだ早かった。我々は一度立ち止まる必要があるのです――」
政治家がテレビで演説しているのを聞いて、不快になった宇月博士はその電源を切る。
「言いたいことだけ言うよねぇ。戦争を始めたのが科学の結晶なら、終わらせたのも――」
「仕方ありません。人が決めたのであれば、私たちはそれに従うだけです」
「だけど、ギースを倒した功労者である君を封印するなんて……あまりにもひどすぎる」
「仕方ありません。D4、Gブラスターの危険性が周知の事実になり、分解も困難となれば、封印凍結処理は致し方ないでしょう」
「でも、マシンドールを処分する必要は……」
最後の戦いでナナのリミッター解除や命令を無視しダミーミサイルの迎撃にあたったマシンドールたちをみて、新政府はマシンドールは第2のギースになりうる危険性があると判断。それゆえ、マシンドールの技術はすべて破棄されることが決定した。二人がこうして資料を段ボールに詰めているのもその一環である。
「今は私しかいませんが、そのことを他の人には言わないでください。反抗的な態度を取れば、ドクターの身が危険にさらされてしまいます」
「でも……」
「大丈夫。ドクターは『マシンドールの危険性を理解し、自らの手で封印した』その筋書きさえあれば、ドクターを責める人はいないでしょう」
セブンスセブンの言う通りなのだが、宇月博士はまだ迷っていた。彼女を封印処理などしなくてもいい方法があるのではないかと。だが、時間は無情にも過ぎていき、ガランとなった基地内を歩いていく。
戦争が終わったことにより、人類の居住区は統合され、この基地は廃棄されることが決まった。かつていた軍の人間も、今ではほとんどいない。時たま、すれ違う人たちは「ありがとうございました」と二人に礼を言う。
そして、基地の最深部にたどり着いた二人。マシンドールに関する機械が無造作に置かれていたここも、今ではセブンセブンを封印するための機械が中央にポツンと鎮座されているだけだ。
「このカプセルに入ったらいつ目覚めるか分からない」
「ええ、覚悟はできています」
「……本当にいいのかい? 目が覚めたら、また戦うことになる。それがわかっているのに……僕は……」
「泣かないでください、ドクター。最後の時は笑顔で居ましょう」
「それができないから、人間だ……」
ドクターが泣き止むのを待ってから、セブンスセブンはカプセルの中へと入っていく。後はドクターがボタンを押すだけとなる。
「最後に一つだけ。使用できないバーストモードはともかく、リミッター解除に関しては彼女の音声認証を必要とした。これは万が一、君が他の人に悪用されるケースを想定した場合だ。できれば使ってほしくないし、本来ならば使用できないようにすべきだろうけど、使わざるを得ない状況は起こりうる。そのための処置だ」
「了解しました、ドクター……さよなら」
「ああ、おやすみ」
宇月博士は泣きそうになるのを堪えて、必死に笑顔を作り、カプセルのボタンを押す。カプセルの蓋が閉じられ、セブンスセブンは永い休眠に入る。
そして、最深部の部屋の分厚い扉がゆっくりと閉まっていく。遠い未来、科学の力を失った人間がこれを破壊するのはほぼ不可能だろう。それほど強固な扉だ。そして、登録されていた自身の生体データを消していき、残る生体データは1件だけとなる。
「あとは君に任せたよ、アイリス女王陛下」
次からは第3章です
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