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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE41 落ちこぼれの女王

 空島の一室、アイリスが寝泊まりしている部屋の前でブリュンヒルデは彼女にどう話しかけたらいいのか分からずにいた。


 ナナが死んだ――


 彼女たちが駆け付けた時には戦闘は終わっており、艦隊の残骸と汚染された土地だけが残っていた。本来いるはずのナナの影は無く、彼女のシグナルは完全に消失していた。部品1つも残っておらず、誰も彼女の死を目撃したわけではないのでMissing In Action(戦闘中行方不明)ではあるが、事実上の戦死である。


 MIAとなったナナのことをアイリスたちに伝えると、彼女は泣き崩れてしまった。今は一人にすべきだと思い、空島の部屋に連れてきたは良いものの、どう慰めればいいのか分からず夜が明けてしまった。


「セブンスセブンならどう声をかけてるのかしら」


『いつまで立ち止まっているのです。今は泣いている場合ではありません』


(あ~、セブンスセブンならこんな感じで発破かけるわ)


 脳内シミュレートのナナをインストールしたブリュンヒルデは意を決して、アイリスの部屋に入ろうとしたとき、向こうから扉が開く。アイリスは一晩中泣いていたのか目が赤く充血し、涙の痕がまだ残っている。


「えっ~と、大丈夫?」


「大丈夫。だってナナがいたら、いつまで泣いているのって言われるわ」


「同感。セブンスセブンは結構きついこと言うわ」


「だから、泣くのはもう終わり。ナナの死を無駄にしないためにも、私は前へと進む!」


「私が思っていた以上に強いわ。ライオンキングのところにはハーピィたちを向かわせて、政権奪取の速報を伝えたけど」


「それなら、私の口からレオン陛下にことの詳細を話すべきね。その後は――」


 ナナの死を乗り越えてアイリスは歩き出す。まだ彼女にはやるべきことが残っているのだから。





 昼下がり、アルフレッド国王の暴走で生じた城のがれきの撤去作業をしている騎士団や臣下たちが、野ざらしになっている玉座を見てポツリとつぶやく。


「次の王様は誰になるのかねぇ」


「前国王は王子派閥の俺たちがマイナス印象の噂を流しちまったからなぁ。もう一度座るってなると、市民たちが反発しそうだ」


「王妃殿下は魔力の過剰使用による昏睡状態、ベルン王子はまだ幼いってなると……」


「そうよ、今日から私がこの国の王です」


 彼らの前に降り立ったアイリスが宣言する。そして、青空の下、誰も座っていない玉座の前に立つ。


「みんな、聞いて」


 その場にいた全員が作業を中断し、アイリスに注目される中、緊張感を振り払いながら言の葉を紡ぐ。


「私はお兄様に命を狙われている間、獣人や魔族が治めている国を見てきました。私たちよりも強靭な肉体やより強力な魔法を扱える彼らでさえ、帝国の魔の手が伸びようとしています。ですから、私たちは人種や国の垣根を越えて、共に帝国と戦わなければならないのです」


「そんなことできるのかよ……」


「すでに私は魔王陛下と帝国との戦いで協力する約束を取り付けています」


 まだ同盟を結ぶほどの強い約束ではないが、嘘は言っていない。この数週間の逃亡劇、ナナが遺してくれたものはアイリスにとっても、そしてこの国にとってもあまりにも大きい。


「そして、レオン陛下にも兄の侵略行為が帝国の策略であったことを伝え、対帝国で協力することを約束してくれました」


 アイリスの言葉に一同がざわつく。アルフレッド前国王を討ち倒して、まだ一日も経っていないにもかかわらず、すでにここまで話が進んでいるとは思ってもいなかったからだ。落ちこぼれじゃなかったのかと見直す声もちらほら聞こえてくる。


「これ以上、悲しみを広げないためにも、帝国の野望を討たねばならないのです。だけど、私はみんなのように魔法が使えない落ちこぼれ。だからこそ、他の人に頼る、力を借りる。だから!みんなの力を借りたい。この国だけじゃない、帝国の侵略に怯える他の国のためにも、力を貸してほしい」


 アイリスの演説を聞いた誰かが、拍手をパチパチすると、次々にそれが広まっていき、喝采へと変わる。その中で、アイリスは空いている玉座を見る。権力の象徴であり、まだ自分が座るにはまだ早い玉座。彼女は玉座を背にし、その場を去っていく。


(ナナ、見ていて。何があっても、私は前へと進むわ)


 彼女は立ち止まらない。もし、立ち止まるときがあるのであれば、それはすべてが終わった時だけだろう。

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