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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE39 壊す力、救う力

 悪魔の姿になったアルフレッドを目にした者たちは、一度その手を止める。あまりにも異形すぎて、アルフレッドであることを見抜けるものは誰もいない。そして、それはレイやエドウィンでさえ同じであった。


「えっ~と、一つ聞くけど、あれも姫様の策とか?」


「そんなわけないじゃん。そっちの仕業でしょ」


「こっちの仕業だったら手を止めてない。ここはお互い手を引くってのはどうかな?」


「良いよ~、ボクもアレがなんなのか分からないけど、見た感じ味方じゃないし」


「姫様は任せた。騎士団各位に通達。市民の避難誘導をしろ!襲い掛かるマシンドールは叩き切れ。不良品をよこした帝国の船共は差し押さえても構わん」


 近くにいた騎士団の面々に命令を下し、言うことを聞かないPアサルトたちを切り捨てる。目が覚めたかのようにきびきびと動く騎士団たちを見つつ、レイは廃城と化した城内へと入っていく。手の指がうねうねと触手のように伸び、ナナに襲い掛かる。


「しつこい!」


 ナナが切り捨てても瞬時に再生するさまはディアボロス戦を彷彿させる。だが、あちらは死者の力を吸収する能力を持つが故の無尽蔵な力だったのに対し、こちらはあくまで人間ベース。いつかは魔力が尽きるはずと睨みつつ、攻撃に対処していた。


「ディアボロスと同じならGブラスターを使うしかないけど……」


「騎士団が味方に付いたとはいえ、マシンドールとの混戦の最中、しかも市街地近くで使用するわけにはいきません」


「わかった。別の方法を探しましょう」


(魔力切れ狙いの長期戦……私の身体と夜が明けるまでに倒せるかが問題ですね)


 現状の唯一とれる方法は引き続き試していくが、時間的猶予はあまりない。蛇の口から炎を吐くのを見て、アイリスを抱きかかえ距離を取る。その背後から迫りくる触手をレイが焼き払う。


「レイちゃん、到着ってね」


「レイ、マスターを頼みます」


「アイアイサー」


 アイリスの防衛を気にしなくてもよくなったナナは楔から解き放たれたかのように飛び出していき、うねうねとした触手を躱しながら、アルフレッドの右腕を切り落とすが、断面から触手が生えてきて再びつながれる。


「やはり、再生能力はディアボロス並み。盾が無い分、攻撃する分には楽ですが……」


 ナナがどこかに弱点が無いか手当たり次第に攻撃しているが、化け物の様子に一向に変化はない。レイも持ち前の大火力で迫りくる触手を消し炭にしているが、次から次に生えてきて埒が明かない。


「アイちゃん、何か弱点ないの?」


「弱点って言われても……」


 アイリスの脳裏に浮かぶのは同系統の能力を持つディアボロス戦。あのときの戦いを思い出し、どこか変なところが無かったか思い出していく。


「そういえば、Gブラスターで撃たれても、頭部だけは少し生きながらえていたわ」


「じゃあ、頭部が弱点?」


「アンデッド系の魔物も頭部が弱点って聞くけど、ナナに切られても再生していたし、頭部の再生能力が高いだけなのかも……でも、とっかかりをみつけないと前へ進めないわ」


「決まりだね。ヒルデ呼んで一斉攻撃!」


 レイがブリュンヒルデに通信を入れて、こちらに向かわせようとする。空中で飛び交うPアサルトの数も、騎士団たちの参入により、その数が減ってきたこともあり、ブリュンヒルデはハーピィたちにその場を任せる。


「急いできたわ。レイ、バスターランチャー借りるわよ!」


「オケー。こっちはレイバスターの最大出力で!」


「エネルギー出力100%オーバー!エーテルキャノン・リミットブレイク!」


 3人の放たれた砲撃が一つとなって渦を巻きながら、アルフレッドの頭部を吹き飛ばしていく。完全消失した頭部をみて、やったかと喜ぶのは束の間。首辺りから真っ黒な水晶が怪しげな光を放つと、周りの細胞が自己増殖し、頭部を形作っていく。


「アイちゃん、あれはなに?」


「う~ん、魔物なら魔石だと思うけど、お兄様は魔物じゃないわよ?」


「いえ、そうかもしれませんよ、マスターアイリス」


「えっ?」


「ナノマシンによって異形の姿になるのであれば、魔物はもしかするとナノマシンの影響を受けた生物なのかもしれません。本来、長い年月をかけて魔物になるのをあの王子が魔法で早めたとしたら……」


「今、お兄様は魔物になっているってこと? それなら、魔力を産み出している魔石を取り除けば……」


「再生能力は消えるはず」


「じゃあ、首を狙えば良いってこと?」


「万が一ってこともあるわ。そういう時は私に任せて。このゴーグルの分析機能には魔石のセンサーがついているんだから」


「少し懐かしいですね」


「ふふ、そうね。まだ数か月しか経っていないのに。ここは初心に戻ったつもりで戦いましょう。分析の結果……弱点の魔石は普通のと違って、体内を移動しているわ。でも、移動速度はそんなに早くない。今、いるのは人間で言うと胃の位置!」


「それが分かれば!ブリュンヒルデ、レイ!援護をお願いします」


「了解、撃って、撃って撃ちまくるわ」


「アイちゃんと後ろは任せて!」


 高速で突っ込んで行くナナに対し、襲い掛かる触手と蛇の炎。触手がナナに触れる前に先端がブリュンヒルデの砲撃によって爆裂し、決して届かない。迫りくる炎もディフェンシブモードで防御力を上げたナナにとって何の障害にもならない。


「ドリルアーム接続。Gシールドによるフィールドを形成!ストライク・ノヴァ!!」


 左腕をドリルに変えて、赤い光に包まれたナナが最大速度で突撃していく。硬質化した皮膚を難なく突き破り、体内の肉や臓器を掘り進めながら、体内にあるより高い魔力反応を目指していく。


「アレか!」


 大きさにして一回り大きいラグビーボールといったところか。黒い水晶が強く光を発しているのを見つけたナナはドリルの先端を水晶にぶつけるが、魔力障壁に阻まれ貫くことができない。


「ならば、このまま突き破るのみ!」


 空いている右手で黒い魔石をつかんだ後、体外へと飛び出していく。その勢いに任せたまま、さらに高度を上昇させ、雲の上へと登っていく。


「この距離であれば、味方も市街地への影響も問題ありません。壊れた機械にはこの次元から消えてもらいます!」


 手に持っていた黒い魔石を空高く放り投げて、狙いを定めていく。


「ターゲット、暴走ナノマシン結晶体。Gブラスター発射!」


 黒い魔石がGブラスターに飲み込まれ、粉みじんに散っていく。それと同時に、アルフレッドの身体にも異変が起こる。ナノマシンという触媒が消えたことにより、化け物となっていたアルフレッドの身体は小さくなっていき、元のサイズへと戻っていく。

 だが、肉体のエネルギーを使いすぎたせいか、手足は枯れ木のように細く、精錬な顔つきも見る影もなく、やせ細っている。そんな自分の身体をアルフレッドは後悔するかのように見つめている。


「魔力を感じない……この手では剣も振るえない……殺してくれ、頼む」


「殺しません。せっかく助かった命なのですから、生きてもらいます」


「どうして、お前はそう簡単に人を許すのだ?」


「? 許していません」


「どういうことだ?」


「お兄様のせいで多くの人が傷つきました。中には死んだ人もいます。だったら、その人たちの分まで生きないと。その人たちがもういいと許せるまで罪を償いながら死なないと。今、死んだらお兄様は楽かもしれないけど、その人たちは一生お兄様を許すことができなくなるわ。それは卑怯よ」


「ならば、俺はどう罪を償えばいい。俺にはもう力が無いんだ……」


「力があれば人を救えるとでも?」


 上空から戻ってきたナナがアルフレッドに問いかける。


「当たり前だ。力があれば何でもできる!」


「私には悪用すれば世界を壊すほどの力があります」


 D4兵器が起こした次元崩壊、そして、Gブラスターの脅威を散々目撃しているアイリスはコクリと頷く。


「ですが、私はこの力を敵を倒すために使うつもりはありません」


「使っていたではないか!」


「いいえ、違います。私がこの力を振るうのは人を、国を、世界を救うために使うのです。貴方は、巨大な力を手にしたとき、何のために使いましたか?」


「俺が使ったのは……!?」


 アルフレッドは振り返る。大義名分で国のためと口では言っているが、その根本にあるのは自分のためだ。


 何の魔法も使えないのにちやほやされる妹への侮蔑。


 名声や権力が欲しくて安直に乗ってしまった妹の暗殺。


 自分の顔に泥をつけたナナとブリュンヒルデに抱いた劣等感が引き金となったナノマシンアンプルの注入。


 これらは全て自分のためだ。


「力があるから救えるのではありません。救うという気持ちが無ければ、力はただ力なのです」


「私は間違っていたのか……うわああああああああああ!!」


 男の慟哭が夜空に響く。しかし、だれも、彼の言葉に応えるものはいなく、まだ続く戦場の音だけが答えであった。




 獣人との戦争を未然に防ぎ、国の中枢を取り戻したアイリスは、まだ問題が山積みになっているとはいえ、安堵していた。それはブリュンヒルデたちも同じだろう。ただ一人の例外を除いては。


「姫様、た、大変です!」


「どうしたの、ウェインさん?」


「隊長の命で差し押さえた帝国の船を調べたら、隣国のコパール王国への侵略計画が見つかって……」


「あそこにはお母様たちがいるのよ、それはいつ!」


「今です!」


「!?」


 突然の凶報に驚くアイリス。急いで、母親に通信魔法で連絡を取るように指示するが、連絡が一向に取れないようだ。


「ついに来てしまったということですね……」


 小声でボソッと喋ったナナに対して、アイリスが「なんて?」と聞き返すが、彼女の発言を無視して話していく。


「私が先行します」


「それなら、私も行くわ」


「ボクも行くよ」


「ブリュンヒルデとレイはここにいる敵性マシンドールの掃討を優先してください。それにリミッター解除した私なら、早くつけます」


「なによ、その言い方。気に食わないけど、単独行動が得意なセブンスセブンなら先行させても問題ないけど」


「うんうん。ボクもエネルギーも結構減ってきたから、すぐに行ったら足手まといになるかも……」


「決まりましたね。それでは行ってきます」


「ナナ!ナナーー!!」


 どうしようも不安になったアイリスは夜空へと消えていく赤い流星となったナナに大声で叫ぶ。もう二度と会えなくなる。そんな嫌な予感がなぜか生まれて――

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